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教師から言い渡された目標は、
一つ、三メートル以上離れた場所から的を狙うこと
一つ、武器杖を杖の状態で魔法を放つこと
一つ、的に傷を付けること
この三つだ。
カゴメ「打て!」
しかし、他の生徒が次々と目標達成していく中で、私だけ的に攻撃を当てるどころか、魔法が杖から放たれることもなかった。
カゴメ「打て…!打て…!」
カゴメ「打てぇー!!」
体力と魔力が徐々に削られていくのも虚しく、結果が出せないまま時間だけが過ぎていった。
教師「…そこまで!」
カゴメ「…はぁ……はぁ……」
教師「今日はここまで!的に当てられなかった生徒は、次回同じ内容で進めることにする!」
空が橙色になり始め、授業の終わりを知らせる教師。
教師「カゴメくん、だな?今日はもう授業はないぞ」
疲れと悔しさで呆然としていると、教師が声をかけてきた。
教師「まぁ、今日成功しなくとも明日には結果が出るかもしれん!今日はゆっくり休むといい!」
カゴメ「…大丈夫ですわ」
私がそう言うと、教師は真面目な顔をして腕を組み、語り始めた。
教師「実は俺はな、武器杖を武器型にできないんだ」
カゴメ「…え?」
意外な事実だ。
実技担当教師の彼が、武器杖を完全に扱えてないなんて。
教師「少年期の頃から現在まで、俺の杖が武器に変わったことはない。だから昔から親や恩師からは無理だろうと言われてた」
悔しそうな表情から一変、太陽のような笑顔で二の腕に力こぶを作って見せにきた。
教師「だからこそ!武器を扱えなくとも身体と攻撃魔法を強くするよう鍛えてきたんだ!」
カゴメ「そ…そうですの…」
教師「まぁようはな、人によってできるできないがあるものだってことだ。できないから駄目なんてことはないさ」
大きな手を私の肩に置き、校舎へ誘導する。
教師「さぁ、今は放課後だ。夕飯までの時間は、寮で休むと良い」
カゴメ「…はい」
部屋に着き、私は布団に身体を沈めた。
同室を決めなかったため、ニ回目の一人っきりの時間を過ごす。
実家では兄と一緒の部屋だったこともあり、少し散らかってだらしなかったが、ここでは一人部屋だ。
自分なりに綺麗に整頓されてて心地良い。
…が、少し物悲しく感じた。
カゴメ「…そろそろ、食堂に行こう」
布団から起き上がり、支度をしていると、窓がガタガタと音を立てていた。
外から一羽の烏が、窓を突いたり翼で揺らしたりしている。
カゴメ「かぁ助…!」
私の使い魔、カラス のかぁ助だ。
すぐに窓を開けて左手に乗せる。
かぁ助「すまないカゴメ、知らせがある」
カゴメ「あら、一体どうしたの?」
肩で息をしているかぁ助、ただ事ではなさそうだ。
かぁ助「実は、学校周辺の山から攻撃的な魔物が二体ほど出たのを見た。門を壊して校舎に入ってきたんだ」
カゴメ「な、なんですって!」
学校の周りにある山には、千はくだらないと言われているほど、狂暴で恐ろしい魔物たちが住み着いているらしい。
そのため、山には一歩でも入り込んでは命はないと、校長が立ち入ることを禁止したらしい。
カゴメ「た、大変!早くみんなに知らせないと…」
次の瞬間、「バチンッ!」と弾けるような音と共に、全ての灯りが一斉に消え、闇に取り込まれてしまった。
カゴメ「きゃっ!?な、なに?!」
かぁ助「まさか、もう奴らがここに…?カゴメ、気をつけるんだ」
カゴメ「え、えぇ…もちろんよ」
常備されていたカンテラの灯りを頼りに、私とかぁ助は暗い校舎内を進むことにした。