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マカロニえんぴつ「ブルーベリー・ナイツ」
今日、フラれた。
急だけど。フラれたのに違いは無い。
フッたのは勇斗の方からだった。
勇斗「…ごめん。俺、仕事忙しくて…仁人と一緒に居る時間が少ないのが辛くて…ほんとにごめん。」
この理由が正当な理由なのかは知らない。
勇斗からこんな言葉が出る前日はちゃんと愛し合ってた。
一緒にベッドに居たし、勇斗の息も肌も何も近かった。のに、今は遠ざかっている。
勝手に目から涙が止まらない。
一人ベッドの上、喪失感に襲われている。
…誰も、俺の事愛してくれないのかな。
スマホを弄りながらそう思う。
画面にはマッチングアプリにある誰かの写真。
どれも自分には合いそうに無い。
…映画鑑賞が趣味か。
「ねー仁人!明日映画観に行かない?ホラーだけど大丈夫だよね(笑)」
無し。
読書が趣味…。
「仁人〜、なんか前オススメしてくれたやつ長すぎて読み切れない〜!」
…無し。
カフェ巡りが趣味、
「仁人!あそこのカフェでも良いじゃん!え、待ってこのパンケーキ美味しそー!」
…やっぱり駄目だ。
勇斗の声がフラッシュバックする度、涙が出てしまう。
帰って来たのは23時なのに、もう25時。
時の流れも速く感じてしまう。
勇斗と居た時はゆっくり感じられたのに。
…ヴーッ。
スマホのバイブ音が響いた。
『合鍵ポストに入れといたよ』
勇斗からだ。
合鍵返してもらうの忘れてた。
「えっ!?合鍵!?作っても良いの?…なんか、恋人感強いね(笑)」
なんて、言ってたのに。
重い足取りで玄関まで向かうと、確かに入っていた。
ずっと持っとくって言ってたお揃いのキーホルダーも。
でも、勝手に足が動く。
勇斗の香りも無い車に乗り込み、真っ直ぐに勇斗の家へ向かってしまう。
涙で前が見えにくくても行きたかった。
こんな時こそ道は遠く感じる。
きっと奥に勇斗が居るであろう冷たいドアに触れた。
今言ったってもう遅いけど、まだ行かないで欲しかった。自分の前から消えるなんて聞いてなかったのに。
勇斗と過ごしたここまでの記憶が全部夢だったら良かったのに。
部屋には薄暗く、間接照明が点いている。
誰かと居る事も無く、でも勇斗が居る事だけは分かる。
仁人「……行かないで。」
ぽつりと言い残したこの言葉は勇斗に届いているだろうか。
やけに青くて虚ろな夜空が自分の心を照らす事は無かった。
合鍵を握りしめ、涙をぐっと堪えた。
…もう、勇斗に愛は無いんだね。
誰でも良いから愛して欲しかった。
勇斗だけを愛して信じてたのに。
今更…勇斗に縋っても良い?
そう聞きたくなるようなこの冷たい夜は憂鬱だった。
もう勇斗の居ないベッドに一人、涙を流すだけ。