早速幹部として挨拶をして、輝さんの天才っぷりを見せてもらった俺。
俺の入っている部隊、長距離部隊の隊長さんである輝さんに武器を見てもらうため、武器庫に行った。 「ぴくとさんはドラゴンとか退治する時、どんな武器使ってるの」
「えっと…弓矢ですね」
なるほど…と一言。弓を探し始めた。
「あ、あった。」
何が?
「はい、ぴくとさんも使ったでしょ。ステュムパリデスの矢とドラゴンの弓です」
え!?何でここにステュムパリデスの矢とドラゴンの弓があるの!?不思議でしかないんだけど!? ホントにこの子何者なの!?
「何でこんな所にこれが…?」
「偶に白き森に行ってステュムパリデスの矢とドラゴンの頭蓋骨やらを集めてたんだ」
その結果がこれと…え、矢さ、二十スタック以上あるけど?え、どうやったら一人でこんなけ集められるの?天才?(そうです)
「あ〜偶にドラゴンの鱗だけ残ってるやつあったな。もしかしてそれ輝さんが?」
「多分そう。僕が欲しいのは頭蓋骨だけであって鱗は必要ないから」
欲しい物だけ手に入れて要らないものは捨てるって?え、貴族じゃん()
「鱗って装備作れるしカッコいいよ?」
「僕の体じゃ絶対それ重いし必要ない。」
「…その着物も綺麗なのに戦う時破けたり血まみれになるよ?」
何でそんなにドラゴンの装備をつけて欲しいか、謎だろう。
「僕の着物の事なんてどうでも良いだろ。」
「ん〜どうでも良くはないかな〜。それ綺麗だしさ。」
「そんな理由で?」
別にいいじゃん。そんな理由でも。この子言い方キツい!
「…兎に角、これでいい?」
「うん!遠くからチクチクできるし、使い慣れてるものはいいね!」
「………そうか」
何?今の間は。不思議な子。本当に不思議な子。よく分からない、謎に満ち溢れた少女?少年?性別まで分からないなんて。変わってる。
あの時の人によく似てる。性別も年齢も顔も何もかも分からなかった。
この子は身長は未成年っぽいけど言葉や性格は大人らしい。凛としてる。
性別も喋り方は男っぽいのに髪型はツインテールができるくらい長いし…
あー!もう!分からない!…初日で分かろうとするのは流石に無理があったね。先ずは他の人について詳しく知った方が良さそうだ。…副隊長のショッピくんとか
「輝さんは何の武器使ってるの?」
「僕は…短距離なら短剣、長距離なら魔法だよ」
「ま、魔法!?数人しかいない…?」
そんな凄い人によく分からない人って言ってたの!?うわ!ヤバ!(色んな意味で)
「そう。炎、氷、水、風とか。後は銃、弓とか。基本何でも使える。」
天才、ここに現るって感じ。もう凄い通り越してヤバい。
「…ぴくとさんは凄い。弓って中々使える人いないから」
「え。本当に?俺凄いのかな…よく分かんない…」
「それは何故?」
「白き森でドラゴンを倒すのにも遠くから弓でチクチク攻撃したり…ペットのぐーちゃんや焔に頼りっぱなしで…ビビりだから」
俺がそう言い終わると、輝さんはただ黙る。きっと弱い。って言うんだろう。そして少し待ってようやく口を開くと…
「それでもぴくとさんは凄いと思う。」
きっと俺はえ?って顔してると思う。声には出さなかったけど。
「ドラゴンを倒すのが凄い。遠くからでも倒せたならそれでいい。ペット達に任せてもいいじゃないか。癒しとしても、戦いの相棒としてもそのぐーちゃんや焔達がいるのだろう?…ビビりでもいい。勇気を振り絞ってドラゴンなどを倒してきたのだから。」
その言葉にとても感動した。俺が言った事全て否定してくれた。否定?ある意味肯定か?言い方は少しキツくても優しい言葉でホッとする。何故だろう。この…言葉…言い方…何か…知ってる?懐かしい…
「「ドラゴンを倒す」という前提が凄いじゃないか。もっと自慢していけよ。他の人はドラゴンなんて倒した事ないぞ?」
「でも…輝さんは俺と違って…ドラゴンを倒してたんでしょ?」
「確かにドラゴンを倒した時は何も思わず倒したな。ファイアブレスを吐かれても。でも昔なら、とてつもなくビビっていたさ。」
…輝さんは少し声の音量を落としてこう言った。
「僕はドラゴンより酷い…人を何百人も殺したから。怖くないさ」
と。
そりゃ、そうだよな。輝さんは幹部だもん。戦争で沢山の国と戦って…殺し合いをしてきただろう。人を…何百人も殺めた。それはドラゴンを討伐するよりも勇気がいる。
「ぴくとさんは沢山自慢していけ。…僕は出来ない。本来なら捕まっていたさ」
俯いてそう言った。
「輝さんも自慢していいと思うよ」
あ、口が勝手に!頭より口が!もう〜〜!
「え………?」
「人を殺してしまうのは、俺がしてきた事よりも重いかもしれない。でも…俺がしてきた事よりも勇気がいるし、輝さんがしてきた事は、善意だろ。」
俺がそう言い終わると輝さんは俺の方をじっと見つめて黙っている。ヤベ、俺終わったわ。絶対ヤバい事言っちゃったでしょ〜〜…
ポロポロ…
お面の中から水のような粒が頬を伝って流れて行った。…涙だろう。
「ひ、輝さん!?大丈夫ですか!?何か癪に障る事言っちゃった…?」
「ち、違う…」
全力で否定してくれた。殺されないで済む。…じゃなくて!大丈夫かな?ビックリしすぎて敬語になっちゃったもん 少し落ち着いて輝さんこう言った。
「僕のしてきた事を否定してくれて…フォローしてくれた人、初めて。有難う、ぴくとさん。」
お面をしていてどんな表情をしているか分からないけど…何となく、ニコッとしている顔を思い浮かべた。
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