テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
鷹槻れん

59,556
鷹槻れん

32,552
宇津Q
4,024
#年の差
「もう少しだけ……繋いでいても、いいですか?」
その言葉に少し照れくさそうに頭を掻いた昴は小さく笑った。
「ああ。もちろんだ」
「ありがとうございます」
昴の返答に安心したように笑みを浮かべた羽衣子はゆっくりと身体を起こした。
二人の手は繋がれたまま、静かな病室に穏やかな時間が流れた後、羽衣子はゆっくりと口を開いた。
「昴さん……助けに来てくれて……ありがとうございました」
「そんなのは当たり前だ。むしろ、もっと早く助けに行けなくて悪かった」
「謝らないでください。私、昴さんの車が襲撃されたって聞いた時、本当に心臓が止まるかと思いました。病院に着いても会えないし……状況も分からなくて……ずっと、不安で……」
震える声と共に、羽衣子の瞳から涙が零れ落ちる。
「……羽衣子」
昴は繋いでいた手をそっと離すと、その代わりに彼女を優しく抱き寄せた。
温かな腕の中へ身を委ねた羽衣子は昴の胸元へ額を預けながら言葉を続ける。
「昴さんが無事で……本当に良かった……っ。助けに来てくれて嬉しかったし……今、こうして一緒にいられることが……嬉しくて……」
堪えきれなくなった涙が次々と頬を伝い、羽衣子がその涙を拭う中、昴は何も言わずただ安心させるように背中をゆっくりと撫でて強く抱き締め続けていた。
暫くして涙が落ち着くと、羽衣子は昴の胸に頬を寄せたまま小さな声で呟く。
「昴さん……」
「ん?」
「助けに来てくれたことは、本当に嬉しかったです。何度お礼を言っても足りないくらい……」
そこで一度言葉を切ると、羽衣子はそっと顔を上げて真っ直ぐに昴を見つめた。
「だけど……無茶はしないでください」
「…………」
「怪我をしているのに、それでも私を助けに来てくれたっていうのは嬉しかった反面、すごく心配だったんです」
潤んだ瞳が揺れ、
「もし昴さんに何かあったらって考えたら……怖くて……」
昴の服をきゅっと握り締めながら羽衣子は震える声で言葉を続けた。
「だからお願いです。これからは自分のことも大切にしてください」
その一言に昴は何も返せず、困ったように笑うと羽衣子の頭を優しく撫でた。
「……悪ぃ」
「謝ってほしいわけじゃないんです……」
「ああ、分かってる。心配かけたな」
羽衣子にとって、その言葉だけで十分だったようで安心したように微笑むと、もう一度昴の胸へそっと身体を預けていった。
羽衣子を失いたくないという昴の想い。
そして、昴にも無事でいてほしいという羽衣子の願い。
お互いに何よりも大切で守りたいモノだからこそ、絶対に失いたくない。
二人は互いの温もりを確かめ合うように抱き締め合いながら、この束の間の静かで穏やかな時間を過ごしていくのだった。
その後、二人の迎えに訪れた乙哉から高遠や想汰について話を聞いた昴。
今回の件は七鳳組の組長も黙ってはおれず、直々に稲見組へ連絡を取って組長同士の話し合いへと発展。
高遠が裏で動いていることを知らなかった稲見組の組長は謝罪すると共に、捕われている二人にはその場で絶縁を言い渡した。
その上で、賠償問題や互いの組の今後についてなども新たに取り決めが行われ、絶縁にした二人の処遇については七鳳組に一任するという話で決着がついた。
「そんな訳で高遠と吾妻の処遇は完全にこっちに委ねられました」
「そうか」
「そのことで組長が昴さんに話があるそうなので、このまま組長の屋敷に向かえますか?」
「ああ、そうだな。希海のことも心配だし、羽衣子にとっても希海が傍に居る方が気が紛れるだろうからな」
「分かりました。それじゃ向かいましょう」
こうして三人は七鳳組組長の屋敷へ向かうことになったのだった。
コメント
1件
ちょっと切なくて、それ以上に優しさが溢れる回だったね…😢💕 羽衣子が「無茶しないで」って涙ながらにお願いするシーン、心臓ぎゅーってなったよ。昴も「悪ぃ」って照れくさそうに謝るところ、男前すぎてやばい…!! お互いを想う気持ちがちゃんと通じてて、読んでてこっちまで温かい気持ちになったよ。 次、組長の屋敷での展開もすごく気になる!昴と羽衣子の行く末、ずっと応援してるからね〜!!🌸