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─クロ赤or研赤 エンド 前編
〇高校卒業後、木兎さんとは自然消滅しています。
それは突然の事だった。
サークルの飲み会で連れてこられたちょっと年季の入った居酒屋。
多くの人がいい感じに酔いが回ってワイワイと盛り上がっていた。
酔っ払いの相手ほどめんどくさいことはないし、そろそろ帰りたい。
会計前に1人帰るのは気が引けるが元から先輩の奢りって話だったしいいだろう。
「すみません、俺 トイレ行ってきます。」
上手く誤魔化し場を離れる。 怪しまれないように本当にトイレには行っておこう。
トイレの扉を開けたとき、妙に軽いなと思ったら内側からも開けようとしていたらしい。
居酒屋の狭いトイレの前。相手の通り道を塞いでることに気づき、すみませんと顔を上げた。
その時、
そこに居たのは…高校時代と変わらない、いや 少し大人っぽくなった先輩だった。
「…黒尾さん!?」
「久しぶりだな、赤葦。ってか俺いるの気づいてなかった?」
「お久しぶりです。全く気づきませんでした。黒尾さんは知ってたんですか?」
「おう。店入った時奥のテーブルにいるの見えたから」
「俺結構端っこにいましたよ?よく気づきましたね。」
「まーな!赤葦は今から帰んの?」
「バレましたか?色々面倒なので今のうちにと思いまして」
「いいな〜俺も帰りたいんだけどさ、先輩らもうかなりベロベロで。この状況で後輩置いて帰るのもな〜」
相変わらず後輩思いで面倒見のいい黒尾さんを見て少し安心した。俺の知ってる黒尾さんだった。
「せっかくの再会だしさ、またどっかで会おうぜ。」
「はい。俺ももっと黒尾さんと話したいです。」
「じゃあ連絡するから」
そう言って通りすがりざまに俺の頭をわしゃわしゃと撫でた黒尾さんは席に戻った。
話し方も仕草もあの頃のままで、でもやっぱり会うのは久しぶりで。
黒尾さんに会えただけで 無理やり連れてこられたこの飲み会も来てよかったなと思ってしまうほど単純なのは1杯だけ飲んだ酒のせいだろうか。
家に帰るにはまだ少し早い。
大人数でワイワイするのが好きなほうではないが、一人はあまりすきじゃない。
小腹が減ったな…
何か食べたいがさっきの居酒屋でも食べたからガッツリは食べたくない。
どうしようかな。
なんて考えながらブラブラ歩いていると、左手に握ったままだったスマホが振動した。
『もうすぐ飲み会お開きになりそう。この後飲もうよ。』
というメッセージの送り主に心当たりは一人しかいない。
黒尾さんだった。
どっかで飲もうって今日?思ったよりも早いお誘いに戸惑いつつも、小腹も寂しさも埋められてちょうどいい。
なによりせっかく久しぶりに会えたのだから。
『もちろんです。』
と送った。
黒尾さんと話すのはいつぶりだろう。
楽しみだな…。
黒尾さんから送られてきた店の場所をマップで確認しながら歩いていると
突然 目の前が何かに覆われた。
そしてそのすぐあとに耳元で囁かれた。
「だーれだ。」
俺は不意打ちに驚いたが直ぐに誰だか気づいた。
「…….孤爪?」
「正解」
「久しぶりだね、びっくりしたよ。」
「歩いてたらたまたま京治がいるの見つけたから」
「よく俺だってわかったね…後ろ姿だけで?」
「…だって俺が京治見間違えるはずないもん」
「そっか…孤爪はどうしてここに?近所ではないよね?」
「うん。たまたま用事があってね。」
あれ、なんか不機嫌?
あんまり聞かれたくなかったかな…
「ねえ、京治」
「な、なに?」
「なんでおれのこと研磨って呼んでくれないの?」
「え?」
「俺のことはもう興味無い?」
なんだ、ただ拗ねてただけか。
「そんな訳ないでしょう?好きだよ、研磨。」
「…なんかチャラい。やり直し。」
「好き。」
「そっちじゃない!」
からかってやればあの頃と変わらない反応が返ってきて安心した。
「…京治、この後予定ある?」
「あ〜うん。黒尾さんと会う約束してて…」
「は?」
「今待ち合わせの店に向かってる途中だったんだ。」
「…クロと結構会ったりしてたの?今まで…」
「そんなことないよ。今日たまたま再会したんだ。研磨もね。」
研磨はまだ疑っていそうだが本当だ。
まさかこの2人と同じ日に再会するなんて。
幼馴染パワーだろうか。
「じゃあ、おれも行く。」
「んっと…どこに?」
「京治が行くとこ。だめ?」
「俺はいいけど…、黒尾さんに確認しなくていいかな?」
「いいよ。ほら早く行こ。」
強引についてきた研磨と共に約束の店に行った。
黒尾さんはもう先に着いていたようで店に入ると席に通された。
半個室な部屋で先に飲んでいたらしい黒尾さんは俺に気づくとひらひらと手を振った。
「すみません、お待たせしてしまって…」
「気にすんなよ。こっちが急に呼んだんだし。」
「いえ…こんなすぐ、また会えると思ってなかったので嬉しかったですよ。」
「それなら良かった。あ、自分の飲み物しかまだ頼んでないんだ。好きに注文していいからな。」
「ありがとうございます。」
「ところでさ…」
「はい。」
「気のせいかもしれないんだが…、なんで研磨いんの?」
「ついてくるって聞かなくて」
すみません、連絡するべきでしたよね…と俺が続けると黒尾さんはため息をついて
研磨の頬を引っ張った。
「うわぁ…本物だ…」
「何、いちゃ悪い?」
早くもギスギスし始めた2人を置いて、俺はメニューを広げた。
「すみません。これと、これを…あと…、あっじゃあそれでお願いします。」
近くにいた店員を呼び止め注文を済ませた。
依然彼らは口論中だが。
「俺は赤葦と話したかったんだけどな〜」
「抜けがけさせるわけないでしょ。おれだってホントはクロとじゃなくて京治と2人っきりで飲みに行くつもりだったのに。」
「ざんね〜ん!俺のが先約です!」
「…赤葦京治大好き同盟の条約違反。」
「うわ何それ懐かしい。」
「ね。おれも今思い出した。」
「でも俺脱退して独立したから。俺はフリーダムに生きるわ。」
「意味不明…ねえ京治、やっぱり2人で…」
「おい赤葦、こんなやつほっといて…」
「「って、…….寝てる!?」」
2人が言い合ってるうちに頼んだ料理や酒が届き、赤葦は1人で食べ始めていたようだ。
そしてそのまま机に伏せて眠っている。
「えっ、いつの間にこんなに食べたの?」
「さすが赤葦…全部綺麗に完食してある…」
さらに赤葦の横には3つの空のコップ…というかジョッキがあった。
おそらく黒尾と孤爪の分を気を利かせて注文していたのだろうが待ちきれず飲み干してしまったらしい。
もともと酒に弱い赤葦が数時間前にも居酒屋で少量とはいえ飲んでいたのだ。
潰れているのも納得だった。
「あ〜しょうがない、黒尾さんが責任をもって家まで送り届けるよ。だから安心して帰りたまえ、研磨くん。」
「何言ってるの?1番安心できないんだけど。」
「お前の方こそ送り狼するつもりだろ?」
「まさか!そんなこと思いつかなかったよ。クロこそ怪しいと思うけどね。」
再び始まった口論は長引き、赤葦が家に着くのは日付が余裕で変わったあとのことになったらしい。
偶然の再会は
停まった恋の再開を告げる。
……To be continued
No.16 クロ赤エンド
No.17 研赤エンド
(仮)No.18 どっちもエンド(書くかもしれないし書かないかもしれないです)(でも多分書きます)(というか書きたいです。)