テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
転校してきた殺し屋君第7章:古都の影(シノビ)
第32話:浴衣の乱戦
「……ったく、夜くらいゆっくり寝かせろよ」
修学旅行二日目の夜。消灯時間を過ぎた静かな老舗旅館の一室。 黒蜜がいびきをかき始めたその瞬間、浩一は隣の布団から音もなく跳ね起きました。
襖(ふすま)の向こうから、冷たい殺気が幾筋も流れ込んできます。 障子を突き破り、無数の苦無(くない)が畳に突き刺さりました。
「……またあんたたちか。修学旅行の夜は『恋バナ』で盛り上がるのがルールだろ」
黒咲雅樹は浴衣の裾を帯で手早く結び上げると、枕元に置いてあった土産物の**「新選組の羽織」**を羽織りました。 次の瞬間、天井を突き破って疾風(はやて)と朧(おぼろ)が、そして彼らが率いる「隠れ里」の構成員たちが乱入してきます。
旅館・大乱闘の開幕
「凪浩一、逃げ場はない。この旅館ごと、君を闇に葬る!」
疾風が小太刀を振るいますが、浩一は旅館の「お盆」を盾代わりに使い、その斬撃を華麗にいなします。
「おい、凪! 助太刀だ!」 隣の部屋の壁を蹴破って現れたのは、これまた浴衣姿の黒蜜。彼は護身用に持ち込んでいた「最新型のスタンガン付きスマートフォン」を手に、忍者たちへ突進します。 さらに廊下からは、髪を後ろで結び、木刀を構えた藤堂が躍り出ました。
「女子部屋まで襲おうなんて、いい度胸ね。古都の礼儀を教えてあげるわ!」
狭い廊下と和室を舞台に、**【浴衣の殺し屋トリオ vs 現代の忍者軍団】**の乱闘が勃発。
修学旅行の意地
浩一は、師匠・佐藤(小曽根)から学んだ「近接戦闘の極意」を、狭い旅館の空間で最大限に発揮します。
「ここはあんたたちの道場じゃない。俺たちの……思い出の場所だ!」
浩一は、部屋に備え付けられていた「座椅子」を武器に、疾風の連携を分断。さらに竹内(安藤)の関節術を応用し、朧の腕を一瞬で封じ込めました。 最後は、氷河から教わった「静」の極致――。 浴衣の袖を閃かせ、相手の視界を奪った刹那、掌打を疾風の胸元に叩き込みました。
「ぐはっ……! 浴衣という、これほど動きにくい装束で、なぜ……」 「守るべきものがあるからだ。……それに、あんたたちの殺気は、この古い建物の『軋み』で全部筒抜けなんだよ」
嵐のあとの静けさ
疾風たちが窓から夜の闇へと撤退していくと、旅館には再び静寂が戻りました。 幸い、クラスメイトたちは深い眠りの中(あるいは黒蜜が事前に仕掛けた睡眠ガスのおかげ)で、この激闘に気づいていません。
「……ふぅ。これでゆっくり寝れるな」 黒蜜が欠伸をしながら、破れた襖を直そうと苦戦しています。
翌朝。 何事もなかったかのように朝食会場に現れた浩一たちの前には、少し照れくさそうに笑う玲亜の姿がありました。
「凪くん、おはよう! 昨日の夜、なんだか賑やかだった気がするけど……楽しい夢でも見てた?」 「ああ……。ちょっと、賑やかな『新選組』が遊びに来ただけだよ」
浩一は玲亜の隣に座り、温かい味噌汁を啜りました。 古都の闇を払い、また一つ「日常」という宝物を守り抜いた修学旅行の朝。
(つづく)
コメント
1件
ああ、もう最高でした!修学旅行の夜の静けさが一瞬で戦場に変わる導入、すごく映画的で一気に引き込まれました。浴衣で戦う浩一たちの姿が、もうかっこよすぎて!「座椅子」を武器にしたり、土産物の「新選組の羽織」を羽織る黒咲さんのセンス、ツボです。そして何より、あの激闘の後、朝の食堂で玲亜ちゃんと味噌汁を啜る日常が戻ってくるラストが、本当に沁みました。守るべき“日常”ってこういうことだなあって。才川さんの、バトルと日常の温度差の付け方、毎回、胸がぎゅっとなります。続き、本当に楽しみにしてます!
五木友人
7,048
井野匠
3,630
麗太
579