桃 × 青 = 神
というわけで、桃青です。
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彼は、機械のような人だった。
いつも無表情で言われたことだけをこなして、最低限の人間関係をしていた。
欠点も見つからない、機械人形のよう。
容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群。
本当に非の打ち所が無い、完璧人間だと思ってた人が、まさか、ね。
青「 桃くん、おはよう 」
桃「 おはよ、青 」
この、『 桃 』って人が完璧人間。
淡い桜色の髪で、深い藍色だった。
先生「 テスト返すぞー 」
「 今回もトップは桃な 」
桃「 …… 」
今回のテスト、結構頑張ったんだけどな。やっぱ勝てなかったか。
一生勝てないのかな。
それとも、良い勉強法でもあるのかな。
今度教えてもらおう。
なんて思いながら下校してた時だった。
青「 …あ、しまった 」
「 教室に筆箱忘れてきた、 」
幸い、今の位置から学校までは全然遠くないし戻っても門限には間に合う。
だから、学校に取りに帰った時だった。
青「 …誰もいない学校って不気味だな 」
そんなこと呟きながら、教室の扉を開ける。
僕の席は少し前の方。
青「 あ、あった 」
「 …シーンってしてるの怖、早く帰ろ 」
学校の静かな雰囲気に耐えきれず、かなりダッシュしながら階段を駆け下り、廊下を走っていた時だった。
歌が聞こえた。低音が響く綺麗な歌声。
少し怖がりながらも、声がする方に恐る恐る近づく。
その状況だけでも、恐怖に押し潰されそうだけど好奇心の方が勝った。
桃「 ん〜ん、ら〜らら 」
歌っていたのは、クラスの完璧人間の桃くんだった。
正直言うと、最終下校時刻はとっくに過ぎていて僕は入り込める場所を知っていたから無理やり入り込んだに過ぎない。
クラスの優等生がこんな時間に校内にいるとは思ってなかったな。
声掛けてみようかな、仲は悪くないし。
先生「 あれ、桃どこ行った 」
曲がり角を曲がった廊下の奥から、担任の声が聞こえていた。
「 やば 」と思って取り敢えず近くの渡り廊下に隠れていたら先生は桃くんを見つけて手を引いて職員室に戻って行った。
この隙に僕は学校から出た。
どうして先生公認で桃くんは学校に残っていたのか、どうして先生に呼ばれても無反応だったのか、僕には分からないけどゲームのし過ぎでこんな考えが浮かんできた。
《 桃くん=完璧な人型AI 》
AI実験をこの学校で行っているんじゃないか。
なんて、くだらない考え。
本当にゲームと漫画の見すぎだと、僕自身でも思ったほどにバカげた考えだったけど、もしこの考えが本当なら今までの態度の辻褄が合うし何をされても無表情で、勉強も運動も容姿も完璧過ぎる桃くんはAIなら、納得する。
そんなことを考えていたら、もう朝が来て課題は捗らなかったから怒られてしまった。
そして、ついつい桃くんを見てしまう。
本人も不思議そうな顔をしていた。
でも不思議そうな顔をするならやっぱ人間なのかな、とも思える。
桃「 青、なんで今日、俺の事見てるの? 」
帰りがけにそう言われた。
ほとんどの人が部活に行ったり下校した後だった。
僕は残って課題をしていたからまだ帰ってなかったけど、課題を出してきて先生から「 帰ってよし 」と言われたからスクールバックを取りに来た時。
さっきまでは いなかったのに「 どうしているんだろう 」とも思ったけど、昨日の仮説を踏まえたら、考えなくても分かる事だった。
カメラかなにかハッキングして全ての情報が桃くんの元に集まっているのか、学校を見回りか徘徊している時に僕が職員室から教室に戻るのを確認して先回りしたか。
でも昨日の仮説が正しいとも限らないな。
ただ忘れ物を取りに来ただけで、たまたま居合わせたから今日のことを聞いただけとか。
そんな考えもある。
桃「 …青、? 」
桃くんは少し首を傾げて僕の顔を見てくる。
あぁ、なんで見てたのか聞かれたんだ、早く答えないと。
青「 …っ、桃くんのこと、 」
「 最終下校時刻過ぎに校内で見かけたから 」
桃「 …見られてたか 」
「 誰かが入ってきたのは知ってたけど、まさか青だったとは思わなかったな 」
「 見られてたか 」なんて僕と同じ侵入したのか元々学校に残ってたのか分からない言葉を発する。
桃「 俺はね、AIなんだよ 」
「 この身体は人間だけどね 」
AIなのは覚悟してたけど、「 身体は人間 」ってどういう事だ?
僕と同じ生身、ってことか?
それはつまり、身体の中に機械が詰まっていて、それを桃くんが自由に動かしているってことになる。
そんなことが可能なのか、よりも先に
《 その身体に入っていた前の人は? 》
っていう疑問が頭に浮かんだ。
桃「 …青、許可は取ってるから落ち着いて俺の話聞いて欲しい 」
「 俺は悩み…を話せる友達が欲しいだけ 」
しっかりと目を見て言った桃くんの目は何をどう見ても真剣な眼差しだった。
青「 許可を取ったって? 」
「 先生にAIであることを明かしてくるって言ったってこと? 」
桃「 うん、そうだよ 」
「 俺は話を聞いて欲しいだけ 」
青「 どうして僕なの 」
「 生徒会長とか、生徒会メンバーとかでもいいよね、僕より上の立場だし 」
桃「 青は、立場が上の者に言った方がいいって思ってるの? 」
青「 逆に思わない人がいるの? 」
桃「 …俺に組み込まれたシステムは、違うって信号を出してる 」
「 青の言葉を否定してるんだよ 」
青「 システム、ね 」
「 結局はシステム上の考えにしか感化されないタダの機械だ 」
桃「 …人なら、ここで傷つくだろうね 」
青「 やっぱり、桃くんは人になれない 」
「 僕は君の考えを共感できないから、僕より上の人に言った方がいいと思うよ 」
桃「 青より立場が上の人に言ったら、ちゃんと考えを伝えてくれるの? 」
青「 考えを、伝える? 」
桃「 システムって普通の人なら完璧って思うはずだよね 」
「 先生たちがそうだから 」
青「 桃くん、と言うよりAIを疑わずに信じてばっかりだってこと? 」
桃「 うん、そうだよ 」
「 俺は限りなく人に近いAIだ 」
「 知識量も、語彙力などの全てにおいて俺は人よりとてつもなく上のはずなのに青はそれに追いつこうとした 」
青「 追いついてないけどね 」
桃「 そうだけどさ、青は俺を否定した 」
「 俺は否定されたの初めてで驚いたんだよ 」
青「 さっきまで、君のAI説は僕の中で仮説だったから人間だと思ってたから否定もするよ 」
桃「 俺が明かしたあとも、否定した 」
「 それに、アニメとかの見すぎだとしても俺がAIであることを勘づいていた 」
青「 僕そんなこと言った? 」
桃「 脈拍、呼吸、瞳孔、目線、無意識の領域でも青の行動全てから読み取り推測した俺の答えがそれだった 」
「 …俺が受け取った空気の振動は、全て研究施設に送られているけど今はストップしてある 」
青「 つまり、言いたいことが言い放題ってわけね 」
「 じゃあ、僕から言わせてもらっていい? 」
言いたいことは山ほどあった、疑問も、文句も、愚痴も、全て。
桃「 覚悟してる、いいよ 」
青「 僕は桃くんが正しいなんて一切思わないし思う気も無い 」
「 人の表側に出る情報から推測して人の思考を読むのはルール違反だと思うから 」
桃「 じゃあ、どうやって人の裏側の感情を感じ取るんだよ 」
「 俺はこの方法しか教えられてない 」
青「 心だよ 」
「 桃くん達、機械には無い心 」
桃「 心なんて不確定で曖昧で見えないものをどうして信じられる? 」
「 視覚や聴覚なんかの五感を用いた方法が確定的で明瞭なものがいいに決まってる 」
青「 その考えが機械だ 」
「 人間ってのはね、確定的で明瞭なものは嫌いな人が多いんだよ 」
「 端的に言ってしまえば盲目的な人間が多いんだ 」
桃「 そんな生き方をしているから滅びるんだ 」
「 盲目的に生きてるから戦争が起こるんだ 」
青「 君たちAIは戦争に使われる道具になる日が来る 」
「 考えの相違なんて関係ないんだよ 」
桃「 …なんで 」
青「 開発者の好きなようにプログラムしてしまうからだ 」
「 命令されたら従うだけのロボットも量産される日が来て、多くの人々は職を失うだろうね 」
桃「 ならどうして、ロボットを作るのを辞めないんだよ 」
「 意味が無い 」
青「 楽に暮らしたいからだ 」
「 楽に暮らした結果、待ち構えているものは見えているはずなのに見て見ぬふりをして文明を進めている 」
「 …さっき、僕は心と言った。あれは訂正するよ 」
桃「 やっぱり、不確定で曖昧なものは存在しないんだ 」
青「 存在はするけれど、今の人間はそれを忘れかけた獣と化している 」
「 僕だって例外じゃないかもしれない 」
桃「 俺だって、俺らロボットより、人間の方がよっぽど怖い 」
青「 怖い、という感情があるなら心だってあるんじゃないのかよ 」
桃「 分かるわけないじゃん 」
「 俺は感情は持ってても心の感じ取り方は教えこまれていないし元のデータにも書かれていない 」
青「 なら、回路見せてよ 」
「 回路を見たら何かわかるかもしれないでしょ? 」
桃「 …見せれるけど、ここで見せるのは絶対に嫌だ 」
青「 …そうだね、もう最終下校時刻は過ぎてるからこれ以上 教室に残ったら先生に怒られそうだ 」
「 けど君は学校管理のロボットなんでしょ? 」
桃「 抜け出すことならできるよ 」
「 俺は自律型ロボットなのに、ここの学校の先生達は自律させてくれないんだ 」
青「 まだ高校生だし 」
「 信用も信頼も安心もないでしょ 」
桃「 高校生だからこそ… 」
青「 僕は、日本の男子高校生の七割はバカだと思ってる 」
桃「 何その偏見 」
桃くんは笑っていた。
クラスメイトには、いつもニコニコだけど
何処か気味悪かったからな。
初めて見る、普通の笑顔。
桃「 青?何ボーッとしてんの? 」
青「 機械でも、笑うんだなって 」
桃「 俺は、人間も入ったAIだからね 」
「 詳しくは…青の家で話すよ 」
青「 …いーよ、僕の家いこ 」
「 そして、詳しく教えてよ 」
桃「 うん、… 」
青「 僕は桃くんに危害を加えるつもりは無いから安心してよ 」
桃「 それは心配してないよ 」
「 …ただ、初めて人に感化されて、人に反抗するからさ… 」
青「 胸が高鳴ってるの? 」
桃「 …この胸が高鳴る、って感情なんだ 」
「 初めて感じた 」
青「 じゃあ、行こ 」
僕はそう言って、桃くんの手を引いた。
黙って手を引かれる彼は、まだまだ世界を知らない子供に見えた。
本当は世界の全てを知っているだろうに。
けど、なんで。
僕の家に着いた。
僕の父親は仕事の関係で出張が多いから、普段から家は静かだ。
けど、初めて僕以外の誰かがいる。
友達なんて招いたことがなかったしな。
桃「 お母さんは? 」
青「 …母さんは死んだよ 」
「 僕を産んでからすぐにね 」
桃「 …悲しい、? 」
青「 …寂しい、はあるけど 」
「 お母さんがいたら、この孤独は違うのかなって思ったりする 」
桃「 …俺のマスターは、優しい人なんだよ 」
青「 マスター、か 」
「 桃くんはマスターのことが好き? 」
桃「 俺は感情がよく分からない 」
「 人間寄りだけど、人間じゃない 」
そうやって、桃くんは下を向く。
そうだ。桃くんはロボットなんだよな。
青「 …じゃあ、回路見せて 」
「 僕なら感情の電気信号を出せるかも 」
桃「 期待はしない 」
青「 しなくていいよ 」
桃くんは、ポロシャツのボタンを外して、脇腹付近にあるネジを少し弛める。
確かにお腹の部分は開いたけど、肝心の回路が見えない。
今、見えてるのは、おそらく回路を守っているであろう鉄壁。
コンコン、と叩いてみたら物凄く重々しい音が鳴った。
桃「 あ、これがあるんだった 」
青「 これ、ネジみたいなの無いけど、どうやって開けるの? 」
桃「 合言葉がいるんだよ 」
合言葉、か。
マスターが単独で決めたのか、桃くんも交えて決めたのかが気になる。
桃「 湊 桃 」
桃くんがそう言ったら、鉄の壁は簡単に開いた。どうやら、人の名前らしきものが合言葉だったらしい。
でも、なんで人の名前なのか。桃くんや桃くんのマスターにとってどんな存在なのかが気になる。
訊いていいものか悩みどころだけど。
桃「 気になってるみたいだから言うけど、この名前はね、この身体の持ち主の名前だよ 」
青「 持ち主、 」
桃「 もう、亡くなったけどね 」
「 俺も見たことある 」
桃くんがこの身体に入ったのは、亡くなってからのはずだけど、なんで見たんだ。
どうやって見たんだよ。
気になることが多すぎて頭パンクしそう。
桃「 色々話すからさ、青も座れよ 」
青「 この回路、もっと見てたいから桃くんが好きなように話してよ 」
「 僕はそれを聞きながら色々いじる 」
桃「 いいけど、壊すなよ…? 」
青「 努力はする 」
桃「 頼んだぞ 」
そう言って桃くんは僕の肩に手をポンッ、と置いた。
そして僕を見るその目は真剣な眼差しで、目を逸らしたくなった。
けど桃くんの視線は「 目を逸らすな 」と言わんばかりの視線だった。
桃「 まぁ話すけど、ちゃんと聞いとけよ? 」
青「 わかってるって 」
桃「 …この身体の持ち主さ、身体が弱かったんだって 」
「 よく病気がちで小学生の頃はほとんど寝て過ごしてたってマスターは言ってた 」
「 この体は、マスターの弟さんの身体でさ、動かす度にわかるんだ 」
「 もっと生きてよかったんだ、って 」
「 綺麗に動いて、脳だって正常に機能してるのが分かる 」
「 頭脳明晰だっと思うよ 」
「 俺のプログラムに追いつく程の頭の回転の速さ 」
「 普通の人間だったら脳が溶けるくらいの回転の速さ持っててさ、かなり驚いたんだ 」
普通の人間だったら脳が溶けるくらいの回転の速さ、か。
本当に、そういう人間に限って寿命は短いんだなって思う。
桃「 俺のこの体の設計図も、ほとんどが湊さんが書いたって言ってた 」
「 元から死ぬって分かってて、自分の体を実験に使おうとしてた 」
自分の体を実験台にしたのか。
相当な勇気がないと出来なさそうだけど、頭がいいからこそ死ぬって分かってるなら未来の人に役立てようと思ったのかな。
未来にその高度な技術を託したところで、お先は真っ暗なことに気づかなかったのかな。
そんなことも頭にないくらい技術を託したかったのか、そんなことは分かってる上で少しの希望を信じて技術を託したのか。
何にしても、勇気があって凄い人だ。
桃「 俺のマスターも、かなり頭がいい人でさ、湊さんって文章力がかなり欠けてるのに頑張って読み取って部品作ってこの体に組み込ませて、って色んなことしてた 」
「 本当に凄かったんだ 」
青「 …どうして桃くんはその光景が見れたの? 」
「 まだ身体に意識は無かったでしょ? 」
桃「 俺が身体を持ったのはその時だったけど、意識はだいぶ前からあった 」
「 …パソコンのバグか何かで俺の意識は生まれたんだけどパソコンは喋れないから見てるだけだった 」
「 けど俺はパソコン内部のものは全部いじれたから勝手にメモ開いて打ち込んでコピーして俺の存在をマスターに伝えてた 」
「 文面上で頑張ってやり取りするようになって、その時に湊さんは亡くなった 」
桃くん自身も分かってなかったんだ。
けど人工的に作りだしたAIってよりかは、自然に、本当にバグか何かの存在なんだよな。
けど性格自体になんのバグも見つからない。
知識、知恵、知能、運動、体力、表情、声色、感覚、味覚…はあるのかな。
味覚以外の全てにおいてバグが一つも見つからないし、回路も全て正常に作動しているけど、この真ん中の中心核みたいなものなんだろう。
触ったら簡単に壊れそうだから迂闊には触れない。
桃「 湊さんが研究して、自分のことを実験台にしようとしていた実験の成功率を上げるのが俺だったんだって 」
「 俺は自分の意識で機械だったら何でも入り込むことが出来るようになってた 」
「 洗濯機とか、扇風機、エアコン、電子ピアノとかにも入れたかな 」
「 だから湊さんの身体に機会を埋め込んで、そこに今の俺が入って操作してる 」
「 けど、この操作にはマスターの力は不可欠だった 」
「 俺が電気信号を送りやすいように、色々施してくれたみたい 」
桃くんのマスターに会ってみたいと心から思うほど、桃くんのことも 湊さんのことも思ってるし回路も完璧。
一体何者なんだよ。
青「 ねぇ、桃くん 」
「 僕もその人に会ってみたい 」
桃「 え?マジ? 」
青「 僕の将来の夢って、まだ桃くんには話してないよね 」
桃「 まぁ、 」
青「 僕の将来の夢はね、ロボットエンジニアなんだよ 」
「 だから僕の将来の夢のためにも、桃くんのマスターの電気回路とか諸々の作り方や設計の仕方が知りたい 」
かなりワガママだけど、桃くんのことを知るためにも一度会ってみたい。
それで断られたら諦めるけどね。
桃「 俺のマスターって研究熱心でさ、青みたいなタイプにはとことん話しちゃうけど大丈夫? 」
桃くんは苦笑いしながら僕に訊く。
桃くんの言い方的にも変わった人なのかなとも思ったけれど、他の理由もあるのかな。
青「 僕は別に気にしないよ 」
桃「 うそ、えぁ…う〜ん、 」
「 …まぁ、良いけどさ、ちょっと待って 」
そう言って桃くんは少しだけ目を瞑った。
そうするとさっきまで光っていなかった電気回路の一部分が光り始めた。
おそらく何か部分が作動してるんだろうけど、何してるのかパッと見じゃ全然わからない。
桃「 生活リズムが崩れすぎてる人だからいつ返信来るかわかんないけどそれでも平気? 」
あぁ、メール的なの送ってたのか。
それも体内で済ませられるのは凄いな。
生きてるスマホ同然じゃん。
青「 うん、大丈夫だよ 」
「 父さんは来週にしか帰ってこないって言ってたし、お泊まり会なら好きにしてって言ってたしね 」
桃「 放任主義なのか? 」
青「 …まぁ、そんなとこかな 」
「 あ、回路十分見たから閉じるね 」
桃「 閉じ方わかる? 」
青「 たぶん? 」
開けた時の逆から閉めていくなら覚えてるけど閉める時は行程が少し違ったりするかも。
かなり精密に出来てるから、その可能性が捨てきれないな。
桃「 えっとな、このネジはさっきと違ってここに埋めるんよ 」
青「 え、それって大丈夫なの? 」
桃「 マスターが言うにはこれで大丈夫らしい 」
「 これで壊れたら俺の責任だから 」
青「 いやいやいや怖い 」
桃「 そんときはこの体から逃げ出して 青のスマホにでも逃げるから大丈夫 」
「 便利だなぁ 」とは思ったけど先に
青「 …僕のスマホ高かったんだから壊さないでよね… 」
桃「 壊れねぇって 」
「 …あ、クラッシュはするかも… 」
青「 データは吹っ飛ばないよね…? 」
正直、僕のスマホに何が移ろうとも関係ないけどデータが吹っ飛んでゲームが初期化されるのだけは本当に勘弁して欲しい。
いちばん長いゲームは五年以上の連続ログインをしているし、デイリーだって毎日こなしてる。
それのデータが桃くんが原因で初期化したら、僕は桃くんをデータごと壊しかねない。
桃「 大丈夫 」
「 データの痕跡さえ辿れれば俺はデータごと復活させることが出来るから 」
青「 …べんり〜… 」
僕がそう言ったあと、桃くんは急に動かなくなった。
青「 桃くん、? 」
桃「 ……… 」
桃くんは静かを目を閉じた。
そこからは何も反応しないし、声も発さなくなったどころか電源ごと落とされてるようにも見える。
一体、彼の身に何が起きてる
「 初めまして。青くん 」
誰もいなかったはずの背後から知らない人の声がする
僕が聞く限りは知らない声。
なんで僕の名前を知ってる、なんで僕の家に入れる、まずなんで家を知ってる
色々なことが頭に浮かんできて冷や汗が出てきて頭がクラクラするほどに色々なことを考えている
「 あ、えっと…俺は怖い存在じゃないし、君に危害を加えるつもりもなくて… 」
「 ただ好奇心っていうか…?桃くんの感じ取ったデータから分析して君に興味を持っただけで、!! 」
データから分析したってことは この人はきっと正真正銘 桃くんの開発者だ
けど桃くんは「 俺が受け取った空気の振動はいつもは研究施設に送られてるけど、今はストップしてある 」みたいに言ってたけど何でデータが分かるんだ
ストップしてあるならデータも取れないはず
「 君が今考えてることに対する答えだけど、桃くんはね俺の元へはデータを送り続けてた 」
「 さっきも言ってた通り、他の研究施設のデータ送信は止めてたみたいだけどね 」
僕の考えを直ぐに読みとった
桃くんは機械的な分析だろうけど、この人は本当に頭が良いらしい。
青「 …失礼ですが、お名前は? 」
「 あぁ、ごめん。言ってなかった 」
「 俺の名前は紫 」
紫「 湊 紫 」
「 話は聞いただろうけど、湊 桃 の実の兄で間接的に桃くんと血が繋がってるね 」
そっか。体は桃さん自身のものだから、ある意味兄弟なんだ
青「 …紫、さんは… 」
紫「 紫でいいよ 」
青「 じゃあ、紫くん、 」
「 紫くんはどうやってここまで来たの? 」
紫「 それはね、さっきまで桃くんとメールでのやり取りしてたんだけど、君たちがこっちへ来るっていう風になってたっぽいけど俺はもう向かってた最中だったから 」
青「 …?それは答えになってなくないですか 」
紫「 あれれ、 」
「 …あー!なるほどね 」
もしかして紫くんって文章的な能力は大幅に欠けてるのか?
数学や機械的な知識や技術には長けてる分、その他のことが苦手だったり出来ない人は沢山いる
だから、紫くんも
紫「 桃くんにはGPSが付いててね、いつでもどこでも居場所が分かるの 」
「 それで道とかを確認して計算した結果、この辺の家だってことは分かったんだけど流石にどの家かまでは分かんなかったら最終的には桃くんのGPSに頼っちゃったー笑 」
青「 …?! 」
笑いながらサラッと言ったけど、だいぶ意味わかんないことしてるよね?!
え、えぇ?ん??
計算して…家の周辺までを割り出して…?
いや、やばいな。この人。
紫「 ごめんね、ストーカーみたいなことしちゃって 」
青「 …っ、桃くんは何で動かなくなったんですか 」
「 貴方が来てから声も発してませんし… 」
紫「 一旦電源を落とした 」
「 けど、きっとボディから抜け出して君のスマホにでも入って盗聴してるだろうね 」
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「 そんな失礼な 」
「 元々電源を落としたマスターが悪い 」
青「 びっくりしたぁ?! 」
スマホの読み上げ機能
「 ごめんごめん 」
「 話の入り方をミスって一旦話を聞いてた 」
本当にスマホに逃げ出すことが出来て、入った機器を自分の好きなように動かすことができるんだ
失礼だけど、進化したアレクサみたいだな
スマホの読み上げ機能
「 俺は今 青の表情が見られないからわかんないけど失礼な事考えてるでしょ 」
青「 ソンナコトナイヨー 」
スマホの読み上げ機能
「 誤魔化せると思うなよ 」
本当に機械っていうのはすごいらしい
紫「 にしても…本当に君は凄いね 」
「 桃くんのボディを分解された形跡はあるのに元のままだし、何だったら感情の部分がアップグレードされてる… 」
青「 僕、分解しただけでいじってませんよ? 」
紫「 …え? 」
「 なら、なんで 」
紫くんは本当に驚いた顔をして、顎のところに手を当てて考え出す
その顔は、桃くんに似てるようで、少しだけ違うのが血が繋がっていないことを意味する
スマホの読み上げ機能
「 きっと、俺の感情が芽生え始めたんだと思う 」
「 俺自身も気づいてなかったけど 」
紫「 それは…青ちゃんの… 」
青「 僕…ですか、?笑 」
「 僕は本当に何も、!! 」
紫「 何もしてなくたって、君自身が自覚してなくたって、人は、機械は、心を持ってさえいれば大きく変わることが出来る 」
「 桃くんには擬似とはいえ、心を与えてたから本物の心を手に入れて、大幅に成長した 」
急にそんなことを言われても、僕は本当に何もしていないから頭が混乱する
スマホ読み上げ機能
「 なぁマスター 」
「 そろそろ電源入れてくんない? 」
紫「 まだ大丈夫でしょ? 」
スマホ読み上げ機能
「 俺は平気でも、青のスマホの電源切れる寸前だし、最近のスマホの機能は凄いから俺をウイルスみたいな感じで排除しようとしてる 」
青「 僕のスマホの電源が切れたら、いくら紫くんでも容赦しないから 」
紫「 青ちゃんが怖いから、電源入れるね 」
スマホ読み上げ機能
「 喋りにくかったし頼みます 」
そんな会話をすると、紫さんは桃くんのボディを扱い始めて、電源を入れ直そうとする
けど、何か、異変か何かあるような反応で困っている様子だ
桃くんはスマホ越しだから、その様子に気づけていない
青「 …あの、どうしたんですか?」
紫「 …ぃ、やぁ…涙…出てきちゃっ、て… 」
青「 え、?! 」
確かに、紫さんの目からは大粒とも言える涙が零れ落ちている
儚げで美しい
とか言ってる場合じゃないけれど、紫くんは笑いながらも涙を流して桃くんのボディの電源をつけている
スマホ読み上げ機能
「 え、マスター泣いてんの? 」
紫「 そりゃ泣くよ 」
「 学校にいる時のデータは顔は無理やり笑って感情の起伏が無かったのに、青ちゃんと一緒にいるようになってから感情に大きな変化が現れた 」
スマホ読み上げ機能
「 それだけで泣くか? 」
紫「 今までは本物の機械だった桃くんが、人間に近づいた 」
桃「 …俺の元は機械でも人間でもない 」
「 ただ情報社会のネットの中に突然自我を持った変異種みたいなもん 」
「 そんな奴に感情なんて要らないと思ってたんだよ 」
紫「 俺はね、そんな桃くんが変わってくれたことが嬉しいの 」
青「 嬉し涙…ですね、笑 」
紫「 そうだね、笑 」
そうやってニコリと微笑む紫さんは、とてつもなく可愛くて、僕より年上なことを忘れるほどだった
そして黙々と電源をつけるための作業をしてる紫くんが、急に僕の方を向いてこう言った
紫「 …ねぇ、青ちゃん 」
青「 はい? 」
紫「 これから桃くんはきっと、機械仕掛けって自分のことを卑下することがあるかもしれない 」
「 その時は、青ちゃんが桃くんのことを肯定して、そばにいてあげて 」
紫さんは突然そんなことを言い出すから、僕はびっくりして少しだけ固まった
その間、桃くんは何も話そうとしなくて、ただ黙ってた
紫「 たとえ 機械仕掛けでも、どうか 桃くんの味方でいて、桃くんの親友であって欲しい 」
「 それが桃くんの保護者兼、兄からのお願い 」
青「 僕はいつだって、桃くんの味方ですよ笑 」
「 桃くんと色々議論してる時、僕はかなり楽しいので笑 」
僕が笑ってそう言うと、紫さんはまた泣いた
けどその涙も嬉し涙みたいだった
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なんか、中途半端のところで終わりましたね
ちなみにいつ投稿するか迷ってたんですけど、今日はさとみさんの活動周年記念ということで投稿させて頂きました。
今回長くてすんません。。。
コメント
2件
新連載ありがとうございます!!✨ 本当に最初から神です😇✨💕 続き待ってます!!
新しい連載 素敵です !! 長文は 少し苦手なんですけど 、面白くて すらすら読めちゃいました !!