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「それで?結局どうするんですか?」


日本の急かすような声が居間に響いた。それも相まり英吉利は更に頭を悩ませることになる。

事の始まりは十分ほど前。

英吉利が日本が楽しみにとっておいたせんべいを勝手に食べ、それを知った日本が今こうして英吉利に詰め寄っている、という訳だ。

食べていないと言い張る英吉利に、日本はニヤつきながらこう言い放った。


「本当の事を教えてくれるのであれば、私は何もしませんよ」


その言葉に英吉利は身を強張らせた。

そんな自分を見て楽しんでいるかのような表情をする日本に英吉利は思わず溜息をつく。


彼の言っていることは脅しなのか、それとも。


本気なら、自分は相手に何をされるか分からない。


ごくり、と喉を鳴らす。その間にも日本はこちらをじぃ、っと見つめてきていた。


逃がさない。


そう語りかけてくるような目つきだった。

それに臆した英吉利は渋々「自分が食べた」と自白した。


「……」


それに対し日本は何も応えなかった。

痛いほどの沈黙に耐えかね、英吉利は俯く。


普段は優しいけれど、怒らせると何をしでかすか分からない。


それが日本という男だった。


空気が震えそうなほど、胸が振動していた。

十分後の自分は、どうなっているのだろう。

本来ならばいつもと変わらず紅茶を楽しんでいたところだった。

せんべいを食べたのはただ少し、腹を空かせただけ。

自分は何も悪くないだろう、と言い聞かせれば少しは恐怖が収まる気がした。


「…ふぅーん」


沈黙を切り裂く明るい声に顔を上げれば、怖いほどの笑顔を浮かべ、こちらに向かってくる日本が目に映る。


その瞬間、英吉利は〝終わった〟と悟った。


「人のせんべいを勝手に食べるなんて、悪い子ですね?」


私は子供ではない。


いつもはそう反論しているところだが、英吉利は何も言うことが出来なかった。

自身に向けられている視線には、〝喋るな〟という圧が込められている気がしたからだった。


「私がどれほど楽しみにとっておいたのか。


貴方なら分かりますよね、英国さん」


紳士を自称している貴方なら。


付け足された言葉には、刺々しい雰囲気をはらんでいた。


「……すみませ」


「謝る必要はありません」


その言葉に英吉利は顔を上げた。

確かにせんべいごときで怒るなんて馬鹿馬鹿しい。

やっと自分でも気づいたのか、と英吉利はほっとしたような笑みを浮かべる。


「貴方を躾しなおす理由が出来ましたから」


英吉利の笑みが凍りついた。


今、こいつはなんて言ったんだ?


「……待って下さい、貴方、先程〝本当の事を言ってくれたら何もしない〟って」


「本当だと思ってたんですか?」


くつくつと笑う日本に、英吉利は膝から崩れ落ちそうになった。

自分が今されていることは、過去に自分がやってきたことと同じだった。


相手を欺き、自身の利益にする。


今まで自分がついた嘘が、一つずつ脳内で再生された。


遠い目をしている英吉利に日本は笑みをこぼす。


「さ、罰を受けてもらわないと」


自身の腕を引っ張りどこかに連れて行く日本が楽しそうな笑顔をしているのを見て、英吉利は再度溜息をついた。


「………二枚舌」


その言葉は、日本に聞こえること無くただ空中を彷徨っていた。

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