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×××が幼児化⁉︎🤭
朝。
キルアが目を覚ますと、
腕の中が——やけに軽い。
「……?」
布団をめくった瞬間、
そこにいたのは。
小学一年生くらいの、×××。
ぶかぶかのTシャツに埋もれて、
袖は手を覆って、
首元はずり落ちそう。
きょとん、とした顔で
キルアを見上げる。
「……きるあ?」
声まで小さい。
キルアは数秒固まってから、
勢いよく顔を背けた。
「……だめだこれ」
「服、まずい」
理性が仕事をする。
⸻
キルアは即決でゴンに連絡した。
事情を聞いたゴンは、
驚きつつもすぐに来てくれる。
「はい」
差し出されたのは、
黒いリボンがついた、シンプルで可愛いワンピース。
「サイズ合いそうだったからさ」
キルアは一瞬言葉を失う。
「……ゴン」
「ナイス判断」
ゴンはニヤッと笑って一言。
「完全に保護者じゃん」
⸻
着替え。
キルアは最大限、
見ない・慌てない・触れすぎないを徹底。
後ろを向いて、
目線を逸らして、
必要なところだけ声をかける。
「……腕、通せるか?」
「うん……」
小さな声で返事。
布の擦れる音だけが聞こえる。
ワンピースを着た×××は、
くるっと一回転。
「どう?」
少し照れた笑顔。
キルアは、
完全に撃ち抜かれる。
「……」
「……かわいすぎだろ」
思わず本音。
×××はぱあっと笑って、
キルアの服の裾を掴む。
「きるあ、いっしょ」
その一言で、
キルアの心は完全に溶ける。
⸻
それを見ていたゴンが、
腕を組んで一言。
「親バカだなー」
キルアは即答。
「悪いかよ」
「×××だぞ?」
真顔。
ゴンは吹き出す。
「はいはい」
「じゃ、俺は見守り隊に回るわ」
そう言って帰っていった。
⸻
静かになった部屋。
×××はソファにちょこんと座って、
足をぶらぶら。
キルアは隣に座って、
自然に頭を撫でる。
「今日は俺から離れんな」
「……うん」
小さくうなずく×××。
言葉も、声も、体も小さくなってるのに、
大事な存在感だけは変わらない。
キルアは、
その小さな頭をもう一度撫でながら思う。
(……戻るまで)
(俺がちゃんと守る)
メロメロなのを自覚しつつ、
それでも誇らしげに。
キルアの一日は、
全力保護モードで始まった。
キッチンから、
甘い匂いが広がる。
「……もうすぐだぞ」
フライパンの前に立つキルアは、
いつもより少しだけ丁寧。
焼き色を確認して、
お皿にふわっと盛りつける。
「はい」
テーブルに並んだのは、
焼きたての🥞。
×××の前には、
少し小さめにカットされたもの。
「わぁ……!」
目をきらきらさせて、
×××はすぐにフォークを握る。
キルアはメープルシロップを持ってきて、
迷いなく——
「ほら」
とろ、とろ、とろ。
「……かけすぎじゃない?」
「今日はいい」
即答。
⸻
×××は一口、
それからもう一口。
そして——
口いっぱいに詰め込む。
「おい、ゆっくり——」
言い終わる前に、
×××の口の周りが
見事にメープルでベタベタになる。
キルアは一瞬固まってから、
小さく笑った。
「……もう」
ティッシュを取り、
そっと口元に手を伸ばす。
「動くな」
×××は素直にじっとする。
「ん……」
キルアは慎重に、
ほっぺ、口角、あご。
拭きながら、
思わず表情が柔らぐ。
「ほんと、食べるの下手だな」
でも声は、
完全に優しい。
×××は拭いてもらいながら、
もぐもぐ続行。
「おいしー」
その一言で、
キルアの苦笑は完全に愛おしさに変わる。
「……よかった」
そう呟いて、
ようやく自分の分のパンケーキに手を伸ばす。
食べながらも、
視線は自然と×××へ。
シロップで光る指。
満足そうな顔。
(……朝からこれか)
キルアは内心、
完全にやられていた。
「こぼすなよ」
そう言いながら、
またティッシュを準備している自分に気づいて、
さらに小さく笑う。
×××は、
パンケーキを食べ終わると、
満足そうにお腹を押さえて——
「ごちそうさま」
その言葉に、
キルアは少しだけ胸を張る。
「どういたしまして」
(……戻るまで)
(こういう時間も、悪くないな)
甘い匂いと、
静かな朝。
キルアの一日は、
×××のお世話係として、
順調に進んでいた。
「きるあ、こうえん!」
パンケーキを食べ終わった×××が、
目をきらきらさせて言う。
「ばすけ、したい」
キルアは一瞬だけ迷う。
(小さいしな……)
(転んだら——)
でも、
×××の期待いっぱいの顔を見て、
ため息混じりに立ち上がる。
「……無茶すんなよ」
「ボール持ってく」
それだけ言って、
バスケボールを抱える。
×××はぱあっと笑って、
キルアの手をぎゅっと握る。
「やった!」
⸻
公園。
ブランコや滑り台の横にある、
小さめのバスケットゴール。
キルアはまず、
×××の靴ひもを確認してから言う。
「走るとき、気をつけろ」
「うん!」
元気いっぱいの返事。
キルアは軽くボールを渡す。
「投げれるか?」
次の瞬間。
×××は、
迷いのないフォームでボールを構える。
小さな体なのに、
姿勢がきれいで——
ぽん。
綺麗な放物線を描いて、
ボールはリングに当たって入った。
キルアは、
目を見開く。
「……は?」
もう一度。
ドリブル。
リズムがいい。
低くて安定してる。
シュート。
——入る。
「……」
完全に言葉を失うキルア。
×××は嬉しそうに振り返る。
「できた!」
キルアは思わず、
大きく息を吐いてから笑った。
「……お前」
「サイズだけ小さくなっただけかよ」
×××は誇らしげに胸を張る。
「ばすけ、すき!」
キルアはしゃがんで、
目線を合わせる。
「……すげーよ」
本気の声。
「ちっちゃくなっても
それは変わらないんだな」
×××は照れたみたいに、
でも嬉しそうに笑う。
キルアは自然に、
頭を撫でる。
「でもな」
「今日はここまで」
「疲れたらすぐ休憩」
×××は少し不満そうにしつつも、
ちゃんとうなずく。
「……はーい」
キルアはその返事に、
また苦笑する。
(心配してた俺がバカみたいだ)
公園の空の下。
小さな体で、
変わらない輝きを見せる×××を見て、
キルアは改めて思った。
(こいつ、ほんとにすごい)
そして、
そんな×××を守れる距離にいられることが、
少し誇らしかった。
ボールを抱えて並んで歩く二人。
幼児化しても、
二人の関係は、
ちゃんとそこにあった。
公園を出た帰り道、
キルアは自然にコンビニへ足を向ける。
「夕飯の材料、買ってくる」
「えー」
×××は少し不満そうにしながらも、
キルアの服の裾を掴いてついてくる。
店内。
かごに入るのは、
野菜、卵、牛乳。
完全に“ちゃんとした買い出し”。
……のはずだった。
お菓子コーナーの前で、
×××がぴたっと止まる。
「きるあ」
「なに」
「これ」
指さしたのは、
カラフルなお菓子とアイスケース。
キルアは一瞬考えて——
ため息。
「……一個だけな」
×××はぱあっと笑う。
「やった!」
お菓子を選んで満足したと思ったら、
今度はアイスケースを見上げて、
「ねぇ」
「はんぶんこ、しよー?」
その一言。
キルアは、
一切抵抗せずにアイスをかごに入れる。
「……半分な」
完全にちょろい。
×××は勝ち誇った顔で、
キルアの手をぎゅっと握る。
⸻
会計を済ませて外に出ると、
夕焼けが少し濃くなってきていた。
そのとき。
「……ねこ」
×××が立ち止まる。
植え込みの影に、
小さな野良猫。
×××はしゃがみ込んで、
そっと声をかける。
「ねこさん」
「こんにちは」
小さな手を差し出して、
ゆっくり、ゆっくり。
猫は警戒しつつも、
逃げずにじっと見ている。
「かわいいね」
「おなかすいてる?」
その姿が——
あまりにも可愛くて。
キルアは無意識に、
スマホを取り出していた。
(……やば)
動画、回ってる。
×××が猫に話しかけて、
笑って、
ちょっと首をかしげる。
猫がにゃあと鳴く。
「しゃべった!」
嬉しそうな声。
キルアは、
完全に頬が緩んだまま撮り続ける。
(……保存確定)
やがて猫は、
すっと路地の奥へ。
×××は名残惜しそうに手を振る。
「ばいばい」
立ち上がると、
キルアがスマホをしまう。
「……今の、撮った?」
×××が聞くと、
キルアは一瞬だけ視線を逸らしてから、
「……記録用」
誤魔化しきれてない。
×××は首を傾げる。
「きるあ?」
「なんでもない」
そう言いながら、
片手で×××の手を握り直す。
買い物袋と、
アイスと、
さっきの動画。
キルアの中では、
全部大事な“今日”だった。
夕焼けの帰り道。
小さな×××と並んで歩きながら、
キルアは心の中で決めていた。
(……戻っても)
(この動画、消さねーから)
完全に、
親バカの顔だった。
家に帰ると、
×××は少しだけ眠そうな顔。
「おなか、すいた」
「じゃあ昼な」
キルアは手早く卵を焼いて、
ふわふわの卵サンドを作る。
耳は落として、
食べやすいサイズに切って。
「はい」
×××は両手で持って、
もぐもぐ。
「おいしい」
その一言に、
キルアの口元が緩む。
「そりゃよかった」
⸻
食べ終わると、
×××はお気に入りの猫のぬいぐるみを抱えて、
ソファにごろん。
「ねむい……」
数分後には、
すっかり夢の中。
猫人形をぎゅっと抱きしめて、
小さく口を開けて——
よだれ、ちょっと垂れてる。
キルアはそれを見て、
完全に固まる。
「……反則だろ」
小さく呟いて、
そっとティッシュで口元を拭く。
そのまま、
スマホを構えて——
一枚。
もう一枚。
角度を変えて、
さらに一枚。
(……可愛すぎ)
撮った写真を見返して、
満足そうにうなずく。
「保存……っと」
完全に親バカ。
⸻
三時。
「×××、起きろ」
優しく声をかけると、
×××は目をこすりながら起きる。
「……あいす」
ちゃんと覚えてる。
キルアは冷凍庫からアイスを出して、
半分に割る。
「半分こな」
二人で並んで、
スプーンで食べる。
「つめたい!」
「ゆっくりな」
笑い合いながら、
同じアイスを分け合う時間。
×××は嬉しそうで、
キルアも自然と笑っている。
⸻
夕方。
キッチンから、
いい匂いがしてくる。
「なに?」
「オムライス」
×××の好きなやつ。
卵はふわっと、
ケチャップは控えめ。
お皿に盛って、
小さく「×」の文字を描く。
「はい」
×××は目を輝かせる。
「わあ……!」
一口食べて、
満足そうにうなずく。
キルアはその様子を見ながら、
頬を緩めたまま自分の分を食べる。
(……一日中世話してたのに)
(なんでこんなに幸せなんだ)
テーブル越しに見る、
小さな×××。
幼児化しても、
好きなものも、
笑い方も、
全部変わらない。
キルアは、
オムライスを食べながら思う。
(戻るまで)
(俺がちゃんと、守る)
その顔は、
完全に——
幸せそうな保護者の顔だった。
夜7時。
キルアは脱衣所の前で、
腕を組んだまま真剣に悩んでいた。
(……一人で風呂は危ない)
(でも、俺が全部入れるのは……違う)
視線の先では、
×××がパジャマを抱えて不思議そうに見上げている。
「きるあ?」
「……待て」
キルアは深く息を吸って、
結論を出した。
「頭だけ洗う」
「それなら安全だ」
⸻
小さなバスローブを着せて、
滑らないように足元を確認。
「動くなよ」
「め、つぶってろ」
シャワーの音は弱め。
泡が目に入らないよう、
片手でそっとおでこを押さえる。
「……くすぐったい」
「我慢」
声はそっけないけど、
動きはとても丁寧。
洗い終わると、
すぐにタオルで包む。
「よし」
「転ぶなよ、ゆっくり来い」
キルアは不安で、
脱衣所のすぐ前から一歩も動けない。
——数秒が、やたら長い。
⸻
服を着た×××が出てきたとき、
髪はびしょびしょ。
「……寒くないか?」
首を振る×××を見て、
キルアはソファに座らせる。
「ここ来い」
ドライヤーを持って、
自分の膝の上に頭を乗せさせる。
「動くな」
温風を当てながら、
指でやさしく髪を分ける。
ぽわぽわして、
柔らかい髪。
×××の呼吸が、
だんだんゆっくりになって——
「……」
キルアが覗き込むと、
もう眠ってる。
口元はゆるんで、
とても安心した顔。
「……はや」
小さく笑って、
ドライヤーを止める。
そのまま、
スマホを取り出して——
一枚。
もう一枚。
「……今日何回撮ってんだ、俺」
言いながら、
満足そうに見返す。
⸻
そっと×××を抱き上げて、
ベッドへ。
布団をかけて、
そっと髪を撫でる。
「おやすみ」
キルアは立ち上がり、
部屋を出ようとした、そのとき。
「……きるあ」
振り返ると、
×××が半分寝ぼけた顔で起き上がっていた。
「となりで……ねて?」
小さな声。
不安そうな目。
キルアは一瞬だけ固まって、
それから静かにため息。
「……仕方ねーな」
靴下を脱いで、
ベッドの端に横になる。
「くっつくなよ」
と言った直後、
×××が自然に腕に収まってくる。
「……」
キルアは抵抗をやめて、
そのまま背中に手を回す。
「……寝ろ」
×××は安心したみたいに、
すぐに眠る。
キルアも、
その寝息を聞きながら、
目を閉じた。
(……今日は、よく頑張った)
守る一日。
甘くて、静かな夜。
二人はそのまま、
同じリズムで眠りに落ちていった。
朝。
目を開けた瞬間、
視界に入ったのは――
子供用のパジャマの袖と、
自分を包む白い腕。
(……え?)
頭が一瞬、真っ白になる。
ゆっくり状況を確認すると、
自分はキルアの腕の中。
しかもサイズが合ってない、
明らかに子供用のパジャマ。
(なにこれ……)
心臓がドクンと鳴る。
キルアはまだ熟睡中。
寝息は規則正しくて、
腕に力は入っていない。
(今のうち……!)
そっと、そーっと、
腕を抜いてベッドから出る。
代わりに、
近くにあった猫のぬいぐるみを
キルアの腕の中に滑り込ませる。
……成功。
⸻
一旦自分の服に着替えて、
深呼吸。
(夢……じゃないよね)
ベッドに戻って、
キルアの寝顔をじっと観察する。
寝てるキルアは無防備で、
前髪が少し目にかかってて、
昨日よりもずっと穏やかな顔。
(……守られてたんだ)
そう思った瞬間。
「……」
キルアが、
ゆっくり目を開ける。
そして腕の中を見て――
「……?」
次の瞬間、
勢いよく上半身を起こす。
「……は?」
キルアの視線が、
ぬいぐるみ → ××× → もう一度ぬいぐるみ。
「……×××?」
×××が立っているのを見て、
完全に固まる。
「……戻ってる?」
「……は?」
⸻
事情を説明すると、
キルアは一瞬黙ってから、
「……あー……」
と頭を掻く。
「昨日な」
「お前、幼児化してた」
「小学一年くらい」
×××が固まっていると、
キルアはポケットからスマホを出す。
「証拠ある」
「……見る?」
嫌な予感しかしない。
——そして。
画面に映ったのは、
🥞を口いっぱいに頬張る×××。
「ちょっ……!」
次は、
公園帰りに猫にしゃがんで話しかけてる動画。
「……待って待って!!」
さらに、
猫のぬいぐるみ抱えて
よだれ垂らして寝てる写真。
「やめて!!!!」
×××は顔を両手で覆う。
「むり無理無理!!」
「見ないで!!」
キルアは完全に楽しそう。
「いやー」
「全部可愛かったけどな」
「特にここ」
もう一枚、
膝の上で髪乾かされながら寝てる写真。
「……っ!!」
耳まで真っ赤になる×××。
キルアはニヤッと笑って、
わざと近づく。
「なあ」
「またなったらどうする?」
「俺、慣れてるから世話」
「ショートケーキも買ってやるし」
「アイス半分こもな」
×××が慌てて顔を上げると、
キルアはすぐ視線を逸らす。
「……別に」
「嫌じゃなかったし」
小さく、
でも確実に甘い声。
「……昨日、俺」
「結構、幸せだった」
からかい半分、
本音半分。
朝の光の中で、
二人の距離は
いつもより、少しだけ近かった。
「……消して」
ベッドの端で、
×××が真剣な顔で言う。
キルアはスマホを胸に引き寄せて、
一歩下がる。
「やだ」
「お願い!」
「やだ」
即答。
「なんでそんな必死なんだよ」
「恥ずかしいに決まってるでしょ!!」
キルアは少しだけ目を細める。
「でもさ」
「俺にだけ見せてた顔だぞ?」
「それ」
「消す理由ある?」
×××は言葉に詰まる。
「……あるし……」
「俺にはない」
そう言って、
スマホをポケットにしまう。
「記念」
「一生モン」
「一生!?」
⸻
その時。
「おーい、いるー?」
聞き慣れた声。
ドアが開いて、
ゴンがひょこっと顔を出す。
「昨日どうだった?」
「なんか静かだったけど」
キルアは一瞬固まってから、
ニヤッとする。
「ちょうどいい」
「ゴン、見せたいものある」
「ちょ、ちょっと!?」
ゴンの横に並んで、
スマホを操作。
画面を覗いたゴンは——
「……」
一秒。
二秒。
「……ぶっ」
「なにこれ!!」
「かわいすぎでしょ!!」
×××は完全に固まる。
「やめて!!」
「ねえ見てこの顔!」
「パンケーキ、口から落ちそう!」
「あとこれ!」
猫に話しかけてる動画を見て、
ゴンは目を輝かせる。
「キルア!」
「完全に親じゃん!」
「いや、親以上だよこれ!」
キルアは腕を組んで、
ちょっと誇らしげ。
「だろ?」
「一日中こんなんだった」
「ずっと膝の上」
「離れない」
「……」
×××は顔を覆う。
「言わなくていいから!!」
ゴンはニヤニヤしながら、
×××を見る。
「ねえ×××」
「キルアさ」
「昨日ずっと言ってたよ」
『かわいい』
『今のも撮っとこ』
『あ、寝た……』
『起こしたくねえ……』
キルアが慌てる。
「おいゴン!!」
「言うなって!」
「えー?」
「事実じゃん」
ゴンは肩をすくめる。
「キルア、完全にメロメロ」
「守る気満々」
「一生面倒見る顔してた」
×××がそっとキルアを見ると、
キルアは視線を逸らして耳を赤くする。
「……うるせー」
小さく呟いて、
×××の方を一瞬だけ見る。
「……でも」
「嘘じゃない」
ゴンは満足そうに立ち上がる。
「いやー」
「朝からいいもの見た」
「お邪魔しましたー」
玄関に向かいながら、
「写真、バックアップ忘れるなよキルア!」
「おい!!」
ドアが閉まる。
静かになった部屋で、
×××は深くため息。
「……最悪」
キルアはそっと近づいて、
頭を軽くぽんと撫でる。
「でもさ」
「昨日も今日も」
「俺は嬉しかった」
少しだけ照れた声。
「だから」
「写真は消さない」
「代わりに」
「俺以外には見せない」
距離が、また近づく。
からかわれたはずなのに、
胸の奥はあったかいまま。
ソファの前。
×××は正座。
キルアは腕を組んでソファに深く座ってる。
完全に立場が違う。
「……じゃあ交渉します」
×××が真剣な声で言うと、
キルアは片眉を上げる。
「ほう?」
「条件は?」
「その写真……消してください」
「却下」
即答。
「まだ何も言ってないのに!?」
「言う前から分かる」
キルアはスマホを軽く振る。
「どうせ
“お願い”とか
“一回だけ”とか
“恥ずかしいから”だろ」
×××はぐっと詰まる。
「……じゃあ」
少し考えてから、
×××は小さく言う。
「一週間、キルアの言うこと聞く」
キルアの口元が、にやっと歪む。
「それで?」
「消すとは言ってない」
「え!?」
「聞くだけだ」
「……ずるい!」
キルアは楽しそうに笑う。
「続けろよ」
×××は悔しそうにしながら、
声を少し小さくする。
「……手、つなぐのも」
「拒まない」
「……キルアが甘えてきても」
「突き放さない」
キルアの目が、わずかに揺れる。
一瞬だけ。
でもすぐに、
意地悪な笑顔に戻る。
「で?」
「写真は?」
「……」
×××は顔を赤くして叫ぶ。
「なんで!?」
「十分じゃない!?」
キルアは立ち上がって、
距離を一気に詰める。
×××の前にしゃがんで、
目線を合わせる。
「だってさ」
「昨日の×××」
「俺にしか見せてない顔ばっかなんだよ」
「消したら」
「もったいないだろ」
そう言って、
そっと×××の頭に手を置く。
「安心して寝て」
「俺の膝で」
「俺の名前呼んで」
「俺に甘えてた」
指先で、軽く髪を撫でる。
×××の心臓がうるさくなる。
「……ずるい……」
「今それ言うの反則……」
キルアは満足そうに笑う。
「だろ?」
「だから消さない」
「一生」
「俺の宝物」
×××は諦めたように、
キルアのシャツをぎゅっと掴む。
「……せめて」
「見返す時」
「一人の時にして」
キルアは一瞬考えてから、
「それは約束する」
「……」
「でも」
少しだけ顔を近づけて、
小声で付け足す。
「かわいいって思ったら」
「また撮るからな」
×××は完全に負けた顔で、
「……最低……」
そう言いながらも、
キルアの袖を離さなかった。
キルアはそれを見て、
ますます機嫌が良くなる。
テーブルの上には、
キルアのスマホと、×××がさっき書いた紙。
《幼児化時のルール案》
キルアは腕を組んで椅子にもたれ、
×××は少し緊張しながら向かいに座る。
「……じゃあ会議始めます」
×××がそう言うと、
キルアは口角を上げた。
「はいはい、議長どうぞ」
「まず第一条」
×××は紙を指でトントン叩く。
「動画撮影は禁止です」
キルアは一瞬、黙る。
「……理由は?」
「猫に話しかけてる動画を見返されるのは」
「精神的ダメージがでかすぎます」
キルア、耐えきれず吹き出す。
「だってさ、あれ」
「かわいすぎた」
「語彙なくなるレベル」
「却下」
「却下しないで!?」
「代案出す」
キルアはスマホをテーブルに置いて、
指を一本立てる。
「動画は禁止でいい」
「でも」
「写真は可」
「しかも一日三枚まで」
×××は即座に反論。
「多い!」
「一枚!」
「一枚は少なすぎ」
「じゃあ二枚!」
「……二枚半」
「半ってなに!?」
結局、
・写真:2枚まで
・動画:完全禁止
で一旦妥協。
×××がほっと息をつく。
「……よかった」
「これで少しは安心……」
キルアは不意に身を乗り出す。
「じゃあ第二条」
「なに?」
「抱っこは制限なし」
×××が一瞬フリーズする。
「それは……」
「危ないからな」
「安全管理」
「おんぶ、膝の上、添い寝」
「全部必要」
×××は顔を赤くしながら、
小さくうなずく。
「……安全なら……」
「よし通過」
キルア、即決。
「第三条」
今度は×××が言う。
「からかい禁止」
「昨日みたいに」
「後からニヤニヤしながら言うのは禁止」
キルアは少し考えて、
珍しく素直に頷く。
「……努力はする」
「努力?」
「我慢できなかったら」
「甘やかす方向に切り替える」
×××はそれを聞いて、
なんだか負けた気がしてくすっと笑う。
最後。
×××が一番下に書いた条文を読む。
「最終条」
「幼児化しても、元に戻っても」
「キルアはキルアで、×××は×××」
「……恥ずかしいから」
「覚えておくこと」
キルアは少し驚いた顔をしてから、
静かに微笑む。
「それ」
「一番大事だな」
そう言って立ち上がり、
×××の頭に手を置く。
「ちっちゃくなっても」
「大人に戻っても」
「どっちも俺のだから」
×××は顔を真っ赤にして抗議する。
「そ、そういうの!」
「会議中に言わないで!」
キルアは楽しそうに笑う。
「議事録に追加しとけ」
「照れた顔は反則って」
×××は紙を畳んで、
キルアの胸に押し付ける。
「……この会議」
「キルア有利すぎ」
「知ってる」
そう言いながら、
キルアは×××を軽く抱き寄せる。
「でもな」
「次幼児化しても」
「俺が全部守るから」
甘くて、安心で、
少しだけずるい会議は
こうして満場一致で可決された。
その紙は、
キッチンとリビングの間の壁に、
わりと堂々と貼られていた。
《幼児化時のルール》
・動画撮影は禁止
・写真は2枚まで
・抱っこ制限なし
・からかい禁止(努力目標)
・幼児化しても元に戻っても×××は×××
——完。
×××は最初、
「ちょっと目立たない?」と言ったのに、
キルアは平然と
「大事なことだから」と言って貼った。
⸻
数日後。
「お邪魔しまーす!」
いつもの軽い声と一緒に、
ゴンが家に入ってくる。
普通に靴を脱いで、
普通にリビングに向かって——
ピタッ。
「……ん?」
ゴンの視線が、
例の紙に吸い寄せられる。
数秒、無言。
次の瞬間。
「なにこれ!!!」
×××とキルア、同時にビクッ。
「ま、待ってそれは!」
「説明するから!」
ゴンは紙に近づいて、
一行ずつ声に出して読む。
「動画撮影は禁止……」
「写真は2枚まで……」
「抱っこ制限なし……」
ここでニヤッと笑う。
「制限なし?」
キルアは腕を組んでそっぽを向く。
「必要だから」
「安全管理」
「はいはい」
ゴンはさらに読み進める。
「からかい禁止(努力目標)」
「努力目標ってなに!?」
×××は顔を覆う。
「書いたのキルア……」
「絶対守る気ない……」
そして最後の一文。
「幼児化しても元に戻っても×××は×××……」
ゴン、ゆっくり振り返る。
「……」
「……」
「なにこれ」
「夫婦の家訓?」
×××「ちがう!!!」
キルア「ちがわねーだろ」
ゴン、腹を抱えて笑い出す。
「いやさ」
「幼児化とか以前に」
「もう完全に保護者通り越して家族じゃん」
「写真2枚までとか」
「夜会議開いたでしょこれ」
×××は耳まで真っ赤。
「ひ、必要だったの!」
「勝手に動画撮られるから……!」
キルアは少し照れたまま、
小さく言う。
「……可愛かったんだからしょうがねーだろ」
ゴンはそれを聞いて、
さらにニヤニヤ。
「はいはい」
「じゃあさ」
「俺も一個追加していい?」
×××「え?」
ゴンは指で紙の下をトントン。
「第三者(ゴン)に見つかっても言い訳しないこと」
キルア「却下」
×××「即却下!」
ゴンは肩をすくめる。
「残念」
「でもさ」
「この紙、外さなくていいと思うよ」
「キルアがどれだけ×××大事にしてるか」
「一発でわかるし」
その言葉に、
×××は少し驚いてキルアを見る。
キルアは一瞬黙ってから、
照れ隠しみたいに言う。
「……事実だし」
ゴンは満足そうにうなずく。
「はいごちそうさま」
「今日も平和だねえ」
そう言って帰っていくゴンの背中に、
×××はため息。
「……貼りっぱなしでいいの?」
キルアは自然に×××の肩に腕を回す。
「いい」
「次幼児化しても」
「確認できるし」
×××は小さく笑う。
「……ほんと、親バカ」
「知ってる」
壁のルールは、
今日もそのまま。
誰が見てもわかるくらい、
2人の距離が書いてあるまま。
to be continued….