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兄×弟
夕方。
リビングのテーブルには、算数のドリルが広げられていた。
こさめは鉛筆を握ったまま、うーんうーんと唸っている。
🦈「……」
じーっ。
🦈「……」
じーーーっ。
問題を見つめて五分。
まったく進まない。
🦈「むり」
ついに鉛筆を置いた。
🦈「らんにぃー!」
二階まで響く大声。
しばらくして。
🌸「どうしたー?」
高校の課題をやっていたらんが降りてきた。
階段を下りながら、こさめの隣を覗き込む。
🌸「宿題?」
🦈「そう!」
🌸「どこ分かんないの」
🦈「全部!」
🌸「全部は嘘だろ」
らんが笑う。
🌸「ほら見せて」
こさめはドリルをぐいっと押し出した。
🦈「この問題!」
『たろうくんは120円のりんごを3個買いました。全部でいくらでしょう』
らんは瞬きをする。
🌸「……これ?」
🦈「これ!」
🌸「120×3だよ」
🦈「なんで?」
🌸「3個だから」
🦈「なんで?」
らんが天井を見上げた。
🌸「よし、説明しよう」
椅子を引いて隣に座る。
🌸「りんご1個120円ね」
🦈「うん」
🌸「それが3個ある」
🦈「うん」
🌸「120円、120円、120円」
🦈「うん」
🌸「足すと?」
藍翠 瑠蒼
38
こさめは指を折り始める。
🦈「えっと……」
🌸「うん」
🦈「いっぱい!」
🌸「惜しくない」
即答だった。
🦈「なんでぇ!」
こさめが抗議する。
らんは笑いながらノートへ数字を書く。
🌸「120+120+120」
🦈「うん」
🌸「これを簡単にしたのが120×3」
🦈「おおー」
🌸「で、答えは?」
しばらく考える。
🦈「360!」
🌸「正解」
🦈「やったー!!」
ばんざーい。
まるで難関を突破したみたいな喜び方だった。
🌸「じゃあ次」
🦈「え」
🌸「次の問題」
こさめの笑顔が消える。
🦈「……まだあるの?」
🌸「宿題だからね」
🦈「帰りたい」
🌸「家だよ」
🦈「じゃあ寝たい」
🌸「だめ」
らんがドリルをめくる。
🌸「ほら」
🦈「うぅ〜」
しかし数分後。
🦈「らんにぃ」
🌸「ん?」
🦈「これ分かんない」
🌸「どれ」
また数分後。
🦈「らんにぃ」
🌸「ん?」
🦈「これも」
さらに数分後。
🦈「らんにぃ」
🌸「んー?」
🦈「鉛筆落ちた」
🌸「自分で拾いなさい」
らんはとうとう笑ってしまった。
🌸「こさめさ」
🦈「なに?」
🌸「分かんない問題より、分かる問題の方が少なくない?」
🦈「そんなことない!」
自信満々。
🌸「じゃあこれ解いて」
一番簡単な問題を指差す。
こさめは真剣な顔になる。
🦈「……」
🌸「うん」
🦈「……」
🌸「うん?」
🦈「らんにぃ」
🌸「はい」
🦈「分かんない」
らんが吹き出した。
🌸「だと思った」
🦈「笑わないで!」
🌸「ごめんごめん」
頭をぽんぽん撫でる。
🌸「ゆっくりやればいいよ」
🦈「ほんと?」
🌸「うん」
🦈「できるかな」
🌸「できる」
らんはそう言って、こさめのノートを指差した。
🦈「ほら、さっきの問題は一人でできたじゃん」
🌸「たしかに!」
🦈「だから大丈夫」
こさめは少し嬉しそうに笑った。
🦈「じゃあ頑張る!」
🌸「その調子」
そして五分後。
🦈「らんにぃ〜」
🌸「ん?」
🦈「やっぱ分かんない」
らんは思わず机に突っ伏した。
🌸「先は長そうだなぁ……」
そんな兄の苦笑いをよそに、こさめは今日も元気いっぱいだった。
リクありがとうございますたぁぁぁぁ
リク待ってます
コメント
2件
テストのご褒美になりました!ありがとうございます!!✨
読み終えました〜。こさめくんの「らんにぃ〜」コールが可愛くて仕方ない回でしたね。算数の宿題を前に「むり」「全部!」「なんで?」の三拍子、そして「帰りたい」(家だよ)の流れ、兄弟の呼吸が絶妙に描かれていて、思わず頬が緩みました。 らんが根気強く付き合いながらも、最後に机に突っ伏すところが「あるある」すぎる…笑。でも「できる」と言い切って励ますところは兄の頼もしさが滲んでいて、ああいう一言が弟には何よりの栄養になるんだろうな、と。続き、楽しみにしてますね。