テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
討伐後。第三部隊の簡易医務室。
ベッドに腰掛けた神楽るりは、包帯で巻かれた腕を眺めながら気まずそうに笑っていた。
扉が開き、入ってきたのは亜白ミナ。
金色の瞳が、射抜くようにるりを見据えていた。
「――神楽。おまえ、今日……出力を解放したそうだな」
「……っ」
るりの肩が跳ねた。
その場にいた隊員たちも空気を読んで、そそくさと退室していく。
「な、なんのことやろなぁ……? うちは、ちゃんと八割で――」
「誤魔化すな」
ミナの声は低く冷たい。
「街のモニタリングデータにも、あなたの身体の生体反応にも、はっきり記録が残ってる。
一瞬とはいえ、100%を越えている。」
るりは観念したようにうつむき、唇を噛む。
「……すんまへん。副隊長を助けるために、つい……」
ミナはしばし黙り込み――やがて小さく息を吐いた。
「神楽。あなたが仲間を想って動いたことは、私も理解してる。
でも、あれは自分の身体を壊すだけの無茶。隊を率いる私が、それを見逃すわけにはいかない」
「……はい」
「次に同じことをしたら――出撃停止処分にする」
真剣な眼差しで告げるミナ。
るりは思わず「ひぃっ」と小さく声を上げ、鉄扇を胸に抱きしめる。
「……隊長の説教、怪獣より怖いわぁ……」
ミナは苦笑を浮かべつつも、最後に柔らかく言った。
「……でも…無事でよかった。もう少し、自分を大事にしてくれ」
その言葉に、るりは少しだけ目を潤ませ、頷いた。
「……はい、隊長」
廊下の隅で様子を聞いていた保科は、こっそり呟く。
「……せやから言うたやろ、るり姐。隊長にバレたら一番怖いって」