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市街地に現れた怪獣は、装甲が異常に硬いタイプだった。いくら斬りつけても刃が弾かれ、るりの鉄扇による衝撃波すら表面を削るに留まる。
「……あかん、副隊長。80%やと、歯が立たへんわ」
るりは額に汗を浮かべ、苦い顔をする。
保科は歯を食いしばり、刀を構えたまま叫んだ。
「せやけど、それ以上出したら――身体がもたへんのやろ!」
「わかっとる……せやけど、仲間も街も守らなあかん」
るりの瞳が、決意の色に変わる。
次の瞬間。
――ドクン。
彼女の全身から圧倒的な気迫が溢れ出した。
髪が逆立ち、空気が震える。
鉄扇が閃光を放ち、解き放たれた100%の出力が、怪獣へと突き刺さる。
「うちは……この一瞬だけ、枷を外す!」
鉄扇が振り抜かれ、竜巻のような衝撃波が装甲を叩き割った。
地鳴りとともに巨体がよろめき、胸部の核が露わになる。
「――副隊長!」
るりの叫びに、保科の身体が勝手に動いた。
目の前に広がるのは、常識を越えた破壊力。
(……これが、るり姐の“本気”か……!)
驚愕と同時に震える心を抑え、保科は一閃。
刀が閃き、露出した核を正確に切り裂いた。
――轟音。
怪獣は断末魔を上げて崩れ落ちた。
静寂の中、保科は荒い息をつき、隣を見る。
そこには、膝をつきながらもまだ鉄扇を握り締めるるりの姿があった。
「……ふぅ……副隊長、見せてもうたな……うちの本気」
口元に血をにじませ、るりはかすかに笑った。
保科はしばし言葉を失い――そして苦笑する。
「……正直、肝が冷えたわ。るり姐……あんた、ほんま規格外やな」
「そやろ? けど……内緒やで。隊長にバレたら、説教長なりそうやしなぁ」
二人は息を整えながら、瓦礫の中で小さく笑い合った。