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ニキとシードにちゃんと怒られてよかったよ…。キルが「これが一番いい選択」って諦めかけて吐いた花が何よりの証拠だよな。自分を嫌いになりながらも、それでも「俺らしくある」ために歩き出したラスト、めちゃくちゃ胸にきた。行ってこい🔥
ニキ「……馬鹿だよ、キルも弐十ちゃんも。」
真っ白な天井が見える病室で目を覚まし、真っ青な顔をしたニキとシードが部屋に入ってきたとき、開口一番にニキに言われたのがその言葉だった。
半泣きで、指先が白くなるほど強く拳が握られて、声には棘が含まれている。
けれど、それがニキのやさしさだってことを痛い程わかっていた。
キル「……悪かったな。」
ニキ「謝ってほしい訳じゃない。二人に話せって言ったの、俺だし。」
キル「じゃあなんだよ。」
二人、いや、正確にはしろせんせーを含めた三人に、多大な迷惑をかけた自覚はあった。
正直に言って、人の家に行って二人もぶっ倒れてたら俺だってトラウマになる。
只、今のニキが何故怒っているのかが、それ以外に想像がつかなかった。
病室のベッドに躊躇なく座ったシードも、呆れたような顔で煙草を口に咥えている。
二人から責められるような視線を受ける俺はどうしようもなく、まだ痛む頭をぐしゃり、と抱えた。
キル「……撮影?」
ニキ「違う。」
キル「……俺が早死するかもしれないこと?」
シード「それは嫌やけど、違うな。」
キル「じゃあまじでなんだよ……俺が花吐き病になったところでお前ら困らねぇだろ。」
ニキ「……キルの馬鹿。」
キル「は?」
何だその小学生みたいな悪口。
この数分でお前二回も言ったぞ。いつもの煽りの語彙力はどこ行った。
ニキ「……さっさと好きって言えよ、弐十ちゃんに。」
キル「だから、それができたら苦労してねぇって言ってるだろ。」
ニキ「それ言えば全部解決するでしょ。」
キル「お前、人の話聞けよ。」
ニキ「無理。今まじでキルの話聞けない。」
キル「はぁ?」
頑なニキの態度は、前に俺の背中を優しく押してくれた人と同一人物とは思えない程、強制的だった。
シード「なぁ、キル君。何でニキがこんなに怒っとるか、わかってる?」
キル「……」
シード「……もう見てられんのよ、俺もニキも、しろせんせーも。お互いが傷ついて、自分のことをおろそかにするお前らが。」
ニキとは対照的に、静かにそう言ったシードと目が合う。
けれど、確かにその目には悔しさと、悲しみと怒りが浮かんでいた。
サイドテーブルに突っ伏したままのニキの手が、再び握りしめられた。
シード「俺らもわかっとるよ、これは俺らがとやかく言っても解決するもんじゃない。」
シード「キル君も、弐十君も、何より怖がってるのは、壊れることだから。」
シードの言う通りだ。
俺は、今の関係が、今の幸せが、弐十君の幸せが、自分の幸せが、崩れるのが怖い。
何より、この想いがずっとここにあり続けることが、怖い。
思い知ってしまったから。
目の前で、弐十君が倒れて、花に溺れて何もすることができなかった俺がいたことを。
今以上を望んで手を伸ばせば、大切な人の幸せも崩れてしまうことを。
キル「……だから、もう、いいんだよ。」
全部全部、やめてしまえばいい。
これ以上を求めることを。
キル「……これが、一番いい選択なんだよ。」
静かに震える声の後に、乾いた呼吸と共に花が口元を抑えた手のひらから、ひらりと落ちた。
シード「……そんな覚悟しても、弐十君のこと諦められない癖に。」
花を拾って笑ったシードの言葉に、俺は強く拳を握りしめた。
だんっ、と強く壁を叩いた左手が痛んだ。
ニキ「今花吐いたのが、何よりの証拠でしょ。諦めきれたら、花吐き病は治るんだから。」
いつのまにかサイドテーブルから顔を上げたニキも、どうしようもない者をみるように、呆れたように、でも笑いながら俺を見る。
もう、本当にいやだ。
諦めの悪い自分も、
どこまでも自分のことしか考えられない自分も、
そんな俺であってほしいと願う此奴らも、
自分ではない誰かを思って苦しそうに笑っていた弐十君も、
嫌いだ、嫌いだ、全部大嫌いだ。
それでも、
苦しんで笑って誰かのために花を吐くアイツなんて、見たくなくて。
それでも、俺は、潔く諦めて、臆病者になった、俺を見たくなくて。
ニキ「行ってこいよ。」
ばん、と俺の背中を叩いたニキが、いつもみたいに笑う。
シードもそれに頷き、もう一度煙草を吸った。
まだ、ちゃんと覚悟が決まったわけじゃない。
ゆらゆらと不安と焦りの間をさまよっているのは変わらない。
でも、何もしないで諦めるよりも、泥沼の中で足掻きながらももがく俺の方が、よっぽど俺らしいから。
そう自分に言い聞かせて、前を向いて。
ベッドを降りて、歩き出した。
隣の病室から飛び出してきたしろせんせーと目が合えば、情けない声が聞こえる。
ニキも、シードも、俺に目を合わせて肩を叩く。
シード「後は二人の問題じゃけぇ。しろ、ありがとな。」
ゆっくりと、鉛を振り払う様に一歩ずつ、足を踏み出す。
弐十「………トルテ、………さん……」
もう、逃げたりなんてしないから。