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#溺愛
桜咲かな
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#溺愛
桜咲かな
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#人間不信
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「とにかく豊ちゃんは精一杯やったわ、やりきったの、結果としてもう身ぐるみ剝がされちゃってるし、容疑者みたいに責めたてるのはやめて、それと無理やり会社に来させようとすることも、あたいは豊ちゃんを助けたいの」
「親の会社を、子供が継ぐのはあたりまえでしょう!!」
ジェニが問いただす
「その考え方が豊ちゃんを追いつめたんだよ」
明美は淡々と言った、ジェニはじっと明美を見た・・・
―私とパパが兄さんを追いつめていたって言うの?―
「あんたがさっき言った通り「お父さんの会社」だったのよ、ジェニ、豊ちゃんが広告会社が好きで、豊ちゃん自身が立ち上げた会社じゃないわ、そもそも豊ちゃんに会社経営が向いているとは思えないよ」
明美は言い、両の拳を腰に当てた
「会社経営なんて出来る人がやればいいのよ、メビウスにはフェロモン竜馬と、あんたがいるじゃない!そこに豊ちゃんの居場所はないわ」
「でも、いつまでもプー太郎じゃ、どうやって生活するのよ!」
明美はそっけない素振りで言った
「本当に豊ちゃんがやりたいことが見つかるまで、あたいが食べさせてあげる、豊ちゃん毎日チョコレートフォンデュでもいいって言ってくれてるし」
・.。. .。.:・
その日はずっと、ジェニは明美に言われた言葉を考え続けた・・・すると豊が明美と大阪ミナミでも有名な焼き肉屋に行くから一緒に来ないかと誘ってきたので、ジェニも行く事にした
焼き肉屋まではジェニの運転で行くことになった、ジュニアの助手席には明美が座り、後部座席の豊と、そこの店のメニューについてひっきりなしに話し込んでいる
もしかしたら、明美は意外と賢くて、賢すぎて周りのすべてが退屈に見えてしまうタイプなのかもしれない
ジェニの高校の同級生にもいた、そんな彼女が、唯一兄に興味を示しているのなら、それは貴重なことかもしれない
焼肉を食べ終わってからも、二人のおしゃべりは続いていて、ジェニはゆずシャーベットを食べながら、黙って二人の話を聞いていた
兄は延々としゃべり続けている、たとえば学生時代に好きだったアニメの事とか・・・なんで明美はこんな話に付き合っているんだろうと、時々ジェニは不思議に思った
明美はラインスートンのジーンズに包まれた細い脚を体育座りにして、兄の話す事に静かに相槌を打っている、ジェニは思った兄と自分は今まで一緒に育ってきて、明美ほど兄と沢山会話をしたことがなかった
兄は神崎で、役員連中に無理やりクラブへ連れて行かれた時の事を話していた・・・そこでまた他の会社の遊び仲間を引き合わされ、取り入らせようとされたと、兄は見せかけの友人関係も、大嫌いな相手に愛想を振りまくことも、好きなスポーツチームも、彼らと同じフリをすることも、嫌でたまらなかったそうだ
「それって超ダサくない?」
明美が言った
「でも、そうやって仕事を貰うんだと、役員連中に教え込まれていたんだ、取引先と一緒に酒を飲んで、遊んで、親しくなって、会社に沢山仕事を回してもらえるようにするんだと、それが社長の仕事だと」
ジェニは・・・兄がそんなことを役員達としているなんて・・・ちっとも知らなかった、たしかに兄は会社経営には向いていないみたいだ、明美がトイレで席を立った時に、兄と二人っきりになった、ジェニは兄に聞いた
「本気なの?・・・明美さんのこと」
兄は怪訝そうに目を細め、ジェニを見た
「ああ、本気だ、俺はあの子を愛している」
驚いたことに、いつも怒りっぽい兄が、穏やかな顔で言った
「いや・・・もっと良い事だな、彼女が俺のことを愛しているんだ、このゲームしか取り柄のない男を、明美は俺がどこの大学へ行ったとか、どれぐらい金を稼ぐとか、何人部下がいるとか、エグゼクティブ専用の会員だとか、そんなことは関係ないんだ」
明美のことを語っている兄の表情は・・・とても穏やかだった、ジェニは兄にこんな顔をさせている明美を凄いと思った
「あの子はそんなこと、これっぽっちも気にしない、明美が興味を示すのは、俺がどのゲームを好きかとか、チョコレートフォンデュでどの具が好きかとか、そういうことなんだ・・・明美は俺が金がないことも、金を稼ぐ当てがないことも知っている、それなのに、俺の事を軽蔑しないんだ・・・あいつが俺を好きになった理由を知ってるか?」
「ううん・・・」
「牛乳アレルギーでぶっ倒れた俺を見て、面白かったんだとよ!あいつはカリスマキャバ嬢だった、アイツのお客はみんな億を稼ぐ社長ばかりだった、実際にあいつも数千万稼いで、キャバを引退した」
―豊ちゃんがやりたいことを見つけるまで、あたいが食べさせてあげるの―
ジェニは明美の言った言葉を思い出していた、彼女の言った言葉は真実だったのだ
「そんな子が俺のそばで笑ってくれているなんて・・・俺にとっては奇跡みたいなものなんだ、俺はあの子を幸せにしてやりたい、そのために今、色々考えている」
兄は顔をあげた・・・そこで自分がやたら感傷的になっているのに気づいたらしく、真顔に戻った
「お前に俺を説教する権利はないぞ!ジェニ!竜馬とよろしくやってるんだからな!」
「分かってるわよ!」
しばらく無言のあと・・・これで最後だとばかりに兄が話し始めた
「明美の姿勢がすごく好きなんだ・・・あいつ常にゆったり構えてるだろ?俺にもあーしろこーしろなんて指図しないんだ、あなたがそれでよかったらいいんじゃない?好きにすれば?って感じだ、自分に起こる事全てだ・・・たとえ刑務所にぶち込まれたって、これも良い経験だって受け止めるんだ、くよくよ悩んだりしない女なんだ」
しばらくして豊がボソッと言った
「黙っていなくなって・・・お前には悪かったと思ってる・・・でも、必ず立て直すから、これからの俺を見ててくれ」
ジェニもここ数日・・・明美と付き合って、兄の言わんとしていることがよくわかった、ただ今まで気づかなかったのは、兄がどれほど明美のような人を求めていたかってことだ
店を出る時、お会計で明美がアメックスのグレードの高いカードを出していた、確かに明美はお金には困っていないらしい
「あの・・・ありがとう・・・ご馳走してくれて」
明美が入り口に立ってじっとジェニを見つめた
「それと・・・今まで兄がお世話になって感謝しているわ・・・よかったら、これからも兄の傍にいてあげてくれる?」
明美の少し切れ長の目が笑った・・・ような気がした・・・そして
「別にかまわないわよ」とばかりに彼女は肩をすくめた
こうして奇妙な三人の同居生活が始まった、夜中にジェニが水を飲みにキッチンに降りて行くと、リビングのソファーで豊と明美が抱き合っていた
二人はお互いの唇を吸うのに忙しく、ちっともこっちの気配に気づかない
そんな時、ジェニは心の中で叫び、月に向かってドラミングをしたい気分になるのだった
「私だって竜馬さんとキスしたい!!竜馬さーーーーーーーーーーん(泣)」
・.。. .。.:・
コメント
1件
読了しました。豊が明美に「俺はあの子を愛している」と穏やかな顔で言うシーン、すごく良かったです。牛乳アレルギーで倒れた話に笑ってしまいましたが、お金や肩書きじゃなくて「自分が好きなゲーム」とか「チョコフォンデュの具」みたいな他愛もないことに興味を持ってくれる明美だからこそ、豊は心を開けたんだなと。ジェニが月に向かってドラミングしたくなる気持ち、すごく分かります(笑)。竜馬さんとの関係も気になりますね。