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夕焼けで染まった簡素な和室、格子窓の前に置かれた座卓へ向かい正座する青年がいた。
薄手の着物から伸びた手が時折ゆったりとした動きをする度に衣擦れの音だけが聞こえる。
横顔から首筋、指先にいたるまで、骨格は男性でありながら繊細。
橙色の光を浴びてもなお透き通るような肌。
女性とは違った美しさと微かな背徳感を漂わす。
見てはいけない、されど見ていたくなる衝動を与えていると知ってか知らずか。
ふいに顔を上げ、部屋と廊下を隔てる襖へ視線を向けた。
「青司、入っていいだろうか」
静寂を破ってかけられた声はどこか遠慮がちだった。
息を溢すように笑み答えた。
「どうぞ、義兄さん」
静かに開いた襖の先を呆気にとられたように目を見開いて眺める。
武道を身につけた者らしい体格の義兄、和之が無造作に切った枝を沢山脇に抱えて立っていたのだ。