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「え? もう一度新作ケーキを作るの?」
巴さんが家にやって来た翌日、心配して来てくれた高間さんにもう一度新作ケーキを作ることを話すと、驚いた様子を見せながらも、どこか瞳の奥が怪しい光が灯るのを感じた。
きっと心の中で、『コイツら馬鹿だな』とでも思っているのだろうと考えると少しだけ悲しくなる。
「このままじゃ終われないから……もう一度頑張りたくて……それと、実は、もう案は出来ていて、今回も高間さんに手伝ってもらいたいなって思って……」
「どれどれ」
私から新作ケーキのレシピを受け取った高間さんは、それに目を通していく。
「勿論、今回も手伝わせてもらうよ。今度こそ、上手くいくよう前よりも慎重にやろう」
「ありがとう、心強いよ」
そして、思惑通り高間さんが協力してくれることになり、翌日の夜から父と新作ケーキ作りを始めてくれた。
厨房にはいくつかの隠しカメラが設置されている中、私も父も高間さんに気づかれないよう、いつも通りに過ごしていく。
ケーキ作りを始めて数日後、一度仕上がったケーキを試食した高間さんが、
「このケーキ、見た目は良いと思うんですけど、味が少し……」
味について難色を示した。
勿論、これも作戦のうちなので、
「そうですか? 侑那、お前はどう思う?」
「うん、私は美味しいと思うよ」
父と二人、このケーキは十分美味しいということをアピールしていく。
「……そっか……。うん、まあ甘さ控えめで良いかもね」
勿論、お世辞にもあまり美味しくは無いし、こんな物を販売するなんて余計炎上しそうなくらい。
それは高間さんの表情を見ても明らかなのだけど私はそれに気づかないフリをして、新作ケーキが完成するのを待っていた。
ケーキ作りから二週間後、完成した新作ケーキの名前やキャッチコピーなんかも高間さんの前で決め、いつ販売するかまで決めていく。
「それじゃあ、また当日にね」
「うん、ありがとう、高間さん」
日付まで決まって前回同様販売当日に手伝いに来てくれることに話は纏まり、高間さんは帰って行った。
その日の夜、今後の流れを話し合う為に、巴さんと如月さんがやって来た。
厨房に仕掛けられたカメラは特殊構造なもののようで、動体検知機能が付いていたり、バッテリーも凄く長持ちするものだし、何より、録画した映像は上澤家からも見られるようになっているとのことで、私や父は一切カメラに関わることが無かったので、私たちの気づかないところで高間さんがどんな行動を取っていたのか、そういうことすら知らない状況だった。
「こちらでカメラの映像を全て確認させていただきまして、高間さんがどのようにレシピを横流ししていたのか、その方法が分かりました。彼はお二人に気付かれないよう、小型のカメラを使ってレシピや実際に作っているところを撮影しておりました」
だから、どのような方法でレシピを盗んでいたのか分からなかったけれど、まさかカメラを使っていたなんてと驚きしかない。
彼はパティシエだから、作っているところやレシピを見ればある程度頭の中に入っているのかと思っていたけれど、そうでは無かったらしい。
しかも、後で知ったことだけど、上澤家に居た時に作ったスイーツの数々も、色々なところのレシピを盗んで自分のものにし、それを巴さんに提供していたという。
彼は全て自分が考えたと言っていたけれど、そういった能力は備わっていなかったのだ。
パティシエとしても尊敬していたし、頼りになる存在だった高間さんは初めからいなかった。
そして、
「――それから、例の騒動が起こる以前に店に嫌がらせをしていた犯人についてだが、それも全て、高間がやっていたことだと調べがついた」
レシピを横流ししただけではなく、お店に対して陰湿な嫌がらせをしていた犯人も高間さんだったということも明るみになったのだった。