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「遠慮はなしだ。」
その言葉を背に、俺らは戦場へ向かった。
正直、この戦争は誰も幸せにならない戦争だったと、今は思う。だけど、その時は誰もが必死で、生にしがみつくしかなかった。
同盟国、と言うのが我々国にはいくつかあった。
【運営国、限界国、日常国、ワイテ国】これが主な同盟国だった。
然し、その関係はある日を境に崩れた。
それは、もう今となっては僕ら幹部にすらもわからない、誰にもわからない原因不明な同盟破綻。それから、俺ら我々国はその同盟国と戦争をすることに決まった。
勿論、これには誰もが反対した。……特に、ロボロは「日常国とだけは戦争したない」と泣き喚いていたかな。
同盟を結んでいただけに、全員仲が良かった。だからこそ、戦争なんかやりたくなかった。
だけど、これは仕方ないことだった。
やらなければ、こっちがやられる。
そんな状況になってしまった。
そして、俺らは戦場へ出向いた。
戦場はこの五カ国の真ん中にある、もう廃墟と化した王国だった。
全員、本気で戦った。
聞き慣れた声の悲鳴を聞いてしまうと、殺そうと力んでいた腕が思わず緩むこともあった。
だけど、俺はやめなかった。
殺し続けた。
知人も、何人も殺してしまった。
「……ぁ……え……?」
これだけは、鮮明に覚えてる。
俺と同じ、青色の瞳が揺らぎ、動揺を露わにする様子。
「……っ…らっだぁ」
そんな俺の声が聞こえていないように、運営国の国王ともなるらっだぁは亡き者となったかつて運営国の幹部、らっだぁの仲間となる”金豚きょー”を抱き上げ、彼のちぎれてしまった胸から下の部位をくっ付けようと押し付ける姿は、親を亡くした子供に見えるほどに哀れだった。
そんならっだぁを憐れむように立ったまま見下ろしていた人物が、らっだぁを殺した。
きっと、彼なりの善意なのだろうか。
金豚きょーを抱え込み泣き叫ぶらっだぁの首を、彼は一斬りで跳ね飛ばした。彼は飛んでしまったらっだぁの頭を抱き抱え、前に倒れた身体に、金豚きょーと同じ場所へ丁寧に置き、か細く「ごめん、ごめん……ごめん」と何度も謝り続けていた彼は俺と目があったとしても、俺を攻撃することはなかった。
そんな彼は限界国の国王、”ぐちつぼ”だった。緑色の髪は少しだけ薄汚い血に汚れ、赤の瞳は心なしか薄く色褪せていた。
そして、らっだぁの首を切る際の表情は、苦悶の表情に満ちていたのも、覚えている。
勢いよく切ったつもりだったが、人の体は思ったより分厚く、二度手間かかってしまった金豚きょーの切断。らっだぁの悲痛な声、ぐちつぼの異様な様子。全てが悪夢かのように思えるほど、現実離れした様子だった。
それ以来、ぐちつぼにはあっていない。会う気もしない。
そして、次に俺が話せるのは、戦場の初めあたりの事だ。まだ、みんなが生きていた時のこと。
「やっぱり、こんな戦争……間違っとるわ……」
戦場に来てまでも、そう言ったのはシャオロンだけだった。
そんなシャオロンの目は、希望に満ち溢れた、未来がある、明るい瞳をしていた。そして同じ瞳をしていた人間が、他の国の人間にも、いた。
「……待ってくれ大先生!俺は我々軍も、みんなのことも殺したくない!」
そう叫び、現れたのは日常国国王、ぺいんとだった。
「……ぺいんとさん…」
嬉しいのか、悲しいのかわからない感情を抱いているのか、そのときのロボロの顔は複雑な気持ちを露わにしていた。
そこからどうなったのかは、あまり覚えていない。ただ、最後に見たぺんさんは、あまりにも可哀想だった。
「……らっ……だぁ……」
戦争の終わり、旗を掲げた後。屍体だらけの道を歩いていた時に見てしまった。
「……な、なぁ、……嘘だろ……返事しろよ!……なぁ!……らっだぁ!」
らっだぁの頭を持ち、泣き叫ぶぺんさんの姿を、俺は見た。
だけど、その時の俺にはなんの感情も湧かなくて、唯々立ち尽くしているしかなかった。
そして、ぺんさんは俺の姿を見つけた。
「……っうつせんせ……、生きてたんすね……よかった、……戦争終わったんだ」
淡々と続ける言葉に情はなく、ぺんさんはらっだぁの顔についた泥を払っていた。
「っ……じゃあ、また……俺、もう行かなきゃ行けないんで……鬱先生もお元気で、……」
そういうと、ぺんさんはらっだぁの頭を抱え、金豚きょーの遺体を、上半身だけ抱き抱えて走り去っていった。遠くから「ぺいんとぉー!大丈夫か!?」と、聞き覚えのある声が聞こえて、俺はほっとした。
そこまでだ。そこしか、よく覚えてない。……
「……これしか、覚えてないんやけどな。ごめんなぁ、こんな話……」
「いや、全然大丈夫だよ。……ほんと、よく頑張ったねぇ、鬱先生も、みんなも…」
そういい、ペ神はまた優しく頭を撫でてくれた。
「今日はもう帰るわ。……ありがとなぁ、また来るわ」
「うん、いつでも。……また来てね」