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「君の彼氏になりたい」
🖤×🤍
🖤視点
互いに忙しい日々が続き、会えない時間はそれに比例して増えていった。
どんなに寄り添った時間を過ごしたって、離れると途端に寂しくなる。
今日は家に来てくれないかな、と淡い期待をしてスマホを開く。
すると、今想っていた人から連絡が入っていた。ソファーに寝転んでいた俺は、すぐさま飛び起きる。
🤍「今から家行っていい?」
時計を見ると、8時になったところだった。
🖤「いいよ。鍵開けてあるから入って」
俺は返信してからすぐに部屋の掃除を始めた。
時計の針が9時を回った頃、インターホンが来客を告げた。
俺が玄関に顔を出すと、案の定ラウールがいた。
🖤入っていいって言ったのに。
🤍あれ、ほんと?ライン見てなかったかな。
🖤ん、仕事だったんだろ?お疲れ。
🤍ありがと!
🖤どうぞ、上がって。
🤍わー!めめん家ひさしぶり~!
見覚えのない、高級ブランドの靴を履いているのが目に止まったが、敢えて気にしないふりをしてキッチンに立つ。
ラウールの無邪気で純粋な笑顔は、初めて会ったときから変わらない。そんな姿に、俺は相変わらず「可愛い」と思ってしまう。
これは恋愛においての「好き」なんだとは思うけど、自分から「大好き」だなんて言えるわけがない。
今のこの関係を壊してしまうのが怖いから。
🤍めめ、何作ってんの?
考え事をしながら、作りかけだった夜食を作っていたら、ラウールが横から顔を出した。
🖤シチュー。最近寒いからさ。
🤍え!俺のためだったりする?
🖤もちろん。食べないならそれでもいいけど。
🤍いや食べるよ!お腹すいてるもん!
めめのご飯もひさしぶり~とか言ってはしゃいでいるラウールを見ていたら、思わず笑みが零れた。
白ワインがほのかに香るシチューを煮ていると、ラウールがソファーでスマホを弄りだした。
時折にやついたり、嬉しそうに目を細めたりしている。
少しだけ心が曇ったような感覚になった。
それらは見て見ぬふりをして時計を見る。もう10時だ。
ラウールは頻繁に俺の家に居座るが、必ず夜の12時を過ぎる前には帰ってしまう。
理由は話してくれない。
だから今日は、あと2時間っていったところか。
シチューが出来たので、盛り付けてテーブルに持っていくと、規則正しい息づかいが聞こえた。
どうやらラウールは寝てしまったようだ。
ブランケットを掛けてやり、独りでシチューを食べ始めた。
時間は十分にかけたつもりだが、味はあまり感じない。
時計の針の音と寝息が、等間隔で俺の耳に届く。その音をぼんやりと聞いているだけで、時間は刻々と過ぎていった。
ふと時計を見ると、11時を過ぎたところだった。
ラウールをそろそろ家に帰そうとソファーの前にしゃがむ。艶やかな黒髪にそっと触れると、長い睫毛が少し動いた。
一緒にいる時間が長くなると、この手も髪も、そして笑顔も。
全部がたまに、自分の物のように思えてしまう。
きっとこれは錯覚でしかないだろうけど、この気持ちは嘘ではない。
さらり、と髪に触れる音がまた静かに響くと、ラウールの目が微かに開いた。
🤍ん、あれ、めめ。俺ねてた?
🖤疲れてたんだろ。今日はもう帰んな。
🤍んー。もうちょい寝たい…
🖤だめ。風邪ひくぞ。
🤍やだぁ…
ソファーからはみ出るほど成長したラウールは、自分ひとりでは到底運べそうにない。
仕方ない、もう少し寝かせてやるか。
🤍やっぱおきる。
🖤シチューあるけど食べる?
🤍んー。ごめんだけど今日はいいかな。
🖤わかった。
結局、ラウールはそのまま帰る支度をしてしまった。支度といっても上着を着て、靴下を履くだけだが。
🤍今日は、ありがとね。
🖤何もしてないって。笑
🤍んーん。急に来たのに入れてくれたからさ。今度は、ゲームでもしよ。
🖤いいね。待ってる。
🤍連絡するね。またね!
🖤うん。明日も来ていいよ
最後の言葉は、多分ドアが閉まって届かなかった。
いつもこうだ。
この気持ちも、ずっと一方通行な気がして、虚しくなる。
期待を寄せたって、結局は消えちゃう。
🖤やっぱ、無理だな
冗談でも「大好き」だなんて言えないや。
苦々しく笑った俺の独り言も、虚空に消えていった。
ちょうど、時計の針が11時半を指したところだった。
君の彼氏になりたい・完
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コメント
2件

もう、最高過ぎます!!!!!自分、この曲大好きなんですよっ!!!ありがとうございます…(>ω<)