キンッ!
雷蔵の首を狙って振り落とされた苦無に別の苦無が当たった。
「‥‥‥何ですか?木下先生。」
八左ヱ門が、間に割って入ってきた木下を睨む。
「‥‥八左ヱ門。お前の言っていることは十分に理解できる。だが、授業で死人を出すわけにはいかない。」
木下が八左ヱ門を睨みつけると、八左ヱ門は木下の苦無を弾き、自分の苦無をしまった。
「‥‥‥だったらきちんとこいつらに言っといてくださね。でないと早死しますよ。‥‥‥じゃぁ俺はこれで失礼しますね。」
不愉快な顔を隠すことなく言った八左ヱ門は、にっこりと普段と変わらない笑顔になって去っていった。
「‥‥‥今日の授業はここまでだ。長屋へ帰れ。」
八左ヱ門が去っていくのを呆然と見ていると、木下先生はため息を付いて苦無をしまった。
「‥‥はい、」
三郎達の四人は何も言うことなく、長屋へと帰っていった。
ドサッ
「くそっ!」
借りている部屋に戻った八左ヱ門は壁によりかかり顔を覆う。
「感情的になりすぎた‥‥。いつもならあんなこと言わないのに、」
そう、いつもならあんなことにはならなかった。感情を殺すのが忍びだというのに。
やはり久しぶりの学園に気が緩んでいるのだろう。
「しっかりしろ俺。ちゃんと5年ろ組の竹谷八左ヱ門を演じろ。全てが終わるまで、演じ続けろ。」
自分にそう言い聞かせていると、天井から一つの影が落ちてきた。
「‥‥‥何か御用ですか。」
先程とは明らかに違う雰囲気になった八左ヱ門に、影は足音をたてることなく近づいた。
「報告をね。‥‥準備は整ったよ。いつでも行ける。」
その言葉に、八左ヱ門は好奇な目をして笑った。
「分かりました。4日後、決行します。」
「了解したよ。4日後、また会おう。」
天井に消えていく影を見送った八左ヱ門は、扉を開けて野獣のような目で夕日を見つめた。
「三郎、雷蔵、勘右衛門、兵助、やっとお前らの敵がとれるぞ。」
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