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朝、オフィス街の一角にそびえる会社の前で、准は腕時計を確認した。いつもより一時間は早い出勤だ。

時間に余裕があると、気持ちも少しだけ余裕ができる。いつもこの時間に来れたら良いんだろうけど、……それはやはり寝不足になるし無理だろう。


「……!」


警備員に挨拶し、エントランスを抜けて先へ進むと、エレベーターの手前で佇む青年がいた。

瞬間、思わず足が止まる。

けれども深く息を吸って、その後ろ姿に声を掛けた。


「おはよう、創。……随分早いな?」


准の声に気付くと、彼は振り返って驚いた顔を浮かべていた。

「あ、あぁ。おはよう……准」

不自然な距離感。

創は准からすぐ視線を外して、ぎこちなく笑った。

「お前の方から話し掛けてくるとは思わなかった」

「何で?」

「何で、って」

創は一度口を噤んだが、また静かな声で続けた。

「成哉から全部聴いたんだろ? 俺の所に帰って来ないから、きっとお前の所にいるんだろうと思って」

エレベーターが着いて乗り込んだが、やはり他に人はいなかった。二人だけの空間で、ドアは閉ざされる。

「あぁ。全部聴いた」

否応なしに距離が縮まる。

「……軽蔑した?」

「した」

准が即答したことで、再び沈黙が流れる。しかし、准が創の頬をバチンとはたくことで終了した。見事なまでの平手打ちに、創は驚きながら頬をおさえる。


「じ、准……」

「はは、殴ると確かにすっきりするな。ムカついたなら俺のことも殴っていいぞ。涼にしたみたいに、何発でも」


淡々と告げると、創の瞳は揺らぐように、かすかに光を宿した。

「……成哉は、どうしてる?」

「普通に生きてるよ」

「そう……」

創は俯いて、自身の首元を押さえて呟いた。


「あいつに伝えてくれないか。……今まで悪かったって」

「あのなぁ……。自分で言えよ」

「いや、もう会わないよ。怖がらせるだけだから」


フロアに到着して、創は先に下りた。准も少し迷った後、彼の後に続いて立ち竦む。

やはり、廊下には誰もいない。眩い光が窓から差し込むのに、空虚感が淋しさを誘う。

「成哉がいれば平気な気がしてたんだよな。お前が違う所にいても、玲那と結婚したとしても……。もうひとつ、本当の自分を知る存在がいれば……そう思って」

創は自分の足元を見て続けた。


「あいつを、全ての怒りのはけ口に使った」


ファナティック・フレンド

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