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じゃむじゃむあっぽー🍏
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2話
あの初対面の日から、俺が保健室に足を運ぶ頻度は明らかに増えていた。
もちろん、毎日サボっているわけじゃない。ただ、どうしても授業に集中できない時や、クラスの空気に行き詰まった時、気づけば足が保健室に向いている。
そして、引き寄せられるようにノックするその部屋の奥には、いつも変わらず、ふわふわとした笑顔の涼架がいた。
「あ、若井くんだ。お疲れ様、今日もサボり?」
「….サボりって言うな。ちょっと息抜きだ」
「ふふ、それを世間ではサボりって言うんだよ?」
いつもの丸椅子に腰を下ろすと、涼架はベッドの上で膝を抱えながら、ふにゃりとタレ目を下げて笑った。
先生がいないのをいいことに、俺たちはくだらない雑談を交わす。それが最近の、俺にとって一番落ち着く時間になっていた。
ふと、俺はブレザーのポケットから、新しく買ったばかりの真っ白な消しゴムを取り出した。特に意味はなかった。授業中に手持ち無沙汰でいじっていたのを、そのまま持ってきてしまった。
それを見た涼架が、首を傾げる。
「あれ、新しい消しゴム?まっしろだね」
「あ、うん。前のやつ失くしちゃってさ。そういえば、これ見て思い出したんだけど」
「ん?なに?」
「こないだクラスの女子たちがさ、これのカバーを外して、中に好きな人の名前書くのどうのこうのって話してて」
俺が何気なく言うと、涼架は「あ!」と小さく声を上げて、目をきゅるんと輝かせた。
「それって、あれでしょ?消しゴムに好きな人の名前書いて、誰にも見られずに使い切ると恋が叶う、っていうやつ!」
「うわ、知ってんだ」
「知ってる知ってる!うわ、懐かしいねそれ。小学校の時とかにめちゃくちゃ流行ったよね!」
楽しそうに笑う涼架の顔を見て、俺の胸の奥が少しだけくすぐったくなる。
「小学校の時?俺の周りではそんなのやってる奴いなかったからさ、女子の迷信ってすげえなと思って」
「えー、男子はあんまりやらないのかな?でも僕のクラスの男子は、悪ふざけで友達の名前書いて「お前と両想いになっちゃう!」ってキャーキャー言ってたよ」
「そうなんだ…」
「あはは!でもさ、誰にも見られずに使い切るのって、すっごく大変なんだよね。途中で絶対誰かに貸してって言われたりさ、無くしちゃったりするでしょ?」
涼架はベッドから身を乗り出すようにして、俺の手元にある消しゴムを見つめた。
その距離が妙に近くて、かすかに甘い、お日様のような匂いが鼻をかすめる。俺は少しドギマギしながら、消しゴムを指先で転がした。
「…..確かに、使い切る前に絶対無くすわ、俺なら」
「でしょ?だからこそ、本当に使い切れたら奇跡だし、願いが叶う気がするのかも。ねえ、若井くんは書かないの?」
「は?俺が?」
「うん。好きな人、いないの?」
悪戯っぽく覗き込んできた涼架の瞳は、吸い込まれそうなほど綺麗だった。
タレ目の奥にある真っ直ぐな光に射抜かれて、俺は心臓がドクンと跳ねるのを感じた。
好きな人。
そんなの、いま目の前にいる。
自分のツリ目を初めて「カッコいい」と言ってくれて、この退屈な学校生活の中で、唯一俺を救ってくれている存在。
…..だけど、そんなこと口が裂けても言えるわけがなかった。
「…..いねーよ、そんな奴」
「そっかぁ。じゃあ、もしできたら真っ先に僕に教えてね?」
「なんでお前に報告しなきゃいけないんだよ」
「だって、僕たちサボり仲間でしょ?応援したいじゃん」
涼架はそう言って、また無邪気に笑った。
応援なんて、してほしくない。俺が書きたい名前は、お前の名前なんだから。
「….じゃあさ、代わりに僕の名前書く?」
「は?」
唐突な提案に、俺は思わず大きな声を上げてしまった。涼架はケラケラと鈴が転がるように笑いながら、俺の肩をトントンと叩く。
「冗談だよー。でも、僕の名前だったら、誰に見られても「友達の名前だよ」って言い訳できるでしょ?」
「お前な…..あのさ、このジンクスって『好きな人の名前』を書くから意味があるんだろ。お前の名前書いたら、俺がお前に恋してるみたいじゃん」
「あはは!それもそうだね。僕と若井くんが両想いかぁ…..なんか照れちゃうな」
涼架は耳を少し赤くしながら、冗談めかして自分の両頬をパタパタとあおいだ。
その仕草が、その言葉が、俺の胸をどれだけ締め付けているか、この天然男子はーミリも気づいていない。
「…ばか。からかうな」
俺は顔が赤くなるのを隠すように、わざとぶっきらぼうに言って、消しゴムをブレザーのポケットに押し込んだ。
「あ、怒っちゃった?ごめんね、若井くん」
「怒ってねえよ」
「ううん、若井くん、怒ると目がもっとキュッてなるから分かる。…でも、やっぱりその目、カッコいい な」
涼架はベッドに背中を預け、愛おしそうに俺を見つめた。
その時、彼の呼吸がわずかに浅くなり、胸元にそっと手が添えられたのを、俺は見逃さなかった。一瞬だけ、涼架の眉間に微かな痛みの色が走る**。**
「….涼架?お前、やっぱりどこかーー」
「ううん、なんでもない!ちょっと喋りすぎて疲れちゃった。僕、少しだけ寝るね」
言いかける俺を遮るように、涼架はふにゃりと笑って、そのままベッドにごろんと横になってしまった。
背中を向けた彼の小さな肩が、静かに上下している。
ポケットの中の消しゴムに、指先が触れた。
この白い四角形に、いつかお前の名前を刻む日は来るのだろうか。
眠りにっこうとする涼架の背中を見つめながら、俺は胸の奥に芽生えた確かな痛みを、そっと噛み締めていた。
消しゴムのおまじない懐かしいな🪄
今もそう言う噂流行ってるのかな
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