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俺の名前は遠藤まさき。
俺は今、県内トップの高校、水谷東高校に通う1年生だ。
周りにいる人は見るからに賢そうな人や、
ファッションに気を使っている人。
そして、サングラスを掛けたヤンチャそうな人もいる、多種多様な学生を持つ学校だ。
そんな中、俺はというと
黒縁メガネ、普段着はチェッカー柄の服を着る、言わば冴えない陰キャ男子なのだ。
そして向こうにいる女子生徒は、
柊(ひいらぎ)優菜(ゆうな)さんだ。
まさに、文武両道、容姿端麗、品行方正、成績優秀を兼ね備えた、最強の美人だ。
俺は、彼女に恋をしている。
事の発端はというと、カフェテリアで彼女が友人と仲良さそうにお茶をしていて、
その時のふとした笑顔で俺は、一目惚れをしてしまった。
彼女は本当に美しい。
髪質もさらさら。黒髪が光を美しく反射している。
そして品行方正と言われるだけあり、身なりも整っている。
あれほどの美貌を持ってすれば、彼氏の1人や2人くらいは居るだろうと 俺は半分諦めかけていたが
噂によると、彼氏など今までできたことがないのだと言う。
恐らく、あの美貌を持つ女性とお付き合いするなんておこがましいことなんだと告白を断念する者が殆どなのだろう。
皆、彼女のことを崇拝しているらしい。
なんならファンクラブもできていた。
そんな彼女だが、実は近頃好きな人が出来ているという噂が広がりつつあるのだ。
その好きな人とは誰のことだろう。
学年一の美男である吉田拓磨(たくま)さんかなのか。
それとも、女子からの人気が絶大な野球部エースの廣田勇気(ゆうき)さんなのか。
それは誰にも分からないが
きっと”ボク”ではないのだろう。
もし付き合えたなら、と
妄想を膨らませていたのである。
翌朝、俺はいつも通りに通学をはじめた。
そうして、門の前まで来るとそこに
柊さんが見知らぬ男の目の前で立っている。
あれはなんなんだ?
俺は目を擦り、よく観察する。
今現在、男性から告白を受けているようだ。
あの見知らぬ男子生徒とは
この高校では学年2位の成績を誇ることで有名な安田先輩ではないか。
彼が柊さんに告白をしているというのか?
なぜだ?なぜだ。
安田先輩には既に彼女がいるはずだ。
どうして、彼女がいるのに告白をしているんだ。
後々聞いた話だが、安田先輩は成績優秀の他にヤリ〇ンでも有名なんだそう。
だからか。柊さんに告白している理由が分かったぞ。
だがしかし、柊さんの返事はというと
【ごめんなさい。私、好きな人いるので】
結果はNOだった。
俺はひとまず安心した。
彼女の好きな人が安田先輩でなくて。
だが、かなりの広範囲で柊さんが狙われていることを知った。
このままじゃ、盗られてしまう。。
俺は焦りを感じていた。
柊さんは誰のものでもないのに、
何故か俺は、柊さんを独り占めしたいと思っていた。
【柊さんと付き合いたい】
俺はその一心だけで、物事を考えていた。
俺はバカだ。
この頃の僕はまだその事に気がついていなかった。
時間は過ぎ、昼食の時間がやってきた。
現在、カフェテリアで弁当を食べている。
俺の席の右斜め前に柊さんはいる。
柊さんの周りに、男子生徒が一定の距離を保ちながら座っている。
みんな柊さん狙いなのだろうか。
俺は彼女に一声かけようと
席を立った。
だがしかし、彼女も同じく席を立ち、
1番端っこの一人で弁当を食べる女子生徒の席へと向かった。
一緒に昼食を食べませんか?と誘おうとしたが、失敗した。
彼女の女子生徒と共に昼食を食べる優しさに心を打たれた。
そんなある日、授業前の事。
【まさきくん】
俺は咄嗟に振り向いた。
今、柊さんに名前を、、呼ばれた…?
俺は胸がドキドキし始めている。
何だこの胸の高鳴り。
これが恋ってやつなのかと改めて実感する。
【その、教科書、見せてくれない…かな】
俺にとってその一言は嬉しいという感情そのもの。何物でもなかった。
俺は迷うことなく、
【ああ、うん。】
少しドギマギしながら答えた。
彼女の口からは少し恥ずかしながら、ありがとうと投げかけられた。
丁度、柊さんの横の席は今日熱でお休みをされている。
俺はその席に移って、机をくっつけて
教科書を見せてあげたのだ。
その時間は現代文の時間だったのだが
その時の記憶はほとんどない。
ただ、ぎこちない声で朗読していたことだけははっきりと記憶している。
俺にとってその時間は、裕福であり
とても幸せだった。
好きな人と話せる
それだけでも最高なひとときなのに
席を繋げて、手も当たりそうな程。
彼女が俺の教科書を手にした時俺は
なにかに勝利したような気持ちになった。
このメモリーは一生の宝物だ。
授業が終わり、彼女からは
【見せてくれてありがとう、まさきくん!】
彼女は少し照れながら言った。
彼女は、俺に甘々しい声で感謝を伝えた。
最高すぎる。
やっぱり付き合いたい。
だけど、勇気が出ない。
勇気を出せ俺。
しかし結局、勇気が出ることがないまま授業は終了した。
授業が終わった事に対し俺は少しイラついた。
もっと長くあれよ授業!!
私は柊優菜。
私には好きな人がいます。
それは今、教科書を見せてくれた、まさき、くん。。
【何あの表情!最高すぎるんですけど!】
私はその容姿を写すためだけにペン型カメラをおととい、思い切って購入した。
【これで21枚目!】
私の部屋中には彼の写真が壁にたくさん貼られている。
天井にも数枚。
こんな最高な部屋、これ以上ない。。。
私は本当にまさきくんのことが好きすぎて、爆発しそうなの。
今朝、校門前で馬の骨とも分からない先輩男子生徒が近寄ってきて、
【柊さん、俺と付き合ってくれないか?】
なんて言い寄って来て、
そんなの
NOって言うに決まってるじゃない。
私はまさきくんしか愛さないのに
まさきくんは、私の気持ちに気づいてくれてるのかな、、
入学式の頃、彼を見つけた時、運命の王子様だと思った。
決して顔で判断しているわけじゃないの。
その時彼は、小さい子供が木に引っかかっている風船を見て泣いているところを見てすかさず 、風船を取ってあげているのを
私はこの目で見たの。
私はその時、彼に恋をしたの。
子供に優しくできるような人が好き。
私はそれから彼を目で追うようになった。
彼は俗に言う劣等生で
授業中は真面目に聞くことはなく
ひたすら寝る子で、あまり良い印象は持っていなかった。
あの1件から私は彼を見つめ直すことになった。
今では、常に目で追っていて
席が、近くなってからは 心臓もバクバクなり始めて
もう嬉しすぎて耐えられなくなった。
こんな私を知ってしまったら、どういう反応をするんだろう?
こんな私を見られたくないから、表では優等生で品行方正で容姿端麗をやらせてもらっているけど、
こんな事実の私を知ってしまったら、気持ち悪がられるのかな。
それは嫌だよ、
いつしか両想いになって、結婚して幸せな家庭を気づきたいと思ったりしている。
でも、彼の気持ちが最優先だよね。
私は少ししょんぼりして残りの時間を過ごした。
放課後。
俺は、部活に入っていないから
放課後することも無いし、家帰ってゲームしようかなと考えていた。
そこに、
【あ、あの!】
俺は足が止まった。
柊、さん、か。
【あの!まさき、くん。きょ、今日はありがとう!教科書!】
【ああ、どういたしまして。】
【その、良かったら、い、一緒に、そ、その、、、】
【?】
【一緒にか、帰らない…?】
えっ…
俺にとってそのお誘いはもちろん初めてだ。
もしかして、今日教科書を貸してくれたお礼として誘っているというのか…?
【その、もし良かったらなんだけどこの後カラオケ、行かない?】
俺は胸がバクバクしている。
柊さんに聞こえそうなくらいバクバク言っている。
周りは田んぼで、静けさが広がっている。
俺は柊さんのそのお誘いに少し戸惑った。
【な、なぜ?なぜなんだ?】
【好きな人が居るんじゃないのか?】
この時のまさきは、柊が俺のことが好いてくれているという気持ちは全く伝わっていなかった。
【だけど、この誘いはもう二度とないかもしれない…】
俺は、もちろんそのお誘いにOKを下した。
柊さんは、
【うそっ、ほんと!?嬉しい!!】
柊さんに笑みがこぼれる。
初めて見た。この笑顔
大好きな人の笑顔。
俺は、少しドギマギしながら
【手、繋いでもいいかな…?】
【うん。いいよ!】
柊さんは俺の誘いにOKを出した。
しかし、どうして教科書を貸しただけでこんなに優しくしてくれるんだろう?
俺は謎で謎で仕方がなかった。
でも、彼女がOKと言ってるんだからいいんだろう。
俺はルンルンで手を繋いだ。
【まさきくんの手、暖かいね!】
【そ、そうかな?ありがとう笑】
柊さんは俺の手をぎゅっと握った。
柊さんはまるでか弱い仔猫のようだった。
そうして歩いて7分程。
田舎の中でも、少し都会の方にある
小さなカラオケ屋に着いた。
その時までずっと手は握ったままだった。
俺は、もう興奮して
手汗が止まらなかった。
柊さんもそれに気がついたようで、
【もしかして、緊張してる?笑】
【そ、そそそ、そんなわけないだろ!】
俺は必死になって答えるが
【慌ててる笑かわいぃ】
と、笑顔で答えた。
俺は心から誓った。
この人と付き合いたいと。
この気持ちだけでも伝えたいと思った。
こんだけされて、好きにならないはずないだろ。。
カラオケボックスに着くや否や
柊さんは、羽織っていたブレザーを脱ぎ始めた。
そして、カッターシャツ1枚を着ていて
今にも、透けそうだった。
てか透けてね?
【最近暑いね、まさきくん】
【そ、そうだね】
クッソ緊張して言葉が詰まった。
柊さんは、俺の事を見つめてこう言った。
【緊張してるときの顔、可愛いね】
・・・
カラオケボックスには心臓の音が響き渡った。
柊さんのこの甘々しいボイスと、
表情に俺は少しニヤけた。
何だこの最高な時間は!!
てか早くカラオケしようや。
俺はそう思って1曲目を入れた。
デュエットの曲を選んだ。
・・・
柊さんと、愛のうたを歌いきった。
彼女の歌声は、とても透き通っていた。
心に響く歌声だった。
俺は自分の歌の下手さに少し驚いた。
文武両道、成績優秀、品行方正の上
歌も上手いとか、、何者なんだ?
前世でどれだけ徳を積めば
こんな完璧な人になれるんだろう。
【まさきくん歌上手だったね!】
全くだよほんとに…
【柊さんの方が上手かったよ!?】
【そ、そうかな//ありがとう!笑】
柊さんから笑みがこぼれる。
そうして時間は刻一刻とは過ぎて行った。
2時間に設定したカラオケはもうすぐ終わりを迎えようとした。
今ここで思いを伝えるしかない。
俺は決心した。
【あ、あの!柊さん!】
【ど、どうしたの!?まさきくん】
【そ、その】
【急で申し訳ないんだけどさ】
【ぼ、僕と】
【つ、付き合ってください!!】
マイクがこの音を拾い、部屋中に俺のぎこちない告白が響き渡る。
彼女は少し驚き、笑いながら答えた。
【マイク、つけたままだよ笑】
【でも、ありがとう、まさきくん!】
【いいよ!付き合おう!】
・・・
俺は告白に成功した。
そして、心の中でガッツポーズをした。
【いいの!?柊さん、】
【うん!】
【好きな人がいるって言うのは…】
【その好きな人がまさきくんなんだよ?笑
】
【え、えええええ!!?】
衝撃の新事実に俺は耳を疑う。
だが紛うことなき、両想いだったのだ。
【柊さんとカップル、かぁ…】
【なによ、嫌だった?笑】
【嫌じゃない嫌じゃない!最高だよ!嬉しすぎる!】
【ははは笑それはよかった!笑】
俺は今後も、柊優菜を幸せにしてやりたいと思った。
【完】