「なーゾム、一体誰を待ってんのー」
シャオロンは屋上の手すりに顎を乗せながら、怠そうにそう聞いた。
隣にいたゾムは「んー」と言葉を濁す。
「誰…誰なんやろな」
「何やそれ。しかもその猫どないしたん」
ゾムの後ろではルガルガンが暴れるニャオハの首根っこを摘み持っていた。
「拾った」
「はぁ?」
さっきから会話になっていない気がして、シャオロンはため息をついた。
「もうすぐ日ぃ沈むけど、帰らへんの」
「まだ帰れへんねん。まぁここで待ってたら来るやろ」
「だーから、誰を待ってんねんてば」
何度目かの問いを、シャオロンは空に向かって呟く。
そんな時、バァン!と勢いよく屋上の扉が開いた。
「おいゾム!」
声を荒げながらやって来たのは、春翔だった。
階段を駆け上がって来たのか、息が乱れている。
「あれ、春翔やんか」
シャオロンはびっくりしながら春翔を見て、ゾムが待っていたのは春翔だったのかと納得した。
「よー草凪、どないしたん」
ゾムは後ろを振り返らず、春翔に返す。
その様子を見て、あれ?春翔じゃないのか?と思い直すシャオロン。
「お前、その猫どうした!」
凄い剣幕で春翔はニャオハを指差す。
「拾った」
「嘘つけ!その猫は……」
ゾムの短い返答に、春翔が声を荒げた時、
「ーーーニャオハぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
下からニャオハを呼ぶ叫び声が聞こえた。
この声は、と春翔が下を覗き込む。
そしてゾムは、ニヤリと笑った。
「やっと来たか」
待ちくたびれた、とゾムは屋上の遥か下にいる雪乃を見下ろした。
雪乃はまっすぐ屋上を見上げる。
両隣には美希と瀬戸がいた。
「にゃあぁぁぁぁぁぁ!!!」
雪乃の呼び声に、ニャオハが大きな声で鳴いた。
「ニャオハ!」
雪乃はもう一度名前を呼び、グッと拳を握りしめる。
「あいつ、何してんだ」
春翔は困惑する。
一体どういう状況なんだ。
「あれ妹ちゃんやん。どういうこと?」
シャオロンも分からずにいた。
「ニャオハ!迎えに来たよ!」
雪乃は上を見上げて叫ぶ。
「もう来ーへんかと思ったわ」
ゾムが口角を上げながら雪乃を見た。
「でもそこはちょっと遠いんちゃう?迎えに来たんならちゃんと受け取りに来ぃや?」
ルガルガンがわざとらしくニャオハを見せつける。
雪乃は見下ろされる恐怖に足がすくむ。
しかし、そっと背中を支える手が2つ。
雪乃は2人の存在に感謝しながら、勇気を奮い立たせる。
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