次に目を覚ますとそこは見覚えのない場所だった「……あれ?ここは一体……?」辺りを見渡すとそこには様々な機械や装置が置かれていた。よく見るとそれらは全て医療用に使われる物ばかりだった。その時、誰かが部屋に入って来た音がしたので振り向くとそこに居たのは白衣を着た女性だった「あら、目が覚めたみたいね」その女性は僕の姿を見て言った。「……えっと……あの……」僕が戸惑っていると彼女は優しく微笑みながら言う「初めまして、私はこの病院の医師をしているものです」それを聞いて僕は驚く「えっ!?そうなんですか!?」するとその女性は少し驚いた様子で言った「あら、知らなかったのかしら?あなたずっと昏睡状態だったのよ?もうかれこれ半年近くになるかしら?」それを聞いた僕はさらに驚いた「えっ!?そ……そうなんですか!?」そしてその後、色々話をしているうちに段々と思い出してきた。そうだ……確か僕はあの時……
あの日、僕が柊さんと話している途中突然地面が崩れたと思ったらそのまま落ちてしまったんだそこで意識を失って目が覚めたら今に至るという訳か?「……どういうことだ?一体どうして……」僕が頭を抱えていると女性が言う「……言いづらけど、あなたが見ていたのは全て夢よ」それを聞いて僕は絶句した。「そんな……バカな……」僕が呟くように言うと彼女は言った「現実よ、全て……」それを聞いた瞬間、僕の中の何かが崩れ去った気がした。
「……嘘だ……!こんなの……!」僕は思わず叫んでいたすると女性は静かに言う「いいえ、本当よ」そして続けて言った。「あなたが夢で見ていたのは柊 周という女性だよね?彼女はあなたと同時期に搬送されて当日に亡くなったわ」それを聞いた瞬間、僕は頭が真っ白になった。そして同時にある感情がこみ上げてくるのを感じたそれは悲しみと怒りだった「う……嘘だ……!そんな……!」俺は涙を流しながら言うが女性は何も答えなかった。それからしばらくして落ち着いた後、改めて話を聞くことにした。まず最初に彼女が言ったのは柊さんが死んだという事だそれを聞いて僕はさらにショックを受けた。しかし彼女は続けて言った「でも、だからと言ってあなたが責任を感じる必要はないのよ」僕は思わず聞き返した「ど……どうしてですか?」すると彼女は微笑んで答えた「だってあなたは柊さんを最後まで守っていたんでしょう?警察から色々聞いていますよ……あなたが滅多刺しにされても必死に柊さんを抱きかかえて守っていたと……その姿を見た病院のスタッフがあなたに治療を施そうとしたのだけど……」そこまで聞いて僕は思い出した。あの時の事はよく覚えている、確かにあの時僕は柊さんを庇って刺されたんだ。でもいつから夢なんだ?僕の腕はちゃんと両方あるし足だって動く。なのになんで……「そっか……もう終わったんだ」僕は全てを悟りとてつもない鬱の感情に飲み込まれた「え?」女性が聞くので僕は言った「いえ、何でもありません……」それからしばらくの間沈黙が続いた。そしてしばらくしてその女性は僕に1枚の紙を差し出してきた。「これ、柊さんのポケットに入っていたあなた宛の手紙よ」僕はそれを受け取って封筒の封を切る。所々に血が滲んでいるが何とか読める状態だった。僕はそれを静かに読む『新海君へ、ずっと伝えたかった事があるの。でも直接言うのは恥ずかしくて……だから手紙を書く事にしました。新海君、初めて会った時はびっくりしたよね?いきなり盲目の人が話しかけて来たら誰だってびっくりするもんね!でも私は嬉しかったな、だってこんな私に優しくしてくれたんだもん!それにね?私、ずっと前から新海君の事が好きだったんだ……だからこの手紙で伝えます。』そこまで読むと僕は思わず涙が流れ落ちた。「うぅ……」そして最後はこう締め括られていた『新海君、大好きです。私と付き合って下さい。こんな私だけど……よろしくお願いします』「うぅ……」僕は嗚咽を漏らした。手紙の字は彼女の字で間違いなかった。盲目だった彼女が書いた字。決していい字とは言えなくても芯のある字だった。そして何よりも「好き」という文字を見て僕は涙が止まらなかった。あれから数ヶ月後……僕は無事に退院して学校に復帰した。最初は周りの反応も様々だったけどみんな優しく接してくれたお陰で今は普通に生活できているし友達も多い方だと思う。そして卒業の日が来た。卒業式が終わると校庭の大きな桜の木の下に来た。僕は額を木にくっ付ける。そして静かに涙を流す。『新海君……!泣かないで……!』突然後ろから声が聞こえる僕は驚いて振り向くとそこには柊さんが居た。だが彼女は半透明で少し浮いていた。彼女は微笑みながら言う。『ごめんね……こんな姿で……』彼女は悲しげな表情で言う。僕は思わず抱きしめた。そして言う。「柊さん……!手紙読んだよ!僕も君のことが好きだ!」そう言うと彼女は笑顔で言う。
『ありがとう……!嬉しいよ……!』彼女が言うと突然辺り一面が光に包まれた。「え?……柊?さん……?」僕が呟くと彼女は少し寂しそうにして言う『バイバイ、新海君……最後に返事を聞けてよかった……!ずっと見守ってるから』そう言うと僕の目の前で桜の花びらが吹き抜ける。
「えっ!?ま、待ってよ!!」僕が慌てて言う。しかし彼女の姿は既に見えなくなっていた 気がつくと僕の目からは大粒の涙が溢れていた。「うっ……うわぁぁ……!」僕は声を上げて泣いた。彼女を失った悲しみ、そして最後に言ってくれた言葉の嬉しさで涙が止まらなかった。あれから数年後……僕は無事就職して一人暮らしを始めたがどうしても一つだけ気になることがあるそれは柊さんの事だった。彼女は何故かあの日成仏したはずが僕の背後霊になってしまったのだ。まぁ、それはさておき今日も僕は会社に行くために家を出る準備をしていると柊さんが話しかけてくる「新海君!おはよう!」それを聞いて僕は笑顔で答える「うん、おはよう」それから僕達は朝食を食べ身支度を整えて家を出たそして会社に着き自分のデスクに座った。さぁ、今日も始まる。僕たちの1日が。
続く…次回作【背後霊柊さん】
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