授業終わり、帰宅準備をしている時玲奈が声をかけて来た。
「玲ごめん!今日一緒に帰れない!」
「別にいいけど、珍しいね」
「ちょっと用事ができちゃって……じゃ!また明日ね」
「うん、また」
玲奈は早足で帰って行った。
上司から指定された場所へ向かう。人気の少ない駐車場に、一台の黒い車が止まっていた。
私は車の元へ歩き、助手席に座る。
「思ったより早かったな、黒薔薇」
「急いで来たので…それで、要件は何ですか?」
できれば来たくなかったし、早く帰りたかった。
「まぁ殺しの依頼よ、俺からのな…お前の通う大学の玲って奴を殺せ」
玲、彼の名前が出てくるとは思っていなかった。私が玲を殺す?嫌だ、けど…断れるわけがない。
「あいつは後々面倒くさくなるかもしれない、こちらの存在を知り探ろうとしているからな」
「知……どうやって、もしかして私が何かヘマをしましたか?」
「いや、お前じゃない。ヘマをしたのはあの馬鹿、ロズだ…12年前のことだけどな、あいつが殺したとこを見られたらしい」
「そうですか…」
しばらく沈黙が流れる。私はしばらく考えた後、話し始めた。
「わかりました。でも、私はまだ初心者なので、しばらく時間をください。せっかくの機会です、殺しのスタイルなどをまだ決めていないので…一般人の大学生なら、すぐに殺さずとも大きな問題はないですよね?怪しい動きをすればすぐ殺しますので、時間を…」
「……いいだろう。だが、いつまで経っても殺さないのなら、お前ごと殺してもいいんだからな?まあその場合はあの馬鹿が殺しに行く」
「承知しました」
話が終わり、私は帰宅後ベッドに倒れ込んだ。玲を殺さなければならない、それが私にとって、どれだけ苦痛か…あの人達は知らない。
高校生の時、玲に恋をした。あれは、一目惚れに近いものだったと思う。仕草も言葉遣いも見た目も性格も、全てが愛おしかった。班活動でたまたま同じ班になってから、私は玲と少しずつ仲良くなった。あの時は運命だと思った。
でも、私は殺し屋で、玲は一般人。私が殺し屋であることを知れば、玲は私を拒絶するかも知れない。それは、絶対に嫌だ。玲を殺すことよりも、ずっと嫌だった。
今更断るなんてできない、私は玲を殺さなければならない。たとえ私が彼を殺さず裏切っても、他の奴が彼を殺す。それなら、私の手で玲を殺したい。
これからどうすればいいのだろうか…。ベッドに倒れ込んだまま、私は眠りについた。
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