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テラーノベル(Teller Novel)
少女レイ

少女レイ

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少女レイ

♥

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2023年08月10日

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耳障りな蝉の声。

ジリジリと照り付ける太陽。

纏わりついてうざったいシャツ。

「あ、…」

ふと、自転車を止め、見つめる先はキラキラと輝く海。

その手前には下がった踏切が。

そして、物凄い勢いで通り過ぎていく鉄の塊。

あの日、君はそれに命を奪われた。

__いや、僕が奪ってしまったのか。

見上げれば、真っ白な入道雲と鮮やかな水色の空。

まるで僕らみたい。

「……君は友達、」

あの日、君が口にした言葉を繰り返す。

ねぇ、僕もそっちにいっていいかな。




ふと、気付いた恋心。

君に対する想いは歪んでいった。

「しょーちゃぁぁん!!久しぶり〜!!!」

夏休み明けの二学期。

ホームルームのチャイムと共に抱きついてくる彼は僕の数少ない友人。

その濁りのない笑顔も、全部僕だけに見せてくれればいいのに。

なんて考えが頭に過り、必死に追い払う。

そう、君は友達なんだから。

それ以上でも、それ以下でもない。

「いむくん、朝から元気やな〜、w久しぶり、w」

あくまでも平然を偽って返事をする。

君の机に置かれた花瓶なんて気にしないで。

とうとう暴走してしまったこの想い。

君を虐めれば。

そうしたら、君は僕を頼ってくれるのだろうか。

そんな好奇心で始めたこと。

すこしでも、いいから。

僕を頼ってよ。僕を見てよ。僕に依存してよ。

いむくん。


数ヶ月しても、君はへらへらと、いつも通りの笑顔だった。

苦しいよ、助けてよ、って僕に頼ってはくれなかった。

放課後、君はまた虐められている。

無数の黒に囲まれたたった一つの水色。

窓から覗く青空が、君を隠すみたいで。

僕はその場を去った。


二学期の終業式。

久しぶりに君と帰路についた。

「ねぇね、しょうちゃん自転車だしさ、二人乗りしよ!僕だけ歩きとかやだぁ!」

「えぇ〜、危なくない?wまぁ、ええよ、w」

君の我儘に付き合うのも嫌いじゃない。

いや、なんなら大好きだ。

ペダルを踏み込むと、潮風が吹き付けてくる。

涼しくて気持ちいい。

「待って、!これ意外と怖いんだけど!?」

なんて、後ろから君の絶叫する声が聞こえる。

それにくすっと笑っていると、ふと肩に君の手が触れた。

「へっ、」

「これ絶対捕まってないと落ちるから!!!」

そう言って、肩に手を置く君。

茶色く染まった無数の線が見えたのはきっと気の所為。

なんて思いながら、鳴り止まない鼓動のままペダルを漕ぎ進める。

「あっ、!しょうちゃん!海!」

ふと、君が言った。

足を止め、君が指差す方を見ると青く輝く海が広がっていた。

「うわっ、きれーやなー……」

自転車から降り、あまりの綺麗さに見とれていると。

カンカンカンカン……

と、踏切の音がした。

こんなとこにも踏切なんてあるんだ、なんて考えていたら。

「いむく……ッ!?」

線路に足を踏み入れた君。

その時、初めて君に伸ばした右腕。

迫ってくる電車。

僕たちを引き裂くように下がっていく踏切。

もう分かっていた、この手は届かないって。

刹那、目の前から海が、空が、君が、消えて。

カンカンと鳴り響く踏切の音。

ガタゴトと揺れる電車の音。

グチャッと何かが崩れていく音。

チリンとなったお揃いのキーホルダーの音。

でも、鮮明に聞こえた君の声。

「君は友達」




五月蝿く響く踏切に足を踏み入れる。

空を眺めていれば、君が現れた。

そして、こちらを指差す君。

「ごめんね、いむくん」

そう零すと、鉄の塊が襲ってくる。

虐めて、ごめんね。

死のうとして、ごめんね。

こんな気持ち持っちゃって、ごめんね。

来世は君と普通の友達になれたらいいな。


君は友達。






※自己解釈です!!

※本家様コメントや水白水カバーコメントなどを参考に書かせていただきました!!

※少女レイって神曲ですよね……シンプルに……

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