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2024-09-05


ふわふわとした感覚。足元が不安定な感じがして、でもしっかりと足は地面に着いている。不思議な感覚だった。

森の中を走り始めてから、もう何分経ったか分からない。もう森のどこら辺を走っているのかさえ分からず、何故走っているのかも分からない_いや、その理由は覚えている。逃げているからだ。体に刻まれた傷を見れば分かること。

父に命じられた魔物狩り。飛行魔物<ミティア>を五体倒せばクリアという、分かりやすい任務だった。が、私はしくじった。

いや、私がしくじったというのも原因の一つではあるのだが、それ以上に想定外の状況が出来ていた。通常単体で行動するミティアが群れになっていた事、ミティアが食料に飢えていたこと。予想外だった。きっともう少し私が魔法の才能を持っていたなら、もっと上手くできただろう。

「⋯はっ、はっ、はぁ⋯っ」

呼吸のタイミングがズレる。それと比例して、走るスピードも落ちてくる。

(⋯もう、無理なのかなぁ⋯)

あと一撃でも喰らえば、私は死ぬ。既に致命傷寸前の傷を負っているのだ、今走れていることは奇跡に近い。 だが、もう出血量からして助からない。五感もほぼ消えかかっている。 もう無理だ。死の淵に居る私だって、そのくらいは分かる。

多分、もう無理なんだな。

「⋯『アミュレット』!」

目の前が白いシールドで覆われる。瞬間、傷が塞がる。垂れていた血も消える。聴覚も嗅覚も、全ての五感が私の体へと戻る。

「⋯え?」

何が起きたのか分からなかった。反射的に声が聞こえた方に視線を上げれば、そこには、彼岸花が咲き誇っているという、有り得ない光景が広がっていた。 鮮血じゃない、綺麗な深紅。先程まで無かったはずのそれは確かに存在していた。

「大丈夫?僕が助けるから!」

そう目の前の少年は言う。白髪の髪が揺れるのと同時に、複数の魔法陣が展開された。 見たことない魔法陣の数々。瞬時に、この少年は私よりも強い人間だと感じ取った。

「________。」

何か呪文のような言葉が発せられる。聞いた事のない言葉で、何を言っているのか分からなかった。でも、その魔法が強い事だけは分かって。

「⋯!!」

魔法が発動されると、ミティアがあっという間に地面へと落ちていく。自分があんなに苦労した魔物の群れを、あっという間に倒していく。

「⋯っ〜〜〜〜!!」

高揚感。憧れ。羨望。頬が紅潮するのが分かる。

『凄い』、という少年への興奮と、『才能の無さ』という名の自分への失望が押し寄せる。頭が変になりそうだ。

「⋯っと。大丈夫?君、大分傷凄かったよね?もう治った?痛くない?」

戦闘が終わったのか、少年は私の方へと歩いてくると同時にシールドが割れる。どうやら心配してくれていたらしい。問いかけてくる彼の姿をよく見れば、傷どころか汚れ1つすらない。才能があったなら、私もこうなれただろうか。

「私は、大丈夫⋯」

すごいなぁ、と思い、見惚れながらそう小さな声で答えると、少年は安心したように息を吐いた。

「そっか、良かったよ。この森結構危ないからさ、次来る時は気をつけてね。」

「⋯うん。」

「よし!傷も大丈夫そうだし、僕は行くね!」

「え⋯あの、名前は⋯!」

流石に名前位は知っておきたい。私は意を決して、名前を聞いた。

「名前?んー、そうだなぁ。」

「『████』とでも名乗っておこうかな。」

「じゃあね!お大事に!」

そう名前を言うと、少年は直ぐさまどこかへ去ってしまった。


✦✦✦

「⋯はっ、⋯」

目を開けば、そこは寮の自室だった。耳を澄ませば、小鳥の鳴き声が聞こえる。朝、ということを初めて認識すると、私はガバッと起き上がった。

「夢⋯?」

頬を触りながら、事実確認をする。

どうやら、先程見ていた映像は夢だったらしい。その証拠に、服の汚れも無いし杖も持っていない。

「⋯誰だろう、あの人⋯」

ただ、違和感があった。それは、先程見た夢に出てきた『少年』のこと。私の知り合いにあのような白髪の男児は居ない。森の中を駆け、助けられるという経験も、記憶にない。

「⋯?」

頭が痛む。だが、それも一瞬のことで、直ぐに痛みは消える。思い出しそうになったのか、とも思ったが、痛みを伴う程の記憶なら思い出さなくていい。

「⋯どうしよっかなぁ⋯」

まぁそれはそれとして。一つ問題があったことを思い出した。それはアイル・スローンが連れ去られたということ。少年と聞いて思い出してしまった。

「⋯ま、助けに行こっかな。」

私はその黒色のローブを羽織り、杖を持つ。そのまま扉の戸を引く。

「”__な__のために!”」


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