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俺は思わず緑君の方を振り返る。 彼は俺の呟きを聞いていたようで、俺と同じように目を見開いてこちらを見つめていた。しかしすぐに冷静になった緑君は、一度床から立ち上がり俺の方へと寄ってくる。
md「ソレ、ヨクミセテ」
俺はその資料を緑君に手渡す。緑君はそれをじっくりと見たのち、ある箇所を指さして「コレ」と言いながら俺を見る。
そこにはその資料が作成された年月が書かれていて、それは今から数えると20年近くも前のものだった。はっきりとは覚えていないが、お父さんが行方不明になったのもこのくらいだった気がする。
そう考えていたとき、スマホのバイプ音が鳴った。取り出して見てみると、それは目の前にいるはずの緑君からのメッセージだった。
md『ぺんさんのお母さんに話が聞かれないようにこっちで話そう。それに、こっちの方が慣れてるから』
俺はそれに対し「了解しました」とメッセージを返そうとしたが、その文字を打つより先に、緑君からのメッセージが滝の如く流れてくる。流石は国のコンピュータ技術担当、おそろしくタイピングが速い。
md『この資料が20年前のものってことは、俺達が十歳近くの頃にはすでに国の幹部になる運命が決まっていた可能性が高い』
md『ちなみにらだおとクロノアさんが施設を逃げ出したのは、この資料の一ヶ月前くらいだと思う。Project:Blueのサイトの更新日がそれくらいだったから』
md『まとめると、らだおとクロノアさんの二人がブルーデーモンの実験を受けて、それを哀れんだぺいんとさんのお父さんが二人を逃がした。』
md『お父さんは研究員に捕まったけど二人は逃走に成功。でもそのあとすぐに研究所がクロノアさんとらだおの居場所を特定して、その二人と俺達、カラーデーモンに適合する可能性の高い者が国の幹部という監視下に置かれた……こんな感じかな』
俺はそのメッセージを読んで、同意を示すため緑君の目を見て頷いた。その反応を見た緑君は、またなにかをスマホに打ち込みはじめた 。
それはすぐに俺の元へ送られてきた。そこにはさきほどまでのメッセージより比較的短い文で、
md『なんでぺいんとさんの名前がないんだろう』
と書かれていた。
その質問に対し、俺は返事を返すことができなかった。どうして俺の名前がないのか。確かにおかしな話だ。名前がないということはカラーデーモンの実験体では無いとも考えられるが、しかしそんなやつを国の幹部にするか? 実験に関係のない者を置いておくなんて不自然だし、国ごと監視対象に入っているなら俺を幹部から外すことなんて容易いはずだ。じゃあ、どうして?
俺が悩んでいることを察したのか、緑君から新たなメッセージが届く。
md『他の資料も探そう、考えるのはそれから』
その文を読んで、俺はまた緑君の目を見て頷いた。
しばらく二人で部屋を漁ったのち、俺らは一度お父さんのデスクへと集まった。互いに見つけ出した資料を見せ合うが、さほど量はない。
md『カラーデーモンに関係のない資料もたくさんあって、これだけしか集められなかった』
pe『俺もです』
とりあえず内容を確認しようと、俺らは互いに持ってきた資料を交換する。
まず、俺の見つけた資料二つ。
一つ目は、20年前にカラーデーモンという地球外生命体、そしてカラーデーモンの種類についてまとめられた資料だ。
《”カラーデーモン” XXXX年X月X日XX:XXに地球に飛来したレッドデーモン(以下、01Rと記す)と、地球で01Rが増殖させた眷属達の総称。カラーデーモンと人間はDNAの観点で見るとほぼ同一の存在と言えるが、唯一異なるのは「脳」の構造だ。カラーデーモンの脳は人間よりも知識や能力・技能が発展しやすく、それにより彼らは体の細胞を自在に動かし肥大化させることができたり、「記憶」にまつわる特殊な能力を扱うことができる。逆に地球の人間の脳はカラーデーモンよりも感情が発展しやすいとされており、その違いに目をつけた01Rは、人間の感情とカラーデーモンの能力を融合させた新たな存在を作ることができれば、人類もカラーデーモンもより進化を遂げられると判断し地球に飛来したとされる。現在人間との融合により五種類のカラーデーモンが生み出されている。それぞれ血の色や能力によって種を分類している。》
《”レッドデーモン®“ 記憶を【創造】する力を持つ。純カラーデーモン。人間からこれに変異することは現時点では不可能。食人衝動がある。》
《”ブルーデーモン(B)“ 記憶を【消去】する力を持つ。カラーデーモンと人間の融合体(カラーデーモンの遺伝子の影響が強い)。人間がレッドデーモンまたはブルーデーモンの血を自ら受け入れて飲むことで変異して生まれる。体の肥大化が可能。食人衝動がある。》
《”イエローデーモン(Y)“ 能力不明。カラーデーモンと人間の融合体(カラーデーモンの遺伝子の影響が強い)。人間がレッドデーモンまたはイエローデーモンの血を飲んだと認識せずに飲むことで変異して生まれる。体の肥大化や食人衝動などの情報は無し。 》
《”パープルデーモン(P)“ 能力不明。カラーデーモンと人間の融合体(人間の遺伝子の影響が強い)。レッドデーモンまたはブルーデーモンの血を受け入れずに飲むことで変異して生まれる。体の肥大化や食人衝動などの情報は無し。 》
《”デミカラーデーモン(D)“ 能力無し。それぞれのカラーデーモンの遺伝子を人為的に人間に取り込ませることによって生まれる。純人間だが、通常の人間よりもおよそ十倍ほどの高い身体能力得る。食人衝動はない。》
《また人間からカラーデーモンに変異した場合、その能力を覚醒させるには特定の合言葉を本人が発声する必要がある。その合言葉はそれぞれによって異なるが、その者の記憶の中で一番印象に残っている言葉が合言葉となる場合が多い。能力が覚醒しない限り、血の色が変化することも、体を肥大化させることも、記憶にまつわる能力を使用することも、食人衝動が起こることもないとされている。》
とのことだ。しかし難しすぎて、俺には深く理解できない。
まずカラーデーモンという存在がいて、そいつらの中には記憶にまつわる能力を使い、体を肥大化させ、人を食べるやつもいる。
そして、人間からカラーデーモンに変異するには合言葉を発声する必要がある。
……的なところだけでも覚えておけばいいだろう。
二つ目は、らっだぁが着用していたニット帽とマフラーについてまとめられた資料。
簡潔に言うと、どうやらあのマフラーとニット帽には着用したカラーデーモンの食人衝動を抑える効果があるらしいのだ。しかしまだ開発段階で抑制効果は長く続かず、実用には到底及ばないと書かれている。その代物がこの部屋に沢山散らばっているということは、俺のお父さんはこれの完成を目指していくつものマフラーとニット帽を作っていたのかもしれない。
しかし、なぜそれをらっだぁが持っていたのだろう。クロノアさんの話の中に、お父さんがらっだぁにニット帽とマフラーを渡していた、なんて話は無かったはずだ。それに二人と別れたあとのお父さんは研究所に捕らえられたから、その後でらっだぁに渡すことはできないはず。いったいいつ、この二つを手に入れるタイミングがあったのだろうか。
そして俺は緑君が持ってきた資料にも目を通す。
その表紙には「Project:Color」と記されていた。一ページを開けると、そこにはそのプロジェクトについてとその実験体についてまとめられていた。
《Project:Color カラーデーモンを調査するプロジェクトの総称。Project:Red、Project:Blueなど、カラーデーモンの種類によって複数のプロジェクトに分け調査を進めている。》
《一番(01R) レッドデーモン。XXXX年X月X日XX:XXに地球へ飛来。現在地球にいる全てのカラーデーモンの始祖。覚醒済。》
《二番(02Y) イエローデーモン。純人間の子供(-)へ胎内にいる頃から01Rの血を投与し変異。覚醒未。 》
《三番(03B) ブルーデーモン。実験に自ら応じた純人間の子供(16)へ01Rの血を投与し変異。覚醒済。》
《四番(04B) ブルーデーモン。変異を受け入れた純人間の子供(13)へ03Bの血を投与し変異。覚醒未。》
《五番(05P) パープルデーモン。変異を受け入れなかった純人間の子供(11)へ03Bの血を投与し変異。覚醒未。》
その資料を見たとき、俺の頭にある最悪の考えがよぎった。
クロノアさんは幼い頃、”五番”と呼ばれていたらしい。そして、三番の血を”拒否して” 飲まされたと言っていた。その過去が全て、この資料の05Pと書かれた実験体と一致する。
つまり、クロノアさんは……
md『その資料、読んだ?』
緑君からメッセージが届いた。俺が見終えたと合図を送ると、もう一つ、通知が送られてきた。
md『もしかしたらクロノアさんは、ブルーデーモンじゃなくて、パープルデーモンなのかもしれない。』
俺はその緑君の文に対し、慌てて否定のメッセージを送ろうとする。
違う、そんなはずは無い。だってクロノアさんが人を食べるところなんて見たことがないし、能力だって知らないし、それに……
md『もしクロノアさんがパープルデーモンで、今日あの夕食時に、青い血やブルーデーモンが合言葉で変異したとしたら?』
md『その変異によって、パープルデーモンとしての能力が目覚めたとしたら?』
md『そして……そのパープルデーモンの能力が、記憶を復【復元】するとかだったとしたら。』
md『クロノアさんがいきなり記憶を取り戻したのにも、説明がつく。』
そこでメッセージを書き終えた俺は、緑君にそれを送る。
pe『クロノアさんは人間ですよ。だって、ここに来る前に見たクロノアさんの血は赤かったから。』
しかしその否定を予測していたかのように、緑君は文字を打ち続ける。
md『これは仮説だけど……人間がカラーデーモンに変異するとき、能力の発現よりも血の色の変化や食人衝動の発現の方が時間がかかるんじゃないかな。』
その文を見て、俺はあることを思い出した。
クロノアさんは言っていた。らっだぁとクロノアさんの二人は、”施設を出てから暗くなるまで”山で彷徨っていたと。そしてその後に、らっだぁが食人衝動にかられて、クロノアさんは記憶を消されたと。
施設からの脱出を試みている最中、三番とらっだぁが「血を受け入れて飲んだら”仲間”だ」と話していたらしい。そこにクロノアさん達が駆けつけて、らっだぁに声をかけるとハッと我に返り、”なんで三番と一緒にいるのか”というようなことを言ったらしい。
pe『らっだぁもです。らっだぁも能力が先に発現して、そのあとに食人衝動に襲われた。』
俺の中で、全てのつじつまが合った。
らっだぁは三番の血を飲むときに聞いた「仲間」という単語が記憶に残り、それが変異の合言葉となり、三番との会話の中でそれを口にしたことによってブルーデーモンとして覚醒した。
覚醒した瞬間に能力が目覚めて、三番と会話した記憶を無意識に【消去】したことにより我に返った。そして施設から出て数時間経ってから血の変化と食人衝動が起こりはじめて、完全に変異したのちにクロノアさんの記憶を消したのだ。
しかし、そこで俺にある不安がよぎる。
緑君も同じことを考えたのだろう。俺の元に、緑君からの一つのメッセージが届く。
md『クロノアさんがもし、カラーデーモンとして覚醒していたとしたら。』
md『もうあれから何時間も経過してる。そろそろ変異が完了して、食人衝動にかられてもおかしくはない。』
そのときだった。
俺の携帯の画面がいきなり黒く暗転した。いや、違う。誰かが電話をかけてきて、画面が通話に切り替わったのだ。
俺の手の中で携帯がバイプを鳴らしている。その発信者を見て、俺は言葉を失った。
md「……ダレカラ?」
pe「……しにがみ、からです。」
俺の勘が、今から最悪のことが起こると予測した。
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赤.黄.青.青.紫 赤(一番)が始祖 黄(ニ番)が不明 青(三番)が言葉を繰り返す子。凄い幼いのか 青(四番)がラで三番の血を受け入れた方 紫(五番)がノアで三番の血を受け入れなかった方 ほんで推測でも予想でもわからない存在が赤と黄.デミカラー なーんだ誰だ。そして黄が怖い。自覚してないんだろ。怖っっっ。