頑張りたい、そう決意したすぐそばから崩れそうになるこの気持ち。
でも、大丈夫、大丈夫――
そう何度も自分に言い聞かせた。
「梨花さん、すみません。しっかり頑張ります」
ヤキモチを妬いたり、梨花さんに言われて落ち込んだり、私はそんなことをしてる場合じゃない。お客様のためにこの店にいることを忘れちゃいけないんだ。お客様を笑顔にするために……そのためだけに、私はシャルムにいるんだから。
改めて前向きに考えることができたのは、ある意味、梨花さんのおかげ。とにかく、明日からまた前を向いて頑張ろうと決意を新たにした。
仕事が終わって、私は今日も1人で帰っていた。
悠人は、最近、本当に忙しくしてる。少し寂しかったけど、仕事だから仕方ない。
特に今は、お父さんの会社のひとつが新しい化粧品を発表するみたいで、慌ただしく動いているみたいだった。
その事業が成功すれば、月城グループとしてもかなりの業績アップに繋がるはず。グループでの悠人の株も上がれば嬉しい。だから、大変だけど体に気をつけて頑張ってほしい。
どんなに疲れて帰ってもすごく優しい悠人。ほんの少しだけ話して、そして、眠る……毎日。
それでも、一緒に居られる時間があるんだから幸せだと思いたい。
「穂乃果さん」
この声?
「お疲れ様です。ここで待ってたら会えるんじゃないかなって」
駅近くの広場に輝くんがいた。
もしかして……
「いつから待ってたの? 輝くん、今日は早番だったからずいぶん先に帰ったよね?」
「大丈夫です。待つのは全然苦になりませんから」
まさかずっと待ってたの?
苦にならないって言っても……
今日は、私は梨花さんの指導を受けてて、いろいろ言われながらも頑張ってたから、たぶん3時間以上は待ってるよね。
「どこかで食事したの? お腹空いてない? 大丈夫なの?」
「すみません、心配かけて。穂乃果さんがいつ来るかわからなかったから、ずっとここにいました。本当にすみません、ストーカーみたいなことして。でも、どうしても穂乃果さんに会いたかったから」
申し訳なさそうに頭を下げる輝くん。
「ううん、ごめんね。私こそ輝くんに心配させるような態度を取ってしまって。気にしてくれてたんだよね」
「穂乃果さん」
「……?」
輝くんは、真っ直ぐで、とても優しい瞳で私を見た。
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