テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
ドライヤーの冷風
2,270
#政治的意図なし
まいだよ
1,872
8,490
#明太子に食われる鈴木
明太子に食われる鈴木
10,043
コメント
1件
うわあ、カナダ視点で一気に世界観が深まった……! 最初は「守ってあげたい」っていう純粋な庇護欲だったのが、再会した瞬間に恋心に変わるところ、すごく丁寧に描かれてて胸がぎゅっとなった。パンケーキ作るシーンとか、小さな日本くんの「あまい……✨」って反応とか、もう可愛すぎてにやにえが止まらなかったよ。最後の「パートナーじゃあないのか」のぼそっとした本音、めちゃくちゃ効いた……。続きが気になる!
カナ日
今回はカナダサイドです。
第一、二話を読んでない方はそちらをみてからこちらのお話を読むことを推奨します。
⚠️🇺🇸と🇨🇦は兄弟関係で🇬🇧とは親子関係です。政治的意図はありません。
戦争の描写があります。
史実めっちゃ改変しています。別の世界ってぐらいに。ごめんなさい🙏
君と出会ってから僕は世界が輝いて見えた気がした。
最初に出会ったのは、まだ世界が激動の戦後を迎えて間もない頃だった。僕は兄さんに連れらて、日本の元へと足を運んだ。
当時の僕の第一印象は、きっと兄さんの影に隠れて目立たない、口数の少ない巨人といったところだっただろう。体格だけは兄さんより少し高くてスラッとしていたけれど、当時の日本君の小ささに比べたら、僕だって十分威圧感を与えてしまっていたんだろうなぁ。
🇺🇸「hey!日本!元気にしていたか!?!?」
🇨🇦「兄さんうるさいよ……日本君が驚いちゃうでしょ? 初めましてこんにちは、日本君。僕はカナダ、アメリカの弟だよ。よろしくね」
🇯🇵「こ、こんにちは……」
怯えるようにして僕たちを見上げる日本君は、まだ幼い子供の姿をしていた。こんな大きな男たちに囲まれて、緊張しないわけがないよね。
だけどその小さな体を守ってあげたいと、僕の胸の奥がじんわりと温くなったのを今でもよく覚えている。
🇺🇸「これから一週間、カナダとここに泊まるな!じゃあとりあえず日本の家に行くぞー!」
兄さんの黒いジープに乗り込んで、でこぼことした未舗装の道を進んでいく。兄さんが荒々しくハンドルを握り、僕と日本君は後部座席に並んで座った。
じっと僕の顔を覗き込んでくる視線に気づいて、僕は首を傾げる。
🇨🇦「……? どうしたの? 僕の顔に何かついてたりする?」
🇯🇵「い、いえ! その……甘い匂いがするなぁって……」
🇨🇦「気づいちゃったか〜! 僕実はね、メープルっていうとっても甘い……うーん、蜂蜜みたいなのかな? が好きでね。よく甘い匂いがするって言われるんだ〜」
🇯🇵「めーぷる! 美味しそうです……✨」
目をきらきらと輝かせる姿があまりにも愛らしくて、僕の心はすっかり解かされてしまった。
🇨🇦「ふふっ、そうでしょ〜。じゃあ3時のおやつにパンケーキを作ってあげるね」
「ぱんけーきってなんだろう」と不思議そうに首を傾げる彼を乗せて、ジープはようやく彼の家へとたどり着いた。
日本君の家は都会の騒がしい音などはなく、豊かな自然が広がる森の中にあった。耳を澄ませば様々な鳥のさえずりが聞こえ、近くには澄んだ川が流れている。
本当に綺麗な場所だなぁ。
そんなことを考えているとちょうど3時になって小腹が減ってきた。
🇯🇵「お腹すいたなぁ」
🇨🇦「じゃあ!今日言ってたパンケーキ、一緒に作る?」
🇯🇵「いいんですか!?」
嬉しそうに台所へ案内してくれた日本君だったけれど、当時の日本の台所は僕たちの国のものとは全く違っていた。
🇨🇦「わあ、すごいね……これってどうやって火をおこすんだろう……あっちとじゃ全然違うなぁ」
🇯🇵「僕に任せてください!! えっと待ってください……たしかここにマッチが……」
🇨🇦「マッチは危ないから僕がするよ。ここに火をつければいい?」
小さな手が火傷をしないかハラハラして、僕は懐かしい気持ちになった。僕の家族は兄さん以外にも沢山いる。弟もだ。だから昔一緒に料理をしたなぁと懐かしみながら、そっとマッチを受け取った。
それから二人で並んで材料を混ぜ合わせ、フライパンに生地を広げていく。
フライパンから広がる甘い匂いと、パチパチと弾ける。日本君がボウルに残った生地が手についたとき、こっそりそれを舐めて「あまい……」と呟いていた。あぁ、なんて可愛い子なんだろう。
🇨🇦「にほーんくーん!できたよ〜」
焼き上がった狐色のパンケーキに、もみじの形をした瓶を渡してあげる。
開けた瞬間の甘い香りに誘われて、日本君は思わずシロップをどばどばと大量にかけてしまった。ハッと気づいて「カナダさんの分がなくなっちゃう!」と慌てる顔がまた愛おしい。
🇨🇦「ん? あ、日本心配しなくていいよ〜。僕いーっぱい持ってきているし、多分日本にいる間はなくならないと思うよ〜」
🇺🇸「カナダはメープル中毒だもんなぁ。なくなったりでもしたら家に帰るぐらいにはな?」
いつの間にか戻ってきた兄さんにからかわれて、僕は思わずリスみたいに頬を膨らませて抗議してしまった。
兄さんが不在がちだったあの一週間、僕はつきっきりで日本君の隣にいた。
森を探索するときも、ご飯を一緒に食べるときも、夜に布団を並べて寝るときも。規則正しい小さな寝息を聞きながら、「この小さな国を、ずっと守ってあげたい」と心から願っていたんだ。それは当時の僕にとって、純粋な庇護欲であり、家族に向けるような優しい愛情だった。
帰国する前日の夜、日本君がはにかみながら僕たちにお守りを手渡してくれた。兄さんには大きな星の刺繍、そして僕には、一生懸命に縫ってくれた歪なもみじの刺繍が入ったお守り。
🇺🇸「………日本……ありがとな!! 全然日本とこの一週間遊んでたりとか滅多にしなかったんだが、俺にくれるなんて嬉しいぜ!!」
🇨🇦「僕は日本と一緒に遊んだり、お話することは多かったけど、改めて日本と一緒に遊べて楽しかったよ! ありがとう。また日本に来るね。絶対」
嬉しさと、離れがたい切なさで眉をへにゃりと下げて笑う僕を、日本君は不思議そうな目で見つめていた。
あのとき貰ったお守りは、僕にとって何よりの宝物として、ずっと大切にしまわれていたんだ。
それから、どれほどの月日が流れただろう。
世界はあの最悪とされた戦争から再び立ち直り、あの日小さかった男の子は、一国の立派な代表として再び僕の前に現れた。
アメリカ国際会議の巨大なビルの廊下。方向音痴の要素をてんこ盛りに抱えてオロオロしている彼を見つけた瞬間、僕の時が一気に巻き戻る。
「……日本君?」
思わず声をかけたとき、僕の胸はどきりと大きく跳ね上がった。
すらりと背が伸びて、大人の男の人として凛と佇む彼の姿。見上げる瞳はあの頃と変わらず澄んでいるけれど、激動の時代を乗り越えてきた強さと美しさがそこにはあった。
その姿を見た瞬間、僕の中で何かがガシャリと音を立てて崩れた。
ずっと「守りたい可愛い子供」だと思っていたはずの感情が、一瞬にして「一人の特別な人として、彼の隣にいたい」という甘酸っぱい恋心へと姿を変えた。何十年も温めていた優しい気持ちが、ようやく本当の恋として目を覚ましたみたいに。
会議のあと、自販機の横で「甘いものが食べたい……」と座り込んでいる彼を見つけたときは、愛おしさが胸から溢れそうだった。
背後から声をかけると、「忍者ですか!?」なんて目を丸くして驚く姿がたまらなく可愛くて、ついつい少し意地悪な質問をしてしまう。
🇨🇦「ええ……気づかなかったの……? てっきり僕は甘いものが好きの代表だって思われて、話しかけて欲しかったんだと思って……ごめんね……迷惑だったよね……?」
🇯🇵「ちょ! ちょっと待ってください!! 貴方のパンケーキ食べたいです!!」
パッと顔を輝かせる彼の手を引いて、僕たちはキッチンへと向かった。
向かい合って焼き立てのパンケーキを食べているとき、彼が少し照れたように僕の顔を見つめてくるのが、なんだかくすぐったくて仕方がなかった。
(日本君、君は気づいていないかもしれないけれど……あの日よりもずっと、格好よくて綺麗になったね)
楽しい時間はあっという間に過ぎ、帰国の時間が迫る彼が慌てて立ち上がる。
🇨🇦「ま、待って! 連絡……連絡先交換しない? せっかくやっと会えたんだし……」
🇯🇵「あぁ! ぜひよろしくお願いします! お互いに良い同盟国のような関係を続けたいです!!」
はにかむように微笑む彼に、僕はつい本音を出してしまった。
🇨🇦「パートナーじゃあないのか」
🇯🇵「え」
ポカンとフリーズしてしまう純粋な彼を見て、僕は慌てていつもの笑顔を作った。
🇨🇦「いいや! なんでもない!これからもよろしくね〜!」
遠くなっていく彼の背中が見えなくなるまで、僕は大きく手を振り続けた。
一瞬だけ不思議そうに、少し悲しそうな顔をした僕の表情に首を傾げていたけれど、彼はまだ何も気づいていない。
ただの同盟国じゃなくて、いつかは君の一番特別なパートナーになりたいな。
今度は大人の恋として、僕のことを見つめてもらえるように。焦らずゆっくり、僕の甘いメープルの香りで、君の心をいっぱいにしていこう。
「またね、日本君」
ふふっ、と幸せな未来を思い描きながら、僕は温かな余韻と共に静かに歩き出した。
続く