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僕はお客様からもらった名刺をじっと見つめていた。
心臓はまだバクバクと言っている。
不思議なことにこのバクバクは嫌な感じではない。
僕はこの感覚に疑問を持ちながら、都内が一望できる席に座った。
外にはスーツ姿で会社から勢いよく出ていく人や反対に肩を落とし落ち込んで会社に入っていく人がいる。
僕はその人たちと風景を眺めながら弁当箱を開けようとした。
(…あっ)
僕は大事なことを思い出し、スマホを取り出す。
そして、店長の連絡先をタップする。
『本日は申し訳ございませんでした。現在、家に着きました。明日からは通常通り働けますのでよろしくお願いいたします。ご心配ありがとうございました。』
僕は何度か文を確認し送信ボタンを押す。
スマホからな目線を外し、名刺に目を向けた。
「みなもいつき…」
名刺に文字をなぞりながら口に出す。
「綺麗な名前…」
僕は一度離したスマホをまた手にし、検索アプリを開く。
『水面唯月 経歴』
僕は検索ボタンを押す。
先程と同じように僕の心臓はバクバクと言っている。
『水面建設会社のイケメン専務について 番はいるのか!?』
ちょうど今の僕が知りたいようなことが書いてあるタイトル。
それに吸い込まれるようにサイトに入っていった。
『有名大学卒』
『新人建築賞受賞』
『現在34歳』
『水面唯月には番がいない』
そこのサイトにはたくさんの情報が書いてあった。
お客様、いや水面さんは僕が思っているよりもすごい経歴を持った人だった。
なぜだろうか、調べれば調べるほどもっと知りたくなってくる。
その後もたくさんのことについて調べた。
でも出てくるのは同じような情報だけ、
僕はこの感覚が嫌になり、弁当箱を開き白米を口に突っ込んだ。
弁当を食べているはずなのに頭の中は水面さんだけ、
頭の中がずっと重く、気持ち悪い、
なのに、この感覚が、少し、、気持ちいい、
この感覚と戦うこと2時間30分、
僕はゆっくりと立ち上がりながら、充電が切れたスマホと白米とおかずが残った弁当箱を持った。
エレベーターに乗り、カフェの前を通って家に帰ろうとした。
向かいに道路には男性とその男性の腕ん掴んで歩いている女性がいる。
なんでこの時間にいるのかと疑問抱えながらカフェの前を通り過ぎようとした。
「唯月さんぅ!デート場所はどこなんですかぁ?」
「ここのカフェだよ」
「唯月さん、さすがですねぇ!いいところ知ってますねぇ」
聞き覚えのある声と名前、
僕はそっと顔を上げた。
そこには僕の頭の中を占領している水面さんの姿があった。
女性は僕の視線に気付いたのだろうか、
水面さんにバレないように僕のことを睨みつけてくる。
(苦しい……)
心臓が嫌な鳴り方をしている。
なぜか、その場からどうしても逃げたくなり、カフェの前を走って通り抜けた。
少し走ったところにある木の下にあるベンチに座る。
僕の心臓は走ったからか、とてもうるさく苦しかった。