テラーノベル
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「ねぇ、小柳君‥‥占いって信じてる?」
「あ?何急に」
クリスマスの夕方
俺達はイルミネーションを見るため、街の中を歩いていた
もうそろそろ点灯の時間
そんな時、通りの脇
路地の少し奥ばった所に佇むお爺さん
よく見ると机と椅子が置いてあり、その机から
『よく当たる占い』と書かれていた
昔風というか、風変わりというか‥‥
なんだかすごく当たりそう
それでいて胡散臭い
「あれ見て。なんか雰囲気凄くない?ちょっとやってみたいかも」
「‥‥当たらねーよ」
「えー、やりたいなぁ」
「じゃあ1人で見てもらえば?」
何故だかどうしても占ってみたくて、俺は興味なさげな小柳君を引き連れてお爺さんに近づいた
「あの‥‥すいません。占って欲しいんですけど」
「‥‥2人?」
「俺だけです」
お爺さんは小柳君をチラッと見て口を開く
「四千円」
「え?」
「‥‥高っ」
俺は高いと呟く小柳君の脇腹を突いた
小柳君は2、3歩下がりしゃがみ込む
どうやらそこで俺を待つみたい
「‥‥座って」
「はい」
「手を出して」
「右‥‥?左?」
「どっちでも良い」
「‥‥はぁ」
左と右で何か違うと思ったけど‥‥
まぁ、この人のやり方があるんだろう
俺は右手を差し出した
「‥‥ふんふん、お前‥‥頭はまずまずか?」
「え?‥‥はぁ、普通です」
「そうだろ。もっと励めと出ている」
「‥‥わかりました」
「好きな人がいるのか?」
「あ、はい。そうですね」
「相性は良いと出ている。しかも今世で出会う中で1番じゃ」
「ホントですか⁈」
「お前が守りきれればだがな」
「守りきる?相手をですか?」
「それはお前が考えるんだ」
「え?‥‥はぁ‥‥」
「んー‥‥最後にお前には災難の相が出ておる。気をつけるんだな」
「えぇっ⁈災難ですか?」
「何か失う事になるかも‥‥何事にも慎重にな」
あからさまに落ち込む俺をみて笑う小柳君
イルミネーションの下を歩きながら笑いが抑えきれてない様子
「しかも何?最後に貰ったやつ」
「‥‥招き猫のストラップ」
「いらねー!」
占いした人全員が貰える招き猫
ギャンブルか商売してる人にだけあげて欲しい
「しかも百均とかで売ってそう」
「‥‥それは確かに」
人差し指に引っ掛けてぶらぶらさせて2人で見ていると、向こうから来た人と肩がぶつかった
こんな人混みの中だとうまく歩けない
でもそのぶつかった拍子に俺の指から招き猫が落ちていった
2度、3度とアスファルトに跳ねながら車道へと転がって行く
「あ!待って‥‥」
「おい!星導!!」
車道へ出た俺の背中を小柳君が強く引っ張った
その反動で小柳君の体が前に出て行く
屈んだ俺の体が上を向くとそこにはヘッドライトの明かりがあたる
「小柳君!!」
このままだと小柳君が車にぶつかる
俺が歩道に尻を付くと、目の前に大きな体が立ち塞がった
パーーーッ!
車のクラクションの音
そして目の前の男の腕の中には小柳君が居た
良かった
俺達助かったんだ
ただ車道を見ると、そこには形を変えた招き猫だった物がアスファルトにくっついている
「‥‥あの‥‥離してもらえますか?」
「‥‥Are you okay?」
「あ、オッケーっす‥‥」
小柳君を助けてくれたのは外国の方だったらしい
俺は立ち上がり、小柳君の隣に立った
でもその外国の方は俺には目もくれず、小柳君にずっと話しかけている
「you’re cute!!Do you have time?」
「あの‥‥サンキュー‥‥えっと星導?なんて言ってんの?」
「え?えっと‥‥」
「Let’s exchange phone numbers!okay?」
「ヤバいよ星導‥‥なんでこんなに言われてんの?」
大体の意味を噛み砕き、俺は助けてくれた男に口を開いた
「Thanks for any help‥‥But this is mine!!」
「what?‥‥」
俺は小柳君の手を取り歩きだす
「おい!星導‥‥良いのかよ?」
「ありがとうって言った!」
「は?‥‥それにしては長くね?」
「‥‥小柳君を口説いてたんだよ!」
「えっ?そんな感じだったか?」
「もっと勉強しとけよ!よく期末受かったな」
「範囲を決めてくれたら頑張れるんだよ俺は」
「もう帰ろう‥‥あの占い当たってるかも」
「偶然だろ‥‥って星導?」
俺は小柳君の手を引っ張ったまま家路を急いで帰った
俺の部屋の中
小柳君がスマホをいじってる姿をじっと見ている
「なんだよ。穴あきそう」
「俺の車にぶつかりそうだった事といい、小柳君もその後危なかったし、何よりあの男‥‥口説いてくるなんて、これって災いだよな?」
「‥‥お前さ、まだ言ってんの?」
「だって重なり過ぎじゃない?ありえないよ」
「そんな事ねーだろ。たまたまが重なっただけだ」
「でもさ」
「星導」
「え‥‥」
小柳君が立ち上がった
そして扉に向かう
「俺帰る」
「え?今日泊まるって‥‥」
「気分じゃなくなった」
パタン‥‥
閉められた扉
ほらまた当たった
あの占い‥‥やっぱり当たるんだ
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