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これは、2人が送る、愛の無い恋物語。
そこには、本を読んでる男の子と、元気にはしゃいでいる女の子が白い部屋に二人きりでいた。
女「ねぇねぇ!花の名前を言っていこうよ!先に言えなくなった方が負けね!」
男「………」
男「Daphne」(ダフニー)
女「Ficus」(フィークス)
男「Iris」(アイリス)
女「Maackia」(マーキア)
男「Lythrum」(リスラム)
女「Myrica」(ミリカ)
男「Sabia」(サビア)
『Flos』フロース
男「今日も騒がしいな。」
女「それが得意だからね!」
拝啓、僕の願った未来よ、こんな日を永遠に、この白い病室から僕達を出さないで…
そんな言葉をノートに綴る。
そんな淡い願いを抱いた時もあった。
しかし、そんな願いは体感八度五分くらいに暑い願いは夢として散ってしまった。
女「Daphne」(ダフニー)
男「Ficus」(フィークス)
女「Iris」(アイリス)
男「Maackia」(マーキア)
女「Lythrum」(リスラム)
男「Myrica」(ミリカ)
女「Sabia」(サビア)
男「Thymus」(サイマス)
女「Ribes」(リベス)
男「Abelia」(アベリア)
女「Sedum」(セダム)
男「Felicia」(フェリシア)
女「Ochna」(オクナ)
男「Lychnis」(リクニス)
女「今日もお花の名前言ってこようよ!」
男「ふふ、本当に好きなんだな。花の事が。」
女「うん!綺麗で大好き!」
再啓、君の言葉で揺らぐ想いは、憂いは入り交じった感情はどうすれば良い?
君は半径八十五分程小さな世界に囚われたままで、
君が本音を挿し、罅割れた今日が溢れる。
女「私、実はね、あとちょっとでね、──」
残り僅かな時間に錆び付く心を君が必死に彩る。
燻んだひびを丁寧に、
飾った花は直ぐに枯れてく。
愚鈍な僕は夢から覚めて、
縋った意味も無いな。
女「こんな私だけどね、ずっとそばに居てくれる君が好きなんだ。まっ、偶然一緒になっただけなんだけどね。」
男「その好きって…」
女「もちろん…恋愛的な意味で…だよ。」
胸が苦しくなる。
色んな想いや、感情が入り交じるから、
だけど、彼女が、
女「君はどう?私の事好き?」
そんなふうに言うから、
僕は、僕は…
男「僕は君の事が───」
君が僕にくれた声も、色も、揺るぎない。
愛情も、二人きり空に光った星も疾うに散ってしまった。
難儀の末、どうしようもないと言われてしまった君とそれを聞き、人が景色が、季節が色褪せ、モノクロになり疲れきる僕。
女「私、将来は花屋さんとかやってみたいな。」
男「………」
女「どうしたの?」
男「君はあのことを知って…」
女「知ってるよ?」
男「………」
女「知ってるけど、やってみたいの!」
そう言って彼女は、優しく、明るく、丁寧に花へと水を注いだ。
君も僕も別々の場所に『退院』し、熱を帯びた、鈍く膿んだ雫が目から街に零れる。
荒んだ日々を丁寧に、
辿った先に花が咲く筈。
利口な君は夢を見た儘、
悟った振りで水を注いだ。
木漏れ日の中に柔らかく咲いた花は
『木漏れ日の中に優しく話してた君は』
雲の上で違う星で 夢の先で揺れてる。
君が消え、燻んだ日々を丁寧に、
君が去り、育たなくなってしまった飾った花は直ぐに枯れてく。
愚鈍な僕は君が居たらなんて夢から覚めて、
君を縋った意味も無いな。
楽しかった不毛な日々を丁寧に、
君の代わりに綴った紙に花を描いた。
不遇な僕ら夢に敗れて、
誓った筈の恋も無かった事にした。
男「Daphne」(栄光)
男「Ficus」(多産)
男「Iris」(希望)
男「Maackia」(幸福)
男「Lythrum」(純愛)
男「Myrica」(一途)
男「Sabia」(活力)
男「Thymus」(勇気)
男「Ribes」(私はあなたを喜ばせる)
男「Abelia」(謙虚)
男「Sedum」(記憶)
「Felicia」(幸運)
「Ochna」(陽気)
「Lychnis」(私の愛は不変)
『Flos』(『花』)