狼と遭遇した樹木の生い茂る森を抜けて、ブナや白樺といった並木が立ち並ぶ木立を抜けると、ゆるやかな芝の丘陵の先に農耕地に囲まれた小さな村が見えてきた。
村には煙突のある木組みの家々がぽつぽつと建っていて、村の柵に沿って作られたポプラ並木が村をかわいらしく囲んでいる。
（……あれは、レスリーの村か）
俺は、見覚えのある村を丘の上から眺めながら、ほっと胸をなでおろした。
なんとか日暮れまでに宿場のある村までたどり着けたようだ。
レスリーの村は、牧畜や養鶏がさかんで、王都の市場で売られているバターやミルクといった乳製品は、この村で放し飼いされている家畜の乳から作られているという。
その話どおり、レスリーの村を囲うように周囲に広がる牧草の草地には、黒牛たちがのんびりとたたずんでいて、もぉー、という低く間延びした声が遠くに聞こえていた。
「おー、無事にレスリーまで着けそうだな、レイン」 ＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
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