「」→青くん
『』→桃くん
「はーっ……」
東京は一昨日も、昨日も、今日も、ずぅーーーーーっと雨。
僕はどんよりとした空を見上げながら、ため息を付いた。
『ほら青、元気だしなよ』
「ん、ありがと、桃くん(*´꒳`*)」
そう言って桃くんは、昨日の仕事帰りに買ってきてくれたチーズケーキを切って分けてくれた。
桃くんはいつも優しい。逆に僕が迷惑をかけてしまっているのではないか、と言うほど優しい。
「いただきま____」
不意に、家のチャイムが鳴った。
『誰だよ……可愛い可愛い青の食事を邪魔する奴は…』
「は……っ(ฅДฅ〃)」
僕、可愛いじゃなくてかっこいいだし…
ちょっと不貞腐れながらも、桃くんは家のドアを開けた。
『………?』
突然、桃くんが黙り込んだ。
「どうしたの、桃くん……?」
僕は桃くんの体の脇からドアの向こうを見た。
「紫陽花……?」
そう。青色の紫陽花が、家の前に置かれていたんだ。
『まぁ、取り敢えず花瓶にでも生けとくか』
桃くんは、買ったものの、使う機会はないだろうと思い込んでいた花瓶に、紫陽花をスコン、と生けた。
『これで邪魔者もいなくなったことだし…安心して食べれるな(*´˘`*)』
「うん!!(*ˊᗜˋ*)」
そう言って、桃くんは僕の大好きな、太陽のように輝く笑顔を見せた。けれど、それとは裏腹に、僕の心には、何かが引っかかっていた。
「(っ𐩢´༥`⊂)ŧ‹”ŧ‹”」
『おいしいか?』
「ん!!」
あれ____?
確か、紫陽花の花言葉って
「”浮気”_____________?(´•ω•̥`)(ポロポロ」
『青!?』
冷たい涙が、僕の頬をつう、と撫でた。
桃くんには、僕の言葉は耳に届かなかったようで、きっと僕が理由もなく泣いているんだ、と認識されているだろう。
「…っ!!」
『え、ちょ、青!!青!!』
僕はその場から居られなくなり、自分の部屋に閉じこもり、鍵を閉めた。
「どうせ…赤くんとか紫くんの方が……桃くんと釣り合うもんね…」
枕に顔を埋めて、声が漏れないように泣いた。声と涙が枯れても、ずっと、泣き続けてやろうと決心した。
『え……?』
俺は目の前の事実を、ただ呆然と眺めるしかできなかった。
『確か”浮気”…って言ってたよな、。』
それなら、紫陽花に何か関係があったのか…?
俺はそう思い、グーグル先生に頼った。
『そう……だったのか…。』
紫陽花の花言葉に、“浮気”だったことを知らずに、俺は違和感なく、花瓶に生けてしまった。
なんて最低な彼氏なんだろう。それなら、紫陽花は、いっそ切り刻んで捨ててしまおうか____
『あれ、ちょっと待てよ?』
さっきの画面をスクロールすると、「青い紫陽花=辛抱強い愛情」という文面が出てきた。確か、あの紫陽花も青色だよな。これなら、青の機嫌も治るんじゃないか。
『青。これ、呼んで欲しい。』
「…」
俺はドアの隙間から、急いで書いた手紙をすぅ、っと入れた。すると青は、すぐにその紙を取ってくれた。
〈青へ〉
ごめんな。紫陽花の花言葉に”浮気”って意味があるなんて、俺は一切知らなかった。そんなことも知らずに、花瓶に生けた。本当にごめん。
でもな、青色の紫陽花って「辛抱強い愛情」って意味らしいぞ。こんな俺にも、普段見せないけど、裏では愛情をたっぷり注いでくれてありがとな。
〈桃より〉
「………!!」
読み終わった途端、僕は部屋の鍵とドアを開け、部屋の前にいた桃くんに抱きついた。
『よかった……!!青が戻ってきた…』
「くふふぅ…(*ᴗ₄ᴗ)⁾⁾」
『ふふ、おやすみ、青。』
僕は安心したのか、僕よりずっと筋肉質な桃くんの胸板と、長い腕に包まれ、眠りについた。
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