テラーノベル
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「や、やっと届いた…!」
仕事と寝るの繰り返し、そんな日常に少しでもご褒美をと自分用に買った最新作乙女ゲーム。何でも予告編動画がバズりにバズり、予約満杯になったとか。
さて、説明しよう!
『恋は来世にお預けで』
通称、『こいけで』は今注目を集めている乙女ゲーである。舞台は学園、ここまでは王道系だが…このゲーム、周回プレイを基本としており、ループをトリガーに歪んでいく周りが醍醐味。甘酸っぱい恋愛からヤンのデレまである豊富なレパートリーも俺得だ。
「さてと、…よいしょっ」
ガサゴソとカセットを取り出し、セットする。カチッという音と共に画面が眩く光り始める。
「明る…ッ、てっ!?眩しッ」
閃光弾のような(見た事はないが)光に刺され、思わず目を閉じる。暫くすれば光は収まり、恐る恐る目を開けた
「何も変わってない…」
「訳あるか!!!!」
ぱっと見で気づかなかったが、まず部屋の小物の配置が絶妙に違う。どれくらいかというとサ◯ゼの間違え探しくらい。そして明らかに違う所がある。
「あらまぁ乙女ゲーム内の学園の制服」
今、俺が身に纏っているのは長年連れ添った相棒のパジャマではなく、乙女ゲーの舞台である学園の指定の制服。ご丁寧にお名前まで付いてる、あらやだ奥様。
「え、?、?!ガチでどゆこと…?」
「説明しよっか?」
「たねらまわはjg@T@」
「おぉー、!いい反応!」
コイツ…完全に俺で遊んでる。
何というか今の気分はエレベーター待ってる時に熱唱してたら人が中にいた気分。本当それ、俺バリバリ独り言しちゃったよ…。恥ずい
「察しのいいpnちゃんなら分かると思うけど、ここ。乙女ゲーの中ね、OK?」
「OK!、ってなるかよ、!?」
「でもさっき爆速で気付いてたじゃん」
「まだ理解はしてないから、普通に考えて何だよこのラノベ展開」
「まあまあ、俺はtm。宜しくね、」
特徴的な赤髪を揺らしてニコッと笑ったソイツを俺はジト目で見つめる。
「え…、っと元の場所に戻りたいんたけど」
「まぁ言うと思った。安心して、周回プレイは必要ないよ」
一人だけ、一人だけ攻略すれば君は元の世界に戻れる、そう笑いながら俺に告げた。
「あと、攻略した奴にお別れを告げて、許してもらえなきゃ帰れないから!変にヤンデレルートに進まない方がいいよー」
「これで話は終わり!」
「stop please !?」
「そんなに俺と一緒にいたいの笑?」
殴っていいだろうか、うん、殴るわ。
コイツが攻略対象だったら泣く、絶対に褒め言葉とかかけたくない。多分、向かい合ったら俺、暴言しか出てこなくなると思う。
「因 み に !俺はお助けキャラ、つまり攻略対象ではないから」
「良かったーーー!」
「開始早々、そんなに嫌われてると泣くんだけど。俺は結構pnちゃん気に入ってるのに」
「そのあだ名やめてくれん?なんか鳥肌立った」
「残念だけどこのあだ名で呼んでくる奴はこの先に何人かいるよ」
「あだ名に罪はない、呼んでる奴に罪がある」
白々し過ぎる泣き真似を披露するtm?さんを横目に窓の外を見る。うん、やっぱり知らない住宅街が広がっていた。その奥には何処か見覚えのある学校、ドッキリではないだろう。
「ガチで乙女ゲーの中…」
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