テラーノベル
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今回から、改行しないこと多いかもです💦
ミニクイカモ
撮影現場の空気は、張り詰めた糸のようだった。深夜2時。都内から数時間離れた山奥の廃校で、目黒と岩本がダブル主演を務める刑事ドラマのクライマックスシーンの撮影が行われていた。「……カット! OK、本日はここまで! お疲れ様でした!」監督の声が響いた瞬間、目黒は大きく息を吐き出し、その場に膝をついた。極限まで集中力を高めていたせいで、体の芯がガタガタと震えている。そんな目黒の肩に、大きな、体温の高い手が置かれた。「めめ、大丈夫か。立てる?」見上げると、そこには役柄の険しい表情を解いた、いつもの優しい岩本がいた。岩本も疲れているはずなのに、その瞳はいつだって目黒の状態を正確に捉えている。「……岩本くん。すみません、ちょっと力入っちゃって」「謝るなよ。最高の芝居だった。ほら」差し出された岩本の大きな手を、目黒はおずおずと握り返す。引き上げられた際、一瞬だけ体が密着した。岩本から漂う、シトラスの香水とタバコの煙が混ざったような、男らしい香りに目黒の心臓が跳ねる。撤収作業が進む中、二人は先にロケバスに戻るよう指示された。他のスタッフやメンバーは機材の片付けや別車両での移動があるため、広い大型バスの中に、今だけは二人きりだった。バスの最後尾、カーテンを閉め切った暗がりに、二人は並んで座った。「目黒、まだ震えてるじゃん」岩本が低く呟き、目黒の膝に乗せられた手を、自分の手で上から包み込んだ。目黒は心臓の鼓動が速くなるのを感じながら、俯いた。「……岩本くんと芝居してると、全部見透かされてる気がして。……怖くなるんです」「怖い?」「はい。……僕が、岩本くんのことをどう思ってるかまで、全部バレちゃいそうで」暗闇が、目黒に普段なら絶対に言えない勇気を与えた。目黒にとって岩本は、尊敬するリーダーであり、頼れる兄貴分だ。けれど、いつからかその感情は、もっとドロドロとした、独占欲の混じった「熱」に変わっていた。岩本の手がピクリと動いた。包み込む力が強くなる。「……バレたら、どうするんだよ」岩本の声が、いつもより一段低く、耳元で響いた。目黒が驚いて顔を上げると、至近距離に岩本の鋭くも甘い瞳があった。「目黒さ……お前、自分がどんな顔して俺のこと見てるか自覚ねぇの?」「え……?」「捨てられた子犬みたいな顔して、俺が他のやつと喋ってると、ずっと目で追って。……あんなの、誘ってるのと一緒だぞ」岩本の指が、目黒の頬をなぞり、そのまま顎をクイと持ち上げた。目黒の体温が、一気に沸点に達する。「岩本、くん……」「俺だって、ずっと我慢してたんだ。……お前が可愛すぎて、壊したくなるのを」その言葉が終わるか終わらないかのうちに、唇が重なった。岩本のキスは、普段のストイックな姿からは想像もつかないほど強引で、熱かった。目黒の口内に侵入する舌が、執拗に輪郭をなぞり、呼吸を奪っていく。「んっ……ふぁ……」目黒の喉から、自分でも驚くほど甘い声が漏れた。岩本の手が目黒のシャツの裾から入り込み、熱い手のひらが直接肌を這う。鍛え上げられた指先が脇腹をなぞるたび、目黒の背筋に電流のような快感が走った。「あ……だめ、ここ……誰か来たら……っ」「大丈夫。鍵は閉めたし、カーテンも開かない。……今は俺だけのものになれ、蓮」名前で呼ばれた瞬間、目黒の理性が弾けた。大きな体で岩本に組み敷かれ、バスのシートに沈み込む。目黒は視界を火花が散るような快楽に染められながら、岩本の首筋に必死に腕を回した。「岩本くん……っ、好き……っ、ずっと、こうして欲しかった……」目黒の告白に、岩本の瞳に獣のような光が宿る。深夜のロケバス、エンジンのアイドリング音だけが響く密室内で、二人の秘められた関係が、静かに、けれど激しく狂い咲いた。夜が明ける頃には、またいつもの「リーダー」と「エース」に戻らなければならない。だからこそ、この刹那の闇の中で、目黒は岩本にすべてを委ね、甘い悦びに身を震わせ続けた。誰にも見せることのない、標本箱に閉じ込められた蝶のような、美しい独占欲の夜に。
コメント
2件
ニキめめー!! めっちゃ最高です👍