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<これ以上失いたくないから>

2024-09-21



さて、まずは何からしようか?

問題は山のようにある。終わらない仕事、立て続けに来る任務、⋯そして、誘拐事件の解決。

前者二個に関しては現在進行形でこなしている最中なのだが、最後の解決策がどうにも思いつかない。私単身で何かをしたとしても、それが最善策とは限らないし、寧ろ悪影響を及ぼす可能性だってある。安易に動かない方がいいというのは重々承知している。

だから今はこうして、ただひたすらに潜入任務学生生活をしているんだけど⋯。

「⋯⋯⋯⋯」

どうにも授業に集中できない。今は魔法薬学の時間で、私の得意を発揮出来る時間なのに、指先が動かない。調合は問題なくできているが、それでもスピードは他と比べると明らか遅い。

「⋯ヴィア、⋯シウ・ルヴィア!」

「⋯、!」

偽名名前が呼ばれる。何回も呼ばれていたのか、周りの生徒がこちらに視線を向けているのがわかった。

「どうしたんですか?顔色が優れないように見えるのですが、体調が悪いのですか?」

「あ、⋯えと、⋯⋯」

生徒を救うために考え事をしていたんです、なんてバカ正直に話せるわけがない。私はあくまで潜入任務でこの学校の一年生として存在しているのだから。今の私は、”シウ・ルヴィア”と言う、神覚者でもなんでもない、ただの普通の女子高校生なのだから。私は否定した。

「⋯いえ。違います、なんでもないです」

「⋯ならいいんですけれど。あまり、無理はしないでください。」

私がきっぱりと言うと、先生はそれ以上深堀はせず、授業へと戻って行った。

「つまり、__は_ということが証明され_」

生徒の視線も先生へと返り、私は考え事へとまた戻った。

(⋯でも、やっぱりアイルを助けるなら⋯)

(⋯⋯この道しか、ない)

私はペンを強く握りながら、その問いに答えを出した。


✦✦✦

放課後。私は図書館へと足を運んでいた。

辺りにはぽつぽつと人が居るだけで、昼間のようにたくさんは居ない。まぁ私にとっては好都合だし、声をかけられることがないのはいい。

(んーと、⋯ここか、”禁書”の棚は)

私は禍々しい色合いをした背表紙の本をさーっと流し見しながら、目的の本を探す。

(確か⋯あの本は朱色だった気が⋯)

頭の中でその本の特徴を確認した。朱色、朱色⋯

(!)

あった。その本は棚の1番下、それも端の方に置かれていた。道理で視界に入らない訳だ。

(⋯?あれ、この本⋯)

手に取ると、その本はずっしりとした重さだった。見た目からしてだいぶ厚い本なので、重さに関しては予想していたのだが⋯。

(認識阻害、透明化、⋯凡そ只の禁書にかける魔法の量じゃない⋯それにどの魔法も高度⋯!)

馬鹿みたいな量の魔法がかけてある。こんなに魔法をかけないと行けない程、この本はやばいものなのか⋯いや、そんな事は分かっている。この本の存在を知った時点で、どんな効果をもたらすのかなんてとっくに分かってる。これは、ただの一学生が持ってちゃ駄目なものだ。

(⋯分かってる。これを借りたら、もう戻れない。でも、それでも。”才能がない私”は_)

見捨てれない。見殺しにできない。だから_


私は色褪せたその本を借りて、寮へと戻った。


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