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「あのチャラい鬼とポニーテールの男の鬼の死体見に行くんすか?」


そう呼び止められたのは海と皇后崎だった。

海は怪訝そうな顔で振り返り、声の主を見る。

呼び止めたのは女の桃太郎_桃草蓬。嘲るようにこちらを見ている。


「別に、俺の目的のため…」

「姉さんはどこだ」


皇后崎が返すのを遮り、皇后崎の前に出て睨み付けながら海は言った。

皇后崎は海を少し睨んでから前を向く。


「鬼の癖に家族ごっことか、仲間ごっことか、キモいっすね」


蓬は子供だからと油断しているのか、笑いながら返してきた。

海は怒りのあまり唇を噛み締め、拳を握りしめている。

皇后崎はちらりとそんな海を見てから言った。


「別に、仲間意識とかじゃない」


蓬はそれに「ハッ」と嘲笑いながら言った。


「その割には殺気、強いっすけど?」

「桃太郎が前にいるからだろ」

「自分も、鬼はぶっ殺っすよ!」


その言葉のやりとりが合図とでも言うように海と皇后崎は同時に血触解放した。


「_七つの断罪」

「_素戔嗚尊ッ!」


先に海が走りだし、斬りつけようとする。

その黒曜石のような、いつもは硝子のようになっている瞳に怒りを滲ませ、叫んだ。


「姉さんを、返せ…ッ!」


あまりにも海の走る速度が速かったからか、蓬は避けきることが出来ずに腕を構えていたが横腹から鮮血が吹き出た。

海は感情の一切を廃したような表情をして呟いた。


「私達の、家族を」


渦巻く気持ちを代弁するかの如く、皇后崎が腕から出した丸ノコで切りつけた。

否、切りつけようとした。

蓬は箱で自身を覆い、防御していたのだ。

(何か、言ってる)

海はただ、ぼうっとそう思った。

有り余る怒りのせいで思考が鈍っていたのだ。


「これは…」


だから、自分が箱に閉じ込められたことに、一瞬だけ気付かなかった。

(皇后崎)

同級生は同じく閉じ込められているのだろうか。

動かない頭で考える。


「人間の体って、結構小さくなるんすよ」


弾き出された答えは、『斬り、破れ』だった。

姉から秘密で拝借し、隠し持っていた小さなナイフを利き手で強く握り、手のひらに傷を付ける。


「圧死するまで体感してってくださいよ」


段々と迫ってくる壁にいつもの太刀ではなく、脇差に切り替え、斬りつけた。

何度も、何度も斬りつけ、少し手応えがあった。

(…よし)

頭上に脇差が穴を作り、光が見える。


「…?」


ぽたりと、水のようなものが海の頬に当たり、落ちていった。

何故なのかは分からないが、そんなことは気にせずに穴を広げるようにヒビを入れ、破った。


「昔、廃墟ビルのダクトで寝泊まりしてたことがある。汚いし悪臭も酷かったが…」


皇后崎と同時だったようで蓬は少し驚いていた。


「あそこに比べりゃ、今のはまあまあ良い物件だったぜ」

「…お前を殺すまで、死ねない」


皇后崎と海は再び構え、戦闘体制に入った。


その時だった。


「オイオイお前ら、こんなんで俺を殺せると思ってんのかよ」

「『おれ』じゃなくて『おれら』じゃないかな…」


ごろりと怪物_アグリの首が転がってきた。

話しながら歩いてくるのはクラスメイトである矢颪碇と妹の桃華だった。


「うみねえ!じんくん!」

「二人もいて桃太郎一人倒せねぇなんて雑魚か、よ…」


ぱっと桃華が表情を輝かせ、駆け寄ってくる。

桃華の背後にいた矢颪は、フリーズした後に叫んだ。

目についたのは海の姿。動きにくいからと膝上に破られたスカートからは黒いスパッツと細く長い脚が覗いている。


「なんつー格好してんだ馬鹿か!」

「動きにくかった、から」

「露出すんじゃねえよアホか!アホなのか?!」

「いかりくん、おちついて…」

「イラつくぜ!俺はあの桃太郎を殺…」


一気にまくし立てた矢颪は次に蓬に目を向けた。


「TPO考えろ馬鹿が!肌なんか出しやがって!イライラする…」


大声でそう言いながら親指を噛み切り、血を流していく。

桃華は前鬼の背に乗り、ナイフを構えた。

蓬はその様子にまた手を構える。


「まとめてやってやるっす!」


そう言うや否や海達を閉じ込めたような黒い箱を次々と出していく。

だが、矢颪と前鬼の方が圧倒的に速い。

次々と現れる箱を交わしながら矢颪は蓬の顎に蹴りを入れた。

追いかけるように桃華がナイフを前鬼の背中から投げ、海が付けた傷へと突き刺した。


「今回はハズレだ。今日はブーツか…。怒りの質が悪いな」

「おねえちゃんたち、どこだろ…」


どこまでもマイペースな二人に海が苦笑すると、地面が揺れた。


「うみねえ、こわい…」

「大丈夫。私がいるから」

「おい、なんか揺れてんぞ!勝手に揺れんじゃねぇ!」

「地震…?」


桃華がじわりと瞳に涙を滲ませて呟く。

地震が収まったと思うと、遠くから靴音が聞こえた。


「ないにい…?」


桃華がぴくりと反応し、ぽろぽろと涙を溢しながら無陀野にしがみついた。


「あのね、おねえちゃんときょうにいがね、あのね…」


必死に説明しようとするが、まだ6才だ。しかも焦りなどで思考力が落ちているので尚更だ。

無陀野は桃華を撫でてから蓬に向き直る。


「逃げる?何言ってんすか。目の前にこれだけ鬼がいるんすよ、逃げるわけねえっすよ」


その言葉に桃華がびくりと肩を揺らした。

少し睨むように蓬の方を向き、無陀野のズボンを握りしめる。


「私は桃太郎。鬼を殲滅させる存在」


舐めていたロリポップキャンディーを噛み砕き、ジャケットを脱ぐ。

その顔からは、まだ闘志は消えていなかった。


「全員ここで殺してやるよ!」


蓬はそう言うと攻撃を防いだときのように箱の中に閉じ籠ってしまった。

ふと天井を見ると、崩れそうになっているのが目に入った。


「無人兄さん、いや、先生」

「あぁ。こいつは放って他のやつを助けに行く」


無駄を嫌う兄貴分はそう言うとローラースケートで走っていった。

その姉妹、鬼女につき。

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