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するとあの中年の作業服の男が横から口をはさんだ。
「ご住職さま、それはご心配には及びません。ご供養いただいた後、私たちがメーカーのリサイクルセンターへ運ぶ事になっています。あのドローンで運び出しますので」
正源は一瞬考え込んで、作業服の男たちに言った。
「では庭先というわけにもいきませんね。本堂に運んでくれますか。ご本尊の仏像の前の、畳の上に横向きに置いて下さい」
男たちはケースごと担ぎ上げてそれを本堂に向かって運んだ。その後について歩みながら、正源は女性に問いかけた。
「供養して欲しいという事は、あのロボットはもう動かないのですか」
女性は少し悲しそうな表情で答えた。
「できれば私が引き続き使ってやりたかったのですが。なにぶん古い型ですから、八方手を尽くしたのですが、修理しようにも、もう部品が無いと言われてしまいまして」
「そうでしたか」
本堂に入り、古びた阿弥陀如来像の前に置かれたケースの真後ろに座布団を二枚並べて置き、ロボットの脚の側に女性を座らせ、正源はロボットの頭の横に座った。
作業服の男たちは少し離れて二人の後ろで畳の上に正座し、神妙そうな顔つきで見ていた。
正源は鉦を自分の左横に置き、まずチリンと鳴らして、読経を始めた。女性はきりっとした姿勢で正座したまま、じっとロボットの顔の部分を見つめていた。
あまり時間をかけたくないので、お経の主要な部分だけを朗誦し、正源は袈裟のたもとから小さな和紙を取り出した。
四角い和紙にお経の一節が細かい文字で書いてあり、正源の寺ではその紙を遺体の額に置く。それを以って「引導を渡す」という儀にするのが寺の流儀だ。
数珠を左手に持ち替え、右手の人差し指と中指で紙をはさみ、ロボットの頭部に手を伸ばそうとした。
だが正源は迷っていた。事の成り行きでロボットを供養するなどという前代未聞の事を行っているわけだが、これは本当に仏僧として正しい行為なのだろうか?
僧侶の供養というのは、本来は魂のある存在に対して行うべきものだ。ロボットに魂などないのは自明の事だ。
いかに金のためとは言え、僧侶がロボットに引導を渡すなど、許されるのか? だが、それなら人形供養はどうなのか? 人形にだって魂は無いはずだし、まして針供養などは……
正源の頭の中をそう言った疑問が次々と横切った。
コメント
1件
うわあ、切ない話だった…!「ロボットの供養」って設定だけでぐっと来るのに、住職が「これって仏様的に正しいのか?」って迷いながらも引導を渡そうとするシーン、めっちゃ心に残った。確かに人形供養も針供養もあるし、魂があるとかないとかじゃなくて、そこに込めた人間の気持ちの部分を大事にするのが仏教なのかもなあって思わされたわ。続きどうなるんだろう、この判断が住職の中でどう着地するのか気になる🔥