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「海春っ……!」
背後から突然とびかかってきた狼に、わたしが息を呑んで反射的に目を閉じたそのとき――レインがわたしを振り返ってなんとか狼をかわそうと手綱を繰る気配と、それに応えようとしたフェリクスの嘶きが辺りに響き渡った。
――なんとか……なんとかしなくちゃ……!
わたしは気が動転している自分にそう言い聞かせると、剣をぐっと両手で握りしめて、頭上からおどりかかってくる一匹に向かってしゃにむに剣を振るう。
その甲斐あって、そのうちの一撃が狼の胴を深々と切り裂き、鮮血をふきだした狼は弱々しい断末魔の鳴き声をあげながら草むらに落ちて動かなくなった。
――危な……かったっ……。
生きるものの命を奪うのは怖くて、つらい。けれど、それで及び腰になっていては、今のようなことが起きて今度は自分の命が危ない。
命を奪う奪われるの世界では、少しの感情の揺らぎが生死をわけてしまうのだろ************
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