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私はホームレスです。

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私はホームレスです。

1 - ひとめぼれ あなたしかいない

♥

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2025年02月08日

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私はいわゆるホームレスです。

父は4年前に借金を残して女の人と夜逃げしました。

母は2年前に家を解約して、お酒とお薬に溺れました。

私はまだ義務教育をうける年齢です。

みんなが社会で生きる術を学ぶため教室で授業をうけているとき、私は橋の下でダンボールにくるまっていつ死んでしまうかを考えなければなりません。

明日のご飯すらないのです。

2年間、ずっと生きている心地がありません。

たまに通りすがりにお金をくれる人がいます。

でもお隣に住んでるおじいちゃんに全部とられます。

おじいちゃんが暖かいコーヒーを飲むとき、私は泥水を啜ります。

コーヒーは飲んだことがないけど、色は同じだから泥水で充分です。

暖かいって感覚も忘れちゃいました。

でも少し覚えてます。

父の手は大きくて暖かくてなんだか嬉しくなります。

母の手は、痛いです。

母の怨念は私の体にたくさんあります。

父への恨みと悲しみの手です。

でも私は父を許します。

好きな人が出来たならしょうがないと思います。

私は好きな人が出来たことがないのでわからないですけどね。

夜は寒いです。

早く寝て眩しい朝日で起きます。

規則正しく生活します。

神様が見ているのでお利口にします。

母は少しここで待っててね、と言いました。

なので私は待ってます。

きっとお利口に待ってたら母はすぐお迎えに来てくれます。





今日も橋の下にいます。

もう当分歩けていません。

1年くらい前にここで寝ていたら自転車に足を引かれてそのままです。

まだ痛くてたまに泣いちゃいます。

でも水分がもったいないのでがんばって耐えます。





今日も橋の下で過ごしてます。

お隣のおじいちゃん、いつもは咳をして唸っているのに今日は静かです。

いつもは鼻歌を歌うと怒られますが今日は怒られませんでした。

久しぶりに歌えて嬉しかったです。


警察がきました。

おじいちゃん、死んでたらしいです。

病気にかかってたそうです。

ここでは死ぬのは普通です。

しょうがないんです。

生きる気力を失ったらそのまま死んじゃいます。

私は死にません、死んじゃったら母は天国までお迎えにこないといけなくなるからです。

母は疲れているのでそんな遠いところまでお迎えにきてもらうのはかわいそうです。

なので死にません。





今日も橋の下です。

お金をとられなくなったので少し貯まりました。

261円もあります。

でもなにが買えるのか分からないです。

だからもう少し貯めて母のためになにか買います。





今日も橋の下で凍えてます。

今日は気温が2℃らしいです。

サラリーマンさんが言ってました。

いつもよりダンボールを多くして少し暖かくします。

今日はお金じゃなくてお花を置いてくれる人がいました。

綺麗なバラです。

1本なので大切にします。

お友達が出来たみたいで少し嬉しいです。





今日も橋の下です。

でも今日は寂しくありません。

バラがいるのでお話が出来ます。

今日はバラを3本ももらえました。

たぶん同じ人です。

ダンボールから出れないので顔を見れないのが悲しいです。

すぐどこかに行ってしまうのでお礼も言えません。

次は絶対言います。




今日も橋の下です。

通る人のお話を聞くのは楽しいです。

近くに新しいお店が出来たお話とか、結婚したとか、嬉しいお話が多いです。

嬉しいお話をきくのは大好きです。

私も嬉しくなります。

今日もあの人が来てくれました。

今日は茶色のバラがもらえました。

お礼をちゃんと言えました。

でもあの人は何も言わずに行っちゃいました。

久しぶりに人に話しかけました。

なにか変だから逃げちゃったのでしょうか。

悪いことをしました。

バラはもうもらえないかもしれないです。

茶色のバラは初めて見たので大切にしたいです。





今日も橋の下です。

今日はいつもより早くあの人が来てくれました。

いつもよりかっこいい服を着てます。

今日はバラをたくさんもらえました。

108本あるそうです。

あの人がたくさんお話をしてくれました。

どうやら私のことが好きなんだそうです。

私は好きがわかりません。

でもこの人は大切な人です。

優しい人なので大切です。

でもあの人は少し待っててね、と言ってどこかに行きました。

また待たないといけません。

あの人は何年後にお迎えに来てくれるのでしょうか。

もう待つのは懲り懲りです。

母が戻ったらハグをして少し怒ることにしました。

娘を寂しくさせた罰です。


あの人はすぐ帰ってきました。

息を切らして、かっこよかったスーツが着崩れてます。

私が歩けないことを知ってるようです。

車椅子を持ってきてくれました。

でも乗れません、私は母を待たないといけないんです。

あの人はハルというらしいです。

私はアキナです。

どっちも季節で似てて嬉しいです。

ハルはどうしても私と結婚したいらしいです。

私は戸籍がないので、結婚は出来ないんです。

ハルは悲しそうな顔をしたので仕方がなく1日行きたいところに付き合ってあげることにしました。


ハルは色んなところに連れてきてくれました。

この間、通りすがりのヒトが言っていたお店もありました。

世界はどうやら広いようです。

もう少し、見てみたくなりました。

母はまだ来ないみたいです。

ハルがお迎えが来るまで家にいていいよ、と言ってくれました。

なのでお言葉に甘えることにしました。


私、知ってます。

母は私を捨てました。

お迎えには来てくれないんです。

何年待っても一生来てくれません。

私はダンボールの中で死ぬ運命だったのかもしれないです。

でもハルは来てくれました。

すぐお迎えに来てくれました。

ハルは神様だったかもしれません。

ずっとお利口で待っていたので見兼ねた神様がお迎えに来てくれました。





今日からハルと一緒に暮らします。

ハルは家についたらお風呂に入れてくれました。

そのあとご飯も作ってくれてすごくうれしかったです。

4日ぶりのご飯はとても美味しかったです。





今日は起きたら隣にハルがいます。

自分じゃ車椅子に乗れないのでハルがおきるまで待ちます。

いつもだったら5時間前には朝日とおじいちゃんの咳で起きてました。

でも今は昼前まで寝てハルの寝息をきいてます。

こんな日がずっと続いてくれたらいいのに。





ハルと暮らし始めて1ヶ月になります。

近所の人からはおしどり夫婦だねと言われます。

夫婦ではないけど。

今日も仕事でいないハルをお家で待ちます。

ハルはお利口に待っていたらちゃんとお迎えに来てくれる人です。

なので待ちます。

母のことは考えないようにしました。

家事もできるようになったのでハルがいない間に出来ることを全部します。

自分で出来るって楽しいですね。





ハルと暮らし始めて2ヶ月になります。

今日も家事をしてハルを待ちます。

ハルは鍵を持っているくせにわざわざインターホンを押します。

私の声が好きだそうです。

まだ好きは分かりません。

ハルと暮らしていたら少しは分かるでしょうか。


ハルが帰ってきました。

インターホンが鳴ったのでたぶんハルだと思います。

身長が足りなくて画面は見えないのでボタンを押して声をきいて判断します。


ハルじゃありませんでした。

警察でした。

ハルは私のことを誘拐したそうです。

近所の人に通報されたそうです。

誘拐はされてません、自分で来ましたと言っても警察には伝わらなかったようです。


今度こそハルが帰ってきました。

私は普段通りにしてリビングまで連れてきてと警察に言われました。


ハルが捕まりました。

悲しいです。

また大切な人を失います。

私のせいでみんながかわいそうになります。

私は施設にいれられるそうです。

ハルとは離れ離れです。






今日は施設にいます。

色んな子がいて面白いです。

でもハルがいないので楽しくはありません。

ハルに会いたいです。





今日も施設にいます。

家事をやったら褒められました。

ハルならなにもしてなくても毎日褒めてくれたのに。


今日も施設にいます。


今日も施設にいます。


今日も


今日も


きょうも


きょうもきょうもきょうもきょうもきょうもきょうも






















施設に入って6年経ちました。

今は自分の家を持っています。

私はある会社で働いています。

外回りのときあの橋の下に立ち寄りました。

変わらず昔の私のような人がたくさんいます。

私がいたところに行ったら新しいホームレスがいました。


ハルでした。

ハルは未成年者略取・誘拐罪で逮捕されていました。

5年前に刑務所から出てお金を使い果たしてホームレスをしているらしいです。


なので私は自分で稼いだお金で108本のバラを買い、ハルに言いました。


「結婚してくださいハル、今度こそちゃんと」

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