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「楓!」
如月希が駆け寄る。
天城楓は右足首を押さえ、苦しそうに顔をしかめていた。
「ごめん……。」
「足をひねっちゃったみたい……。」
蒼井源太が患部を確認する。
「少し腫れてきてるな。」
黒崎駿斗もしゃがみ込んだ。
「無理に動くな。」
「今は応急処置が先だ。」
蒼井は如月を見る。
「如月。」
「能力で冷やせるか?」
如月は少しだけ困った表情を浮かべた。
「……やってみる。」
「でも。」
「私は氷を作ったり、凍らせたりする方が得意なの。」
「冷やすだけっていう細かい温度調整は、正直あまり得意じゃなくて……。」
天城が優しく笑う。
「大丈夫。」
「希ならできるよ。」
その言葉に如月は小さく頷いた。
「ありがとう。」
両手を患部へかざす。
白い冷気がゆっくりと流れ始める。
「……。」
パキッ。
足元の小石に薄く氷が張った。
「あっ!」
如月は慌てて能力を弱める。
「ご、ごめん!」
「冷やすつもりが……。」
黒崎が落ち着いた声で言う。
「焦るな。」
「ゆっくりでいい。」
如月は深呼吸した。
「……もう一回。」
今度は冷気を少しだけ弱める。
ほんのわずかな冷気が患部を包み込む。
「これくらい……かな。」
額に汗がにじむ。
氷を作るより。
凍らせるより。
冷やすだけの方が何倍も難しかった。
「……ちょうどいい。」
天城が少し笑う。
「さっきより楽。」
その言葉に如月はほっと息をついた。
「よかった……。」
その後も様子を見ながら慎重に冷やし続けた。
黒崎は周囲を警戒し、
蒼井は崩れた岩を押して脱出路を探す。
しかし。
「くっ!」
岩はびくともしない。
「簡単には動かねぇか……。」
しばらくして——。
天城の腫れは少し落ち着いてきた。
「歩けそう?」
如月が尋ねる。
天城はゆっくり立ち上がる。
「痛いけど……。」
「歩くくらいなら何とか。」
「でも走るのは無理かな。」
黒崎は無線を取る。
「第二班です。」
「天城は軽傷。」
「応急処置を終えました。」
『了解。』
富山教官の声が返る。
『第一班が救助へ向かっています。』
『その場で待機してください。』
通信が切れる。
黒崎は空を見上げた。
「このままじゃ。」
「第一班も俺たちの場所を正確には把握できないかもしれない。」
蒼井が頷く。
「目印が欲しいな。」
黒崎は右手を前へ出した。
「少し離れてくれ。」
四人が距離を取る。
次の瞬間。
ゴォォォッ!!
一本の炎が真っすぐ空へ向かって立ち上る。
赤い炎は木々より高く燃え上がった。
「これなら……。」
「気付いてくれるはずだ。」
――その頃。
第一班は慎重に山道を進んでいた。
「急ぐぞ!」
九条蓮は足を速める。
(天城が負傷……。)
(俺がもっと早く判断していれば……。)
焦りが胸を締めつける。
自然と歩幅が大きくなる。
「九条さん!」
湊が叫ぶ。
「その先!」
九条は足を止めた。
目の前の斜面には大きな亀裂が走っていた。
あと一歩踏み出していれば。
再び土砂が崩れていたかもしれない。
「班長!」
神童輝羅も声を上げる。
「落ち着け!」
九条は目を閉じ、大きく息を吐いた。
「……すまない。」
「俺が焦っていた。」
湊は静かに言う。
「九条さん。」
「班長が焦ったら、みんな焦ります。」
神童も笑う。
「だから俺たちがいるんだろ。」
九条は二人を見た。
そして小さく笑った。
「ありがとう。」
「隊形を維持。」
「安全を最優先に進む。」
「必ず全員で帰る。」
その時だった。
神童が空を指差す。
「見ろ!」
木々の向こう。
真っ赤な炎が空へ伸びていた。
「あれは!」
湊が目を見開く。
「黒崎さんの炎です!」
九条は力強く頷いた。
「位置が分かった!」
「行くぞ!」
三人は炎を目印に山道を駆け出す。
倒木を避け。
崩れた斜面を慎重に越え。
ようやく木々の隙間から四人の姿が見えた。
「いた!」
神童が叫ぶ。
天城は安心したように微笑む。
「来てくれた……。」
七人はようやく合流した。
その瞬間だった。
ゴゴゴゴゴ……
山全体が大きく揺れ始める。
九条は山頂を見上げた。
「全員!」
「まだ終わってない!」
第30話 救助 完
コメント
1件
第30話、読み終えました!救助が来たと思ったらまだ終わってないラスト、続きがすごく気になります…!希ちゃんの「冷やすだけ」の繊細な能力、苦手でも頑張る姿にじんと来ました。駿斗さんが冷静に指示して、最後に炎を上げるところ、かっこよかったです。九条さんの焦りを仲間が支える場面も好きです。みんな無事でいてほしい!
20
あまね🍡💠
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