耳障りな蝉の声。
ジリジリと照り付ける太陽。
纏わりついてうざったいシャツ。
「あ、…」
ふと、自転車を止め、見つめる先はキラキラと輝く海。
その手前には下がった踏切が。
そして、物凄い勢いで通り過ぎていく鉄の塊。
あの日、君はそれに命を奪われた。
__いや、僕が奪ってしまったのか。
見上げれば、真っ白な入道雲と鮮やかな水色の空。
まるで僕らみたい。
「……君は友達、」
あの日、君が口にした言葉を繰り返す。
ねぇ、僕もそっちにいっていいかな。
ふと、気付いた恋心。
君に対する想いは歪んでいった。
「しょーちゃぁぁん!!久しぶり〜!!!」
夏休み明けの二学期。
ホームルームのチャイムと共に抱きついてくる彼は僕の数少ない友人。
その濁りのない笑顔も、全部僕だけに見せてくれればいいのに。
なんて考えが頭に過り、必死に追い払う。
そう、君は友達なんだから。
それ以上でも、それ以下でもない。
「いむくん、朝から元気やな〜、w久しぶり、w」
あくまでも平然を偽って返事をする。
君の机に置かれた花瓶なんて気にしないで。
とうとう暴走してしまったこの想い。
君を虐めれば。
そうしたら、君は僕を頼ってくれるのだろうか。
そんな好奇心で始めたこと。
すこしでも、いいから。
僕を頼ってよ。僕を見てよ。僕に依存してよ。
いむくん。
数ヶ月しても、君はへらへらと、いつも通りの笑顔だった。
苦しいよ、助けてよ、って僕に頼ってはくれなかった。
放課後、君はまた虐められている。
無数の黒に囲まれたたった一つの水色。
窓から覗く青空が、君を隠すみたいで。
僕はその場を去った。
二学期の終業式。
久しぶりに君と帰路についた。
「ねぇね、しょうちゃん自転車だしさ、二人乗りしよ!僕だけ歩きとかやだぁ!」
「えぇ〜、危なくない?wまぁ、ええよ、w」
君の我儘に付き合うのも嫌いじゃない。
いや、なんなら大好きだ。
ペダルを踏み込むと、潮風が吹き付けてくる。
涼しくて気持ちいい。
「待って、!これ意外と怖いんだけど!?」
なんて、後ろから君の絶叫する声が聞こえる。
それにくすっと笑っていると、ふと肩に君の手が触れた。
「へっ、」
「これ絶対捕まってないと落ちるから!!!」
そう言って、肩に手を置く君。
茶色く染まった無数の線が見えたのはきっと気の所為。
なんて思いながら、鳴り止まない鼓動のままペダルを漕ぎ進める。
「あっ、!しょうちゃん!海!」
ふと、君が言った。
足を止め、君が指差す方を見ると青く輝く海が広がっていた。
「うわっ、きれーやなー……」
自転車から降り、あまりの綺麗さに見とれていると。
カンカンカンカン……
と、踏切の音がした。
こんなとこにも踏切なんてあるんだ、なんて考えていたら。
「いむく……ッ!?」
線路に足を踏み入れた君。
その時、初めて君に伸ばした右腕。
迫ってくる電車。
僕たちを引き裂くように下がっていく踏切。
もう分かっていた、この手は届かないって。
刹那、目の前から海が、空が、君が、消えて。
カンカンと鳴り響く踏切の音。
ガタゴトと揺れる電車の音。
グチャッと何かが崩れていく音。
チリンとなったお揃いのキーホルダーの音。
でも、鮮明に聞こえた君の声。
「君は友達」
五月蝿く響く踏切に足を踏み入れる。
空を眺めていれば、君が現れた。
そして、こちらを指差す君。
「ごめんね、いむくん」
そう零すと、鉄の塊が襲ってくる。
虐めて、ごめんね。
死のうとして、ごめんね。
こんな気持ち持っちゃって、ごめんね。
来世は君と普通の友達になれたらいいな。
君は友達。
※自己解釈です!!
※本家様コメントや水白水カバーコメントなどを参考に書かせていただきました!!
※少女レイって神曲ですよね……シンプルに……
コメント
4件
ぁああぁあ好きですっ……😭 解釈が好きすぎますっ… 所々いむしょーの少女レイのコラボ歌ってみたであったラップリリックの要素も入っててほんとに天才だと思います…🥲 ぶっ刺さりました……
初コメ失礼します✋たまたま作品を見つけて読んだ者なのですが…少女レイいいですよね…カラオケで歌います((( 解釈ばっちりじゃないですか… めっちゃ刺さりました!!! 所々の水くんの状態の描写好きでした…!神作ありがとうございます😭
めちゃくちゃ雰囲気好みです!! 主さんの言葉選びが綺麗すぎて、、🥲 私も少女レイ凄く好きです!!