そろそろ始まる。花火を待つ人々がいる。中には親子で訪れてた人もいた。その中で私は丁度人気がない場所を見つけた。海月は子供のような強い好奇心で
「ん?僕達って、会場行かんの?」
と、聞いてきた。私が頷くと海月は更に不思議そうな顔をした。海月視点では会場から離れているだけのように感じる。
「…会場の中ではあるよね。ただ、私達が今から行く場所は”今が”穴場なんだよね。」
普段は子供が入り浸っている賑やかな憩いの場だ。だが、今日は一味違う。この公園は照明が2、3年前から壊れていて太陽が沈むと周囲が闇に染まるのだ。『…広場で……花、大か……』と、周囲にアナウンスをしているが音質の悪さから少ししか聴きとれない。私は昔、今は亡き友人とよくここに見に来ていた。私の友人は人混みが苦手で、特に文化祭や体育祭はもちろん。私の通っていた高校には音楽祭があるのでもちろん出られる筈が無かった。その子は小説の杏樹が元となった子だ。今考えてみれば、杏樹とは真逆の性格だったと思う。その子は紗奈と言って私が好きになった女の子だった。もちろん恋愛的な意味で。紗奈と私は恋人レベルで仲が良かった。慧よりも紗奈と一緒にいる時間の方が長いのだ。この公園に来るといつも思い出して涙がぽろぽろ零れる。涙目の私に海月は不思議そうに聞くから私は
「なんでもないよ。」
と、言うしか出来なかった。また、思い出してしまった。「紗奈は幸せになるべきだったのに」だなんて、紗奈からしたら加々美星螺なんて言う人間に興味なんて無かったんだろうけど。紗奈に一方的な感情を抱きつつ同性だということが歯止めになった。紗奈、好きだよ。と、呟いたこともあった。その時は顔を真っ赤にして
「やめてよっ……星螺ぁ。」
と、抵抗していたなぁ…。また会いたい気持ちと過去にはもう戻れないということがひしひしと背中に痛みを伴う。心臓が大きく脈動する。
吊り橋効果で海月のことを好きだと思っていた時はあった。だが、ここに来るとようやく自覚した。マシェリは紗奈に酷似しているんだ。海月の性格が紗奈と似ている。紗奈が好きだから海月を好きになった。海月が好きなのは紗奈との深い思い出があるからなのかもしれない。
「…花火、もうすぐだね!!」
「そうだね。」
「ここから見えるの?」
「見えるよ、友人と見に来たことがあってね。」
「へー!そうなんだね~!!」
海月にはなんでも話せる。だが、紗奈のことは怖くてずっと話せていないのだ。これからも紗奈のことは話さないのだろう。
「ほら、始まるよ?」
そう言うと音楽が流れた。会場から少し遠い場所でも聞こえてきた。
続く。.:*・゜
紗奈、絶対知らないですよね…
まぁ、古参ファンならワンチャン………?
紗奈の話リメイクするのでお楽しみにー!!!