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Episode 5『守るって、何を?』
翌朝の寮部屋。
アメリカはベッドの上で天井を見つめていた。
「……はぁ」
日帝は隣のベッドで、無言のまま制服に袖を通している。
どちらからも、昨夜の屋上について触れようとはしなかった。
空気が、重い。
猫耳のことも、ナチスの脅しも。
全部が急すぎて、考えがまとまらなかった。
「……日帝ちゃん」
アメリカが意を決して声をかけると、日帝は小さく振り返った。
「……なに」
「昨日のこと、俺は……ほんとに驚いたけど、それで日帝ちゃんを嫌いになるとか、そういうの、全然なくて。むしろ……もっと守りたくなった」
沈黙。
だが次の瞬間、日帝の声が低く落ちた。
「……軽々しく“守る”なんて言うな」
「え……?」
「お前は俺の何を知ってる?
“猫耳がある”ってだけで、全部わかったつもりか?」
感情がこもった言葉。
だがその奥に、孤独が滲んでいた。
「じゃあ、教えてよ」
アメリカは強く言い返す。
「俺は知りたい。日帝ちゃんの全部を。
怖くても、辛くても……一緒に抱えていきたいって思ってるんだ!」
日帝の朱色の瞳が、大きく揺れた。
「……ばか」
ぽつりと呟き、日帝はそっぽを向く。
そのまま部屋を出ていこうとした――そのとき。
バンッ!!
突然、扉が勢いよく開いた。
「Yo!! グッドモーニン、アメリカ〜、日帝〜!」
派手な声とともに現れたのは、ソ連とナチス。
「うるせぇ……お前ら、朝から……」
日帝が眉をひそめると、ナチスが珍しく口角を上げた。
「ちょっとした“チェック”だ。
同室の関係性を確認しに来ただけさ」
「……は?」
「それと――ソ連が、やたら“アメリカの恋人自慢”をしたがっててね」
「やめろナチス、それは内緒って言っただろ!」
ソ連は照れくさそうに頬をかいて、アメリカに寄ってくる。
「なぁ、アメリカ。お前も、日帝ちゃんのどこが可愛いと思ってるか教えろよ。
俺はナチスの笑った顔が好きなんだけど、アメリカは?」
「おい、ソ連……」
日帝の声が低くなる。
アメリカは一瞬たじろぎながらも、真っ直ぐ言う。
「日帝ちゃんの、強がってるところ。
それでいて、本当は寂しがり屋なところ。
全部、可愛いと思ってる」
「っ……!!」
耳がぴくっと動いた。
ナチスがにやりと笑う。
「ふん、まあまあ……いい目をしているな」
ソ連は「くぅ~!」と悶えていた。
「いいなぁ~その感じ!俺らもダブルデートとかしたいな!」
「勝手に決めるな」
ナチスが冷たく言いながらも、少しだけ顔を赤らめた。
こうして、ぎこちなくも賑やかな朝が始まった――
だが、まだ“嵐”は過ぎていない。
次回:
Episode 6『距離の中で、近づく温度』
ナチスの策略、日帝の不安、アメリカの決意――
そして、恋がまた動き出す。