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時刻は深夜の2:37
ふと目が覚めた。まだ眠気はあるがなんだか夜風に当たりたくなって、ベットを抜け出してベランダに出る。なんとなく、この時間が好きだった。最近はあまりなかったが、人間とは不思議なもので疲れたなと思う時ほどこうして目が覚める。少し暖かくなってきたとはいえやはりこの時間となるとまだ肌寒さが残る。
しばらく外を眺めていたが、なんだか手持ち無沙汰になってしまって、とりあえずとタバコに火をつける。明かりのないこの空間と、暗闇に慣れてしまった俺の目にはライターの明かりですら眩しく感じてしまって。フィルターを通して煙吸う度に先端がぼやぁとして、燃えているところが段々と近づいてくる。何度も見ているはずの景色なのに飽きなくて、毎度のように見つめてしまう。この辺かと区切りをつけて、最後の一口を吸ってから灰皿に落とす。暗闇のせいか、花火みたいだな、なんて思いながら蓋を閉めてもう一度辺りを見回す。
意味もなく遠くの方を見つめて、ぼんやりと1箇所だけ明るくなっていることに気づく。一瞬山火事か?と焦って、三日月とも言えないほどに細くなった月だと数秒後に気づく。危ない。本当に通報してしまうところだった。こういう時やっぱり目が悪いというのは不便だ。つい先日もイヤホンを虫だと思ってはたき落としてしまいそうになった。
こういう時ほど、歌詞というのは浮かんでくるもので、忘れてしまわないようにとスマホを取りだし「書きだめ」と書かれたメモ帳に思い浮かんだ言葉を留めていく。しばらく作業に夢中になって周りの音が聞こえなくなった頃に、ふわりと肩になにかが乗ったのを感じた。
「あ、ごめん。起こした?」
「いんや、喉乾いて普通におきた」
そう言って横に並ぶ男は俺にブランケットかけながら、当の本人は上裸のままだ。
「寒くないの?」
「むしろ暑いぐらい」
「さすがに寒いと思うけど」
「仁人がいたらあったけぇからいいんだよ」
「なんだよそれ」
しばらくの沈黙のあと。人の体温にあてられたのか、はたまた体力の限界か、さすがに眠くなってきたので、隣の男に声をかける
「ね、そろそろ中入ろ。眠くなってきた」
「お前がベランダ出たんじゃねえか」
「いや、まぁそうなんだけど」
悪態をつきながらも、何故か少しニヤニヤしながら中へ入ろうとする男の背中を見て、ふと思う。
「それ、痛くないの」
「ん?どれ。あーめっちゃ痛い」
「いやそうですよね、うん、ごめん」
「なんで謝んの。じんちゃんが甘えてくれた証拠じゃん?」
「おまえっ…ほんとにまじでありえないんだけど」
「自分から聞いたくせに。実際そんな痛くねぇよ」
そう言われてしまえばそうなのだが、それとこれとは話が違うのだ。ただ痛くしてしまったことへの謝罪だったのに、そんなことを言われてはどうしていいか分からなくなる
「寒いっしょ。おいで。もっかい寝よ」
「水。のんだ?」
「あー忘れた。いいよ、仁ちゃん眠そうだし、俺も眠いし」
とはいえ、さすがに眠気の限界が来ているので大人しく男の腕の中に潜り込む。まるで初めからここに居たんじゃないかってぐらいピッタリとおさまるこの場所が、限界まで来ている眠気をさらに引き上げる。追い打ちをかけるかのように頭を撫でられてしまえばこれはもうKOされたも同然だ。
「おやすみ。仁人。大好きだよ」
言い終わるのとほぼ同時に額に唇が当たる。なんて恥ずかしいやつなんだと思うが、こちらも今日は気分がいい。今なら言ってもいいかな、いいだろう。誰に向けた許可ともしれず、普段なら絶対言わないけど
「だいすきだよ、勇斗。おやすみ」