プロデューサー「大森…あぁ…、歌の彼ね。彼に聞くの?」
藤澤「?…はい。仕事の事は全て大森と相談して…」
プロデューサー「僕はね、藤澤君に聞いてるんだよ。君がどうしたいか知りたい。」
その人は僕の言葉を遮ってそう言った。
プロデューサー「藤澤君が僕の番組に出たいと思ってくれたなら、冠を持ってもらうこともできるよ。」
んわぁ〜。グイグイ来るぅ…。やり手の人ってこんな感じぃ??
藤澤「あ、はい。あの、スケジュールとか、レコーディングの調整とかもあるので、大森に…」
プロデューサー「歌の彼は、君に決めさせてくれないのかい?」
またも話を遮られた。
話聞かねーな。この人。
しかも決めさせてくれないって何?
さっきから元貴の名前を出すとうっすらイラついているあの感じを出してくる。
藤澤「決めさせてくれないとかは…」
プロデューサー「君の演奏ね、凄く染みるんだ。アップテンポのものでも、バラードでも関係なく響いてくる。練習量が凄いと聞いてるよ。あれだけの演奏なら、並大抵じゃない。」
藤澤「ぁ、ありがとうございます!」
最近、こんな風に努力を褒めてくれる人は居なくなっていた。弾ける事が当たり前になった、とは誰も思っていないんだけど、僕と同じ、いや、もっとそれ以上の努力をしている人たちの集まりだから、スタンダードが上がっている。
ファンの子達は手放しで褒めてくれるけど、メッセージで届くものとは違う、肉声の激励に思わず泣きそうになってしまった。
元貴や若井が褒めてくれないことが不満な訳じゃないけど、認めて貰えたことが嬉しかった。
悪い人ではないのかも…。
プロデューサー「僕、一ファンとして君と話せた事がとても嬉しい。」
その人は僕の手に自分の手を重ねてこう言った。
プロデューサー「君にはもっと輝いて欲しいんだ。僕にはその手伝いができる。僕のプロデュースで君の可能性をもっと引き出してみたいんだ。」
熱く語って、僕の手を握りしめる。
さっき褒められて感動していた僕は、この人を信用しかかっていた。
藤澤「とても光栄です。メンバーも喜びます。」
そうすれば、僕たちはもっと大きくなれるかもしれない。元貴の歌を、若井のギターをもっとたくさんの人が知れるかもしれない。
プロデューサー「…。僕は特に君の魅力を引き出したいと思っている。メンバーの二人とは違うステージに立ってみないかい?」
まただ…。どうして少しイラついているんだろう。
藤澤「僕なんてまだ力不足で!二人の力がなければこの場所に立てていないので。」
バンド活動の派生で一人で番組に出ることはあっても、二人と違うステージでなんて考えたこともない。
プロデューサー「君は、自分の魅力に気付いていないんだよ。あの二人より、ずっと輝ける。」
声に甘さが混じったと思ったら、手は握られたままで肩に手を回される。
プロデューサー「君は本当に綺麗だね。純真な女の子のようだ。」
謎な台詞と共に距離を縮めてくる。
え?あれ?あれぇ?
本日、ここまでで…。
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りょうちゃん逃げて超逃げて