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#ハッピーエンド
瑠璃マリコ
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#婚約解消
maruko
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臣桜
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空になったコーヒーカップを真澄から回収すると、智穂は向かいのベッドに座って足を組む。
「真澄君さ、さっき今回の人生はこれまでと真逆のことばかりやってるって言ったよね?」
「ああ」
「それがさ、すごく大きな鍵になると思うの。だから話せる範囲でいいから、これまでとの違いを教えてくれる?」
「もちろんだ」
即座に頷いた真澄は、これまで取ってきた自分の行動と今回の人生で取った行動の違いを語りだした。
「一番大きな違いは、9歳の俺は菜穂ちゃんに会わなかった」
人生が巻き戻ると、真澄はいつも智穂の実家近くの橋の上にいる。画材道具を持って。そしてしばらくすると橋の下の河原にいる菜穂子は、真澄を見つけてくれるのだ。
しかし今回は、菜穂子に見つかる前に真澄は逃げ出した。その後、菜穂子に会わぬようずっと智穂の実家から一歩も外に出なかった。
「ふぅん……じゃあ菜穂子さんと会ったのは大人になってから?」
「ああ。菜穂ちゃんにプロポーズしたのが初対面だ」
「あの子、良くオッケーしたわね」
正気か?と言いたげな智穂に、真澄は「菜穂ちゃんさ、ちょうど交際相手の浮気現場を目撃したからね」と補足する。
「そっか……自暴自棄になってたんだ……」
今頃になって二人が結婚した経緯を知った智穂は、しみじみと呟く。目の前に真澄がいるというのに。
「実はこれも、これまでとは違うんだ。あの日、俺は菜穂ちゃんの彼氏が浮気するのを知ってた。だから菜穂ちゃんが目撃するよう時間を狙って打ち合わせの日時を指定した」
「鬼畜か?あなた」
「菜穂ちゃんからは感謝された」
すぐさま言い返す真澄に、智穂は微妙な顔をする。
「まぁ……菜穂子さんは、元彼と結婚しちゃったら死んじゃうんだよね?なら、良かったことにしよう……っていうか私、今の話は聞かなかったことにする」
「お好きにどうぞ」
「で、他にやった違う行動は?」
「これは微妙なんだけど……俺さ、これまでは柊木グループの嫡男として企業に携わると殺されてたんだ」
サラリと告げた真澄の言葉に、智穂は青ざめた。
「殺されるって……そんな……」
血の気の引いた智穂を見て、真澄は笑う。
「そんな顔しないで、智穂さん。俺は今は生きてるし。あの頃は、まだ未熟だっただけさ」
「未熟って……戦国時代じゃあるまいし……」
「うちはそういうとこだろ?」
真澄の両親は、戸籍上では重矩と美佐枝となっているが、実は違う。
重矩の父──前会長の柊木益之助と妾の子だ。そして瑞穂は、重矩と愛人の間に生まれた子供である。
「俺を産んだ母親は、実子と認めない代わりに口止め料として多額の金銭を受け取って行方をくらませた。俺の実の父親は、俺を跡取り息子として育てるよう遺言を残したけど、そんなの残された奴らにとったら迷惑な話だったんだろうな」
他人事のように語る真澄だが、幼少期に酷い仕打ちを受けてきたのは、どの人生でも同じだ。
それでも真澄は、遺言通り柊木グループの跡取りとして認められようと努力したが、何度も事故に見せかけ殺された。
殺害され、また9歳の自分に戻ることに疲れて、柊木グループから距離を置き一般企業として働いたこともある。
ただ今回の人生は、これまでの失敗を活かしたのと、運が味方してくれたのもあり、真澄は柊木グループの御曹司としての地位を固めることができたのだ。
「幹久と、瑞穂には……悪いことをしたけどな……」
本来なら、幹久が柊木グループの会長となり、瑞穂はそこまで一族から爪弾きにあうこともなかった。
全て真澄がこれまでとは違う行動をとったせいだ。
「あいつらは、きっと俺を殺したいほど憎んでるだろうな」
「こら!そういうこと言っちゃだめだよ、真澄君」
自責の念から片手で顔を覆った真澄に、智穂は立ち上がって厳しい声を出す。
「真澄君がやったことは正しいかどうかわからない。でも真澄君が罪悪感を感じてるのは、違う未来を知っているからでしょ?……悪いけど、真澄君以外の人は、自分に違う未来があるなんて知らないの。二人に対して申し訳ない気持ちを持ち過ぎないで」
智穂の言葉に、真澄は頬を打たれたかのように顔を上げた。
「……智穂さんはさ、ほんとさ、どの人生でも厳しいこと言うよな」
「言うわよ。だって私は真澄君の保護者だし」
ふふっと笑う智穂は、歩を進めて窓のカーテンを開く。眼下に広がる街の光は正月でも煌々としている。
「ねぇ、真澄君。大人になるまで菜穂子さんと会えなくて辛かった?」
「当たり前だろ?」
なんでそんな馬鹿なことを訊くのかと、真澄は不機嫌になる。でも内心、心を見透かされたような気持ちにもなっていた。
幼少の頃、菜穂子と過ごしたひと夏は真澄にとって宝物だが、その想いは、繰り返す人生の中で恋慕ではなく執着に変わってしまったのではないか。
それを確かめるために、真澄は今回は菜穂子と出会うべき瞬間から逃げ出した。結果として、後悔しか残らなかった。
何度振られても、好きだと言ってくれなくても──でもやっぱり真澄は、菜穂子が好きなのだ。
「きっとね真澄君と菜穂子さんは結ばれると思う。真澄君が人生を繰り返さないでいられる日が絶対来る。もしね、本当にもしもの話だけど……万が一、上手くいかなくて真澄君が死んじゃっても、菜穂子さんが困らないように私が頑張るから。真澄君は自分の思った通りに行動しな」
自分が死ぬなんて縁起でもない話だし、智穂の発言は何の根拠もない。
けれど、智穂が穏やかな声でそう言ってくれるだけで、真澄は泣きたくなるほど安堵を覚える。
世界中でたった一人でも、自分の味方がいてくれることがどれほど心強いか。
「ありがとう、智穂さん」
「どういたしまして。ところでさ、真澄君!」
ニコッと笑顔になった智穂は、カバンの中から領収書の束を取り出した。
「それじゃぁこれ、今回の出張で使ったやつ。悪いけど、清算お願いしまーす」
「……あ、ああ……ん?これ……」
智穂から領収書を受け取った真澄は、それをパラパラとめくるが、次第に顔が引きつっていく。
「エステに、懐石に、化粧品に、フレンチに、洋服代……え?これ」
経費ですか?と目で訴える真澄に、智穂は無言のまま笑みを深くする。
「智穂さん、悪いがこれは経費で落とせま……す。はい」
敗北を認めた真澄に、智穂は「よし!」とガッツポーズをする。
そして財布の中身が寂しくなった真澄のために、二杯目のコーヒーを淹れてあげた。
コメント
1件
智穂さんの「真澄君の保護者」発言、めっちゃグッときた…!😭💕 どの人生でも厳しいこと言うけど、ちゃんと味方でいてくれる存在がいるって、真澄君にとってどれだけ心強いんだろうって思った。最後の経費のくだりでシリアスから一気に笑いに持ってくるところ、当麻さんのバランス感覚さすがすぎる…! 菜穂子さんとの未来がどうなるか、これからも全力で見守るよ〜!🌸