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「この資料至急なので、社長に直接渡して説明しておいて下さい」
「では以上、今週も宜しくお願いします」
月曜日の朝イチ
週頭の定例会議の席で
私は社長室へ行く用事が出来た
一昨日行ったばかりの
一昨日リュカと過ごした
社長室へ
資料内容を整え
プリントアウトしてまとめ
資料の束を抱えて
社長室へと向かう
思いがけず舞い込んで来たリュカとの機会
昨日の今日で
話したいことが山ほどある
とは言え
今は業務時間
しかも月曜日の午前中
多忙真っ盛りな時分に
そんな悠長な話も気が引ける
社長室へと向かう道中
そんな事を考えながら
降って湧いた好機に思わずほくそ笑む
コンッ!コンッ!
「どうぞ入って!」
「失礼します」
週末の私たちとは異なる
平日の組織上の関係
会社然とした振る舞いで
社長室へ伺う
リュカは
オンライン会議の真っ最中だった
入室した私に
無言のまま目配せ
身振り手振りでソファへの着席を促す
そのままリュカは
しばし会議を続けた
ソファに腰を下ろし
会議中のリュカを横目に見る
ソファに残る淡い追憶
一昨日私たちはここで……
愛し合い
誓い合った
思い出に浸りながら
ソファを手でなぞりながら
週末とは異なるリュカから目が離せない
そこにはやんわりと朗らかなリュカはなく
淀みのない口調で
余計な修飾のないはっきりとした物言いで
会議を進めるリュカがいる
一目で頭の回転の速さが伺え
そのスピード感に圧倒される
思考と判断と回答の軽快さ
謙遜せず
遠回しに語らない
直接的な物言い
その端正な顔立ちで放つ
理路整然とした強く重い言葉は
人によってはきつい印象を受けるだろう
リュカが冷徹と評される理由を垣間見る
その週末とは違うリュカの
その端正な横顔に惹かれ
目が離せない
胸がドキドキする
私は
この人が好きなんだと実感する
「——以上、お疲れ様でした」
ウェブ会議のマイクを切り
リュカの座る椅子が回り
こちらを向く
「おはよう!」
「おはようございます、朝からすみません」
そう言って
立ち上がろうとする私を制止するリュカ
「いいよそのままで」
「体調はどう?大丈夫?」
私の体調を気遣い
リュカのデスクへ向かおうとする私を止め
週末同様に
ソファに着席したまま話を聞いてくれた
「——了解、適時の報告ありがとう」
「で、……他に何かあるんじゃない?」
私の顔に書いてあったのか
私の深層心理を汲み取るリュカ
「でもさすがに業務中だし、今は多忙だと思うので……」
私も
以前のように変な気遣いはせず
正直に話したいことがある旨は伝えた
「じゃあ……15時はどう?その時間なら少し時間とれるけど」
リュカはデスクに戻り
パソコンの予定を見ながら別枠を提案してくれた
「はい、午後は大丈夫です!」
「じゃあその時間にまた来て」
「体調、無理せず自己管理すること」
「わかりました、ありがとうございます」
「あと、二人きりのときは普通でいいから」
「それじゃまた後でね」
リュカは
私との時間を
再設定してくれた
多忙の折にも欠かさない気遣い
そんなリュカを想い
ほくそ笑みながら
私は社長室を後にした
***
「あれぇ~……水川さん何か良いことありました?」
自席に戻り
伊藤さんと月曜日のウィークリーミーティング
目ざとい伊藤さんが
私の顔を見るなり茶々を入れる
「何もないですよ」
「月曜日の朝から止めて下さい」
「は~い、失礼しました」
私は
そんなに顔に出ているのだろうか
急遽社長室への訪問が入り
遅れて始まったウィークリーミーティング
時間が押してしまい
ランチタイムに差し掛かる中
ランチを摂りながらゆるく進めることになった
伊藤さんとはありがちな展開
かといって節度は守り
やるべきことはやる
一線を越えない伊藤さんは優秀だ
とは言え
本来休憩時間となるランチタイム
伊藤さんが相手だと世間話も多分に含まれる
「——で、ですね、鈴木さんの件あるじゃないですか」
「もしかしたらクビになるんじゃないかって噂なんですよね」
情報屋としての伊藤さんの
業務進捗の報告
正直言ってありがたい
その件は
リュカも小山田さんも触れていた
調査結果如何ではあり得ると
「結構大ごとになってるみたいでして」
「先日なんて取引先の営業担当者がヒアリングで呼ばれて来たみたいですよ」
(——え!?)