コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
焼ける匂いと共に、パチパチと火花が飛ぶ。
今、あいつらがここで燃えている。狭く逃げ場のないこの家で…。
「滑稽だ………」
燃える家を見て、私はとても綺麗だと思った。
目が覚める、窓の外から鳥の鳴き声が聞こえた。
「……懐かしいな」
昔燃えた家、家族……たまに見るこの夢が、私は嫌いじゃなかった。
8年前のこと、私が12歳の時。家族が燃えた。私が燃やした。
私の家族はみんな、頭がいかれてた。父親はストレスが溜まると母に物を投げ、兄を殴り、私に暴言を吐いた。母はそんな父に怯えきっており、父に似た兄にも怯え、私と2人きりの時、私を殴り暴言を吐き八つ当たりをした。兄は不快なことがあると私を蹴った。
私には居場所がなかった、頼れる祖父母なんていない。学校はそもそも論外だ。
人間が憎かった。私は幸せです、みたいな顔して自慢しているように感じた。助けてくれないくせに事情だけ知りたがるのが気持ち悪かった。
特に憎かったのは、やはり家族だった。弱い者にだけ牙を剥き、都合の悪い事は放っておく。
こんな間抜けな馬鹿と同じ血が流れている自分も憎かった。殺したかった。
じゃあ殺してしまえばいい。
殺し方は簡単だった。3人が寝ている間に火をつける。扉や窓が開かないようにすれば完璧。私はなんて頭がいいのだろう!そう思った。
そして家が燃えた、家族が燃えた。
それから大変だった。警察に何回も話を聞かれ、よくわからない施設に送られ、閉じ込められ、変な大人達と会話をする。
毎日暇で、呆れていた頃。男の人が話しかけてきた。
「これは内緒のお話なんだけど、気になる?」
「……うん、なに?」
彼はニヤッと笑って言った。
「君はまだ人を殺したいと思う?悪を滅ぼす正義のヒーローに、なりたいと思う?」
「?………なんでそんなこと聞くの」
「まずは僕の質問に答えてくれないと」
「………うん。悪だと思うものは、消えればいいと思ってるよ…で、どうしてそんなこと聞くの?」
「ふふん。これは誰にも言っちゃいけない秘密だからね?」
彼はきょろきょろと辺りを見回し言った。
「殺し屋って仕事、興味ある?」
「殺し屋?なにそれ、殺すの?」
「そう、悪いやつを殺してヒーローになるんだよ!…でも、一度この仕事を始めたら、もう元に戻れないんだ、興味ある?」
私は少し考えてから言った。
「私、今退屈なの、その仕事が楽しい事ならやってみたいかな…それに、私人殺せるよ?」
彼は真顔で私を見下す。そしてまたニヤッと笑った。
「いいね、じゃあこれから君は僕たちの味方だ。このことは誰にも言っちゃいけないよ?もし誰かに言ったら、君とこの事を知った子を殺すから…ね?」
その日からだと思う、私の人生が楽しくなったのは。
スマホの通知音で我に返る。
玲からメッセージが届いていた
『今日遊ぶ約束、忘れてないよね』
あ、今日玲と遊ぶ約束してたんだった。
玲に信頼されていないなと思いながら、私は準備をし外に出た。